清水主任研究員が日本育種学会奨励賞を受賞しました

2024年319

【受賞者】
 清水元樹 主任研究員 (所属 ゲノム育種研究部)

【受賞した賞】
 日本育種学会奨励賞

【受賞題目】
 アブラナ科野菜およびイネにおける耐病性機構の分子遺伝学的解析とその育種展開

【受賞日・場所】
 令和6年3月16日(土)
 東京大学本郷地区キャンパス 東京大学大講堂(安田講堂)

【受賞の対象となった研究の概要】
 受賞者は、アブラナ科野菜とイネを中心とした多様な作物を研究材料として、重要農業形質である病害抵抗性の育種を発展させる研究を進めてきました。

 新潟大学大学院自然科学研究科博士課程在籍時は、アブラナ科野菜キャベツ、ハクサイを研究対象として、重要病害である萎黄病に対する抵抗性遺伝FocBo1(キャベツ)とFocBr1(ハクサイ)の同定に成功しました。得られた遺伝子情報かDNAマーカーを開発し、マーカー育種の現場導入にも積極的に取り組みました。現在、この遺伝子情報を利用した萎黄病に強い品種が種苗会社によって育成されています。

 岩手生工研着任後は、イネの重要病害であるいもち病に焦点を当て、宿主と病原菌の双方を研究対象として基礎研究に取り組んできました。病原菌は、多様な分子(エフェクター)を植物細胞内外に分泌し、宿主作物の抵抗性や代謝を操作して感染を成立させます。一方、植物は、受容体タンパク質(抵抗性遺伝子)によって病原菌エフェクターを認識し、細胞死を伴う過敏感反応により抵抗性を発現させます。受賞者は、イネから新規のいもち病抵抗性遺伝子(Pias)、いもち病菌からPiasが認識するいもち病菌エフエクター(非病原力遺伝子AVR-Pias)の単離に成功しました。また、この研究を進めるために開発した「RaIDeN」法は、簡便かつ短期間に抵抗性遺伝子単離を可能にする手法として、複数の研究機関で利用され、抵抗性遺伝子研究の分野において成果をあげています。さらに、イネPiasといもち病菌AVR-Piasの詳細な解析から、イネの抵抗性遺伝子の進化機構の一端を明らかにしました。

 受賞者の研究は、植物と病原菌の双方の詳細な分子遺伝学的解析により、作物病害抵抗性の最先端の研究領域に切り込むものであり、今後の発展とともに多くの実用作物における耐病性育種への貢献が期待されます。

備考〉
日本育種学会奨励賞
推薦年の4月1日時点で42歳以下の一般会員のうち、優れた業績を有し、将来さらなる活躍が期待される若手の研究者に対して授与されます。