「さよなら、おやすみ、またあした」
伏姫祈吏の愛をこめて。
わたしには双子の弟がいます、とっても大切で大好きなたった一人の大事な弟です。
幼い頃からわたしと彼は本が大好きで、両親が買い与えてくれた本や、週末ごとに連れて行ってもらえる図書館で借りてくる本を夢中で読みました。
眠る前はいつもパジャマ姿でお互いに読んだ本のことをおしゃべりするのをとっても楽しみにしていました。
よく遊びに行くカフェで、この本に出会いました。
夜空みたいな深い紺色の表紙はきらきらの紙に印刷されていて、タイトルと絵は銀色、窓辺にこぼれる星はきらきら光っています。
角はまあるくなっていて、中を開いてもきらきらして、お星様がたくさん溢れています。
子どもの頃に読んだ本みたいにきれいでどことなく懐かしい作りになっているところがとっても素敵です。
森の中で旅をする女の子を描いた詩から本は始まります。
大切な人と出会うこと、離ればなれになっていくこと、「大切なかけがえのない時間」があったことを胸に抱いて生きていくこと。
十人の作家さんたちが紡いだ文章はどれも優しくてちょっぴり切なくてそれでいてとびっきりきらきらしていて、手の中にそっと小さなお星様が落ちてきたような気持ちになれるものばかりでした。
わたしは読んでいるうちに、まだうんと小さい子どもの頃、弟といっしょに読んだ本のことや、毎日のように夢中でかわしたおしゃべりのことを思い出しました。
こんな時間がずうっと続いていくんだと思っていたから、いつか大人になって離ればなれにならなければいけないこと、そうしなければ「大人」になれないのだと知った時は本当に悲しかったです。
でも本当はそうじゃありません。離ればなれで生きていく事になっても、お互い以外の大切な人がほかに出来たのだとしても、わたしたちが得た宝物は色あせたりなくなったりはしないのです。
読んでいて思い出したのは、そんな気持ちでした。
もうすっかり大人になってしまったいま、弟は海の向こうのうんと遠い国で、パートナーとふたりで暮らしています。
わたしは弟のことも、弟が選んだ人のことも、ほんとうに大好きです。
大好きで大切な人に読んでもらいたい本だな、と思ったので、もう一冊買ってふたりに贈ることにしようと思っています。
伏姫祈吏 さん