海馬散歩

※思い出した時に思い出したまま書いてて記憶違いもあると思う。いつか海馬をたどる散歩もしたい。

「脱線事故」

17歳くらい。朝、通学で毎日乗っていた某ローカル電車が脱線。車両がゆっくりと左に傾き、つなぎ目の蛇腹部分が目の前でバリバリと音を立てて破れた。車内に悲鳴が飛び交い、私も転んだ。停電したらしく、ドアが開かない。しばらくすると、外から車掌さんが「ここから降りてくださーい」と指示。みんなで破れた蛇腹の隙間から飛び降りた。近くの駅まで線路を歩いて移動。代行バスが来ていたが、こんなことがあったのに学校へなんか行けないよな、と帰宅。ニュースを見たら、けっこう満員だったのにケガ人はいなかった。脱線の原因はなんだったんだろう?

「プール」

小学生。夏。近所の幼なじみの家族らと一緒に、淡島へ遊びに行ったときのこと。波の音と潮のにおいを目の前に、スクール水着姿になり、浮き輪を持って大はしゃぎだった。やがて人混みの子供用プールに飽きたころ、遠くの方に滑り台がある大きなプールを発見!近づいてみると誰も入っていないじゃないか。ラッキー!入ってみると足が着かないほど深い。大人のプールだな、ふふふ。よく見ると、プールの底の方の壁が一部穴が空いていて、海につながっている。海水プールか、画期的だ。滑り台はいたってシンプルな鉄骨仕上げ。ちょっとヌルヌルするけどかっこいい。開放的な気分になり、滑り台で手を振りながら写真も撮ってもらう。そして一泊した次の日、私たちは愕然とした。なんとそのプールでアシカショーが行われていたのだ。アシカのプールだったのかっ!!滑り台を登り、ヒレをピチピチさせて観客にアピールする姿が、昨日の自分とダブる。アシカと私。私とアシカ。頭の中が得たいの知れない矛盾でいっぱいになり、しばらくショックで口が利けなかった・・・。

「カエル」

小学生。夏休みだったと思う。アマガエルを飼った事がある。名前は「エル」。50cm位の長さの木綿の糸で、カエルの後ろ足を縁の下の柱につなぎ、洗面器も用意した。洗面器に牛乳(エサ)を注ぎ、エルをその中に放すと、エルは大きく口を開けたまま泳ぎまわった。美味しそう・・・。私は大満足だった。しかし、子供だった私は、3日後にはエルの事をすっかり忘れていた。夏休みも終わる頃、ふと縁の下をのぞいてギョッとした。そこには、カラカラに乾いた洗面器の中で大きく口を開けてお座りしてるミイラ化したエルが。ミイラ化すると、すごく小さくなるんだなー。勉強になりました。

「九州大学」

20代。夏のたま、地下ツアーでの本当にあった恐怖体験。解剖医学で有名なその大学の某サークル部屋となっていた医学資料室がライブ会場だった。サークルの皆さんはとても気さくで優しく、ビンボーツアーで宿無しの私達に、この部屋を自由に使っていいから、と帰っていった。暑くて寝苦しい夜だった。その後、私達はしばらく酒を飲んだりうだうだしながら、資料室の床にゴロンと雑魚寝した。静かになったなーと思った次の瞬間、付けっ放していた扇風機がカチッと止まった。あれ?壊れちゃったのかなぁ?すると今度は大きなガタンッという音が天井に響き、電気の全てが消えた。みんな起き上がった。ブレーカー落ちたんじゃないの?ライターを灯しながらブレーカー機を確認しに行くと、ちゃんと動いてる。変だなー・・・ひょっとして消灯時間とかで勝手に止まるんじゃないの?と勝手に思ってまた部屋に戻ると、突然扇風機がブーンと動きだした。電気はついてないのに・・・・。ブーンと回ってまた止まった。ぎゃーぁーーー。ツアーに参加していた友達が、寒気がすると言って、真夜中なのに帰ってしまった。私だって帰りたいけどここは九州。ほとんど眠れず、外が明るくなるのをじっと待った。・・・実は恐くて今まで誰にも言えなかった事がある。帰りがけにサークルの人が、ここは入らないでねと言った部屋で、誰かが机に向かって何か書いてるうしろ姿を見てしまったのだ。サラサラとペンを走らせる音もしている。真っ暗の中で白衣のうしろ姿の輪郭がぼおっと光る。しばらく見ていたら、そのうしろ姿が振り返った。ぎゃーーーーー。見たくないので猛烈に走って逃げた。こわかったよう・・・。

「マルタくん」

20代。夏だったと思う。当時、近所に住んでたマルタくんちへ遊びに行った時のこと。マルタくんはどうぞ、と、お茶を出してくれたあと、ねぇねぇ、ちょっと見てて、と、うれしそうに何かのスイッチを入れた。次の瞬間、モーレツな竜巻が起こり、部屋中の紙やホコリもろとも全てが舞い踊った。天変地異が起こったかと私は悲鳴した。どう?と、またうれしそうにスイッチを切ったマルタくん。そして見上げると天井には、部屋の灯りの代わりに、電車の車輌内についてる巨大な扇風機がっ。拾ったから付けてみたんだー、涼しいかなーって思って、と笑顔。お茶はひと口も飲めなかった。その帰り道、マルタくん大丈夫かなーと、同行者と共に真剣に心配した。

「花瓶」

18歳。両国にフォークロアセンターというライブハウスがあった。とにかく歌える場所はないかと、私はシティロードで偶然それを見つけて通いだしたのだった。初日に出会ったのが大谷くんと中村さん。後日、両国で大谷くんのバースディライブがあって、その頃もうすっかり大谷くんファンだった私は花束を持って出かけた。まだ誰も来ていない店に入ると、マスターがにこにこと大きなガラスの花瓶を用意してテーブルに置いて促した。この花束は大谷くんにあげるんだからだめ、と、私はかたくなに拒んだ。そこへ健さんが現れて、黙って花瓶の水をひとくち飲んだ。(あ、これ・・・)と思ったが何も言えず、しばらくして、大谷君が現れて、「ヒャーのどかわいたー、これいい?」と、花瓶の水を残らず全部一気に飲み干してしまった。その花瓶は水差しの様な形をしていたので(水差しだったのかも)まちがえるのも無理はない。でも、私は困った顔になってしまったマスターと、ちっとも気づいていない健さんや大谷くんが可笑しくてたまらなかった。

「理科」

小学生。フナの解剖をしたあとの、その死骸はいったいどうするんだろう・・・?他のクラスは次々と解剖授業を終えている。でもなぜか誰もソレをどこへ片付けたのか秘密にしていて教えてくれない。ひょっとして食べちゃってるのかも!私の想像はモーレツに膨らんだ。アルコールランプでフナの塩焼き?あるいはビーカーで煮魚?君は心臓、ぼくは胃袋、なんて食べ比べ?私は夢にうなされ続けた。ところが、いざ解剖授業の日、食べるなんてことはなく、骨と内臓がバラバラになったフナは、なんと学校の裏庭で栽培されていた稲田の隅っこに埋められた。フナは土に返すのだと先生は言った。みんなここに埋めてたのか。てことは、大量のフナで出来た土。そんな事も忘れた頃、私たちは収穫の秋を迎えたのだった。

「睡眠学習」

中学生。そのカタログを手にした時、コレだ!と思った。カセットテープに録音されたものを聞きながら寝るだけで、覚えちゃう!でもよく読むとカセットテープレコーダーの注文書だけだ。それなら購入するほどでもないと思ったので、ウチにあったカセットテープレコーダーで、教科書を音読して録音し、聴きながら寝ることにした。効果があったかどうかは覚えていないが、教科書を声を出して読むというのが面白かった。当時はリバース再生機能は無かったので、片面が終わるたびに「ガチャン」と音がして目が覚めた。

「犬の墓」

小学生。通っていた小学校の裏手には線路があった。線路わきの草地でよく遊んだ。線路沿いには柵がなかった。ある日、そこでノラ犬が轢かれた。犬なので、電車はそのまま走り去って行った。偶然見ていた友達と私は急いで犬のいた場所に駆け寄った。犬はピクピクと微動していたが、すぐに静かになった。ちょうど首と胴体のところで切れてしまっていた。「ああ、もうダメだよ。」私達は犬の墓を作る事にした。学校の道具倉庫にスコップを取りに行き、現場に戻ったその時、線路わきから猛スピードで走り去ろうとするトラックを目撃した。なんと、その運転手は、犬の胴体だけをトラックの荷台に乗せて持って行ってしまったのだ。意味不明のショックに震えながら、私達は犬の頭だけを土に埋めた。

「ケンカ」

3歳頃。近所の幼なじみの男の子と、ささいな事で口げんかとなった。私は負けず嫌いだったので、強気で言い返した。内容は覚えてないが、返答に詰まった彼が急に「フン!女のくせに!」と言ったのだ。私は頭がクラクラする程ショックだった。瞬間的に手が伸び、私は爪をたてて彼の顔面を思い切り引っかいた。爪に彼の顔の皮が付いた。彼は大声で泣きながら走って帰って行った。事件は母に伝わり、私は家まで謝りに行かされた。怪我をさせたのだから、と思って謝った。彼も悪いと言ったが、聞いてもらえなかった。

「BCG」

9歳頃。ツベルクリン反応が陰性だった為、BCG接種を受けた。注射跡が化膿し、それを取った手術跡は今も化膿し続けている。

「アッチャン」

中学生。田舎の近所の踏み切りにアッチャンという少年がいた。町で有名人だった彼は、頭が少し弱いけど、電車が大好きで、毎日一日中遮断機のそばで、電車がくるたびに「信号よーし」と、指差して、左右を確認していた。ある日、帰郷した時に、彼の死を知った。いつもの様に踏み切りのそばに居て、そのまま電車に轢かれてしまったのだという。映画「どですかでん」を初めて観た時、私はびっくりした。彼にそっくりな少年が出ていたからだ。本当によく似ていて、彼がモデルだったように思えてならない。違うと思うけど。

「汲み取り便所」

小学生。自宅の汲み取り式便所に落ちかけた事がある。正確には入った、というべきか。フロに入る夢を見ていて寝ぼけて、パジャマを脱いで片足を突っ込んだところでハッと目が覚め、助けてーと叫んで母を呼び、セーフで引き上げられた。かなり深くて、落ちてたら人生ヤバかったかも。あれ以来、私は夜中トイレに起きる時は、自分がちゃんと起きてるかどうか確かめるクセがついている。