2024年12月11日に当学会 多様性・包摂推進委員会企画としてオンラインセミナー「LGBTQ+と学会運営」が開催されました。これはその開催報告です。
本セミナーでは法政大学 グローバル教養学部 助教の平森大規先生に有識者としてご講演いただき、麗澤大学 工学部 教授・第39回人工知能学会全国大会 実行委員長の清田陽司先生に学会運営者として学会のこれまでの取り組みや今後についてお話しいただきました。その後、本セミナーの内容を学会運営に活かすにはをテーマにパネルディスカッションを行いました。
平森先生には基礎的な知識から実践的な内容までご講演いただきました。まず用語の整理として「LGBTQ+」ではなく「SOGI(性的指向と性自認)」という用語を用いることで、マイノリティの問題ではなく全ての人に関わる問題として伝えられると指摘がありました。現状として、制度的な困難(男女二分類やトイレの問題)、外見や仕草から勝手に推測されることによる差別、学会や懇親会での差別的発言やマイクロアグレッションが挙げられました。アメリカ社会学会の取り組みとして、アンチハラスメントポリシーの明示や、座長に差別的発言を止める権限を与えることなどが紹介されました。インクルーシブな学会運営の提案として、公平性やイノベーションの観点から社会的に周辺化された集団を考慮し、差別・ハラスメント禁止ポリシーの明文化、学会運営全体へのDEI(多様性、公平性、包括性)の取り入れ、様々な施策の効果検証が提案されました。
次に、清田先生からは、2019年の学会誌特集「ダイバーシティとAI研究コミュニティ」の紹介とともに、個人がマイノリティの立場に置かれる状況は性別や人種、出自だけでなく、ライフイベントやコミュニティの変化、災害、紛争など多岐にわたると指摘されました。人工知能学会というコミュニティが急拡大している中で、多様な人々を快く迎え入れ、可視化されない問題を理解し正確な知識を持つことの重要性が強調されました。
パネルディスカッションでは、次回以降の全国大会でのアクセシビリティ対応、アンチハラスメントポリシーの周知徹底(参加登録時の確認やハラスメント行為を行わないことの宣言)の重要性が議論されました。また口頭発表に比べ学会運営者の目が届きにくいポスター発表時の問題対応策についても議論されました。そこでは(日本では一般に)ハラスメント被害者は声を上げづらい。それに対処していくには学会として被害報告を受けた際に適切な対応を行い、その事例を積み重ねて信頼を築いていくことの重要性が議論されました。