工房銀夫婦の楽しい新婚旅行

車椅子で大陸横断鉄道 工房銀夫婦の楽しい新婚旅行

私たち夫婦は、障害者同士の夫婦です。

私が重度の障害者で車椅を使っています。夫は交通事故の後遺症で足に障害を持っています。

私たちが結婚を決めた頃、Bluem of Youthというバンドが電波少年でシベリア鉄道に乗っていた。

私は、夢のような話だったけど、自分が万が一にでも結婚できたら、新婚旅行でヨーロッパに行って、ルーブルへ行ってみたかった。

主人はテレビで観たシベリア鉄道に乗りたかったので、意見を合わせてシベリア鉄道で、パリのルーブル美術館を目指して出発した。

国内も新潟空港まで鉄道で移動するという徹底ぶり。

新潟駅では、エレベーターがないとこがあって、線路を何本も車椅子で通りました。

ちょっと、気持よかった。

新潟空港では、シベリア鉄道に乗るという人たちにも出会いました。マトリョーシカも売ってた。

ウラジオストックでガイドしてくれたのは、かわいい大学生の女の子アンジェリカ。

空港からホテル、ホテルから駅のピックアップだけだったのに、時間外で観光までしてくれました。

元軍港というウラジオストックは、海辺で潮風のするところだった。

坂が多くて車椅子では大変だったけど。

シベリア鉄道に乗ると、日本人も何人かいました。空港で出会った人たちは私たちより1日早く出発していたので、別の人達でした。鉄道好きのJRの職員さん、子供の頃お父さんのお仕事でモスクワにいたという大学生さんなど。

シベリア鉄道での食事は、おいしいピロシキとかお野菜キュウリにトマト。一度だけ食堂車に行ったけれど、私が歩いて行くには遠くて、一度で断念。チキンやお魚、サラダもどれも山のように出てきた。美味しかったけど、すごいボリュームだった。

シベリア鉄道のトイレは車両に2つあって、後ろのは洗面台もついてて広かったので、そちらを使っていました。揺れるし、歩いて行くのは大変だったけど、主人と二人で入っても大丈夫でした。私がよたよた歩いてると車掌さんが心配そうに見てくれるんです。

一等車のコンパートメントだったんですが、車椅子を置くとちょっと狭くなりました。それでも、快適な揺れと雄大な景色(しばらくすると、慣れてしまうずーっと同じ地平線)を眺めて、主人とたくさん話しをしました。心地良い沈黙も二人で味わいました。

私が一度だけ駅に降りたときは、アイスクリームを買っていて、列車が出そうになり車掌さんが慌てて手伝ってくれました。アイスクリーム美味しかったなぁ。

モスクワで、ピックアップしてくれたガイドさんはヨーロッパ系の顔立ちの青年。モスクワって、アジアじゃなくてヨーロッパだなと思った。彼は、小さい頃お父さんの仕事で日本に住んでたこともあるって言ってました。列車で知り合った大学生とは逆だったなぁ。

モスクワで泊まったロシアホテルでは、広くて迷子になりそうになりました。朝ごはんに行こうとして、階段を避けて大回りしたら、よくわからなくなっちゃった。無事に食堂には辿りつけて朝ごはんもお腹いっぱい食べたんですけどね。

お腹を壊して、モスクワからサンクト・ペテルブルグへ行く列車に遅れそうになった。列車を待ってるとお腹が痛くなって、トイレに行ったけど、間に合わず・・・。その時、言葉も通じずに困ってると、トイレの人が察してくれて並んでたのに通してくれて、使いやすいようにビデのある個室に女子トイレだったのに主人と二人で押し込んでくれた。おしりも洗えて、ちょっと広かったので着替えもでき、すっごく助かりました。

モスクワカラサンクト・ペテルブルグへの列車はお昼ごはんもついていた。飛行機の機内食っぽいかんじだったけど、楽しかった。

サンクト・ペテルブルグでピックアップしてくれたのは、アジア系っぽい青年、2時間も列車が遅れたのに平然としていて、普通だと言ってた。ちょっとビックリ。

車椅子のイングリッシュマンにも出会いました。夜、屋台みたいなところで軽く食事していた時だった。私よりも重い障害だったと思う。でも、イギリス人は車椅子に乗ってても紳士なんです。

サンクト・ペテルブルグでの目的はエルミタージュ美術館。朝食後タクシーで美術館へと向かいました。観光客用の入り口に並んでいると階段が。なんと、周りにいた日本人の団体さんたちが手を貸してくれて階段を上がって中へ入りました。中では今度は、エレベーターに入れなくて困っていた車椅子の人を主人が手伝いました。ご婦人が介助していたのですが、エレベーターの入口がちょっと狭くて入りにくかったのです。

サンクト・ペテルブルグには、車椅子の物乞いの人も居た。かわいい彼女が迎えに来て帰っていったけど。

モスクワへ一度戻り、そこから国境を超えドイツへ行きました。ドイツへの列車には、コンパートメントに洗面台も完備でした。

ドイツからは、自由旅行。早速着いた駅で切符を買い、中央駅へ行きました。ドイツの列車はホームから段差がなくて乗りやすかったです。エレベーターも自転車を載せるためか広くて大きいのに乗っているのは、カートを押してるお年寄りと私の車椅子だけ。日本とは大違い。

ドイツのマックでは、いきなり男性に荷物を見ているように頼まれました。彼はトイレへ行ったんですけど。向こうの人は、荷物を不用意に置かないと思ってたし、ちょっと驚きました。車椅子の旅行者は信用されていたんでしょうね。ヨーロッパは日本より危険と思ってたけど、さすがに車椅子の人は襲われないのかな。

ドイツではアウトバーンを走りました。それも主人の希望だったので、たどたどしい英語でパリまでレンタカーを借り、キーをゲット。なんとかなるもんです。

アウトバーンは広くて走りやすかったそうですよ。アウトバーンのサービスエリアにも寄りました。車椅子用のトイレに行って、ちょっとした事件発生。主人が急に扉を開けてしまい、出てこようとしていた人を転ばせてしまったんです。慌てて、主人は彼女を抱き起こしました。余計にびっくりさせていたような気もする。アウトバーンのトイレは広くてとても使いやすかったです。

でも、主人がモスクワでひいた風邪が悪化、レンタカーを途中で返して、夜行列車でパリへ向かいました。

パリの駅ではエスカレータを降りていて、落ちそうになったところを助けられました。実際、数段滑り落ち下まで行くかと思ったところを男性が車椅子を抑えてくれて事なきを得ました。

パリで泊まったホテルでは、エレベーターの安いホテル。でも、エレベーターが狭くて車椅子が入れなかったんです。すると、一階の従業員用の休憩室か何かに使っていた部屋を開けてくれました。ホテルのフロントのおじさんは私たちが日本人だとわかると「おはよう、こんにちは、こんばんは、ありがとう」って言ってたな。

帰りの飛行機のチケットは持ってなかったので、パリで飛行機の看板を見つけて飛び込みました。関西空港までのチケットを格安でゲット。

移動のためにバスを利用すると、乗り降りにはまるで当然の事のように乗車客がみんなで手を貸してくれます。白髪の老婦人までが私に手を差し出してくれたことにはビックリ。運転手さんまでが降りて手伝おうとしてくれるんですよ。

パリのマックはスゴイんです。車椅子でマックに入っていくとすたすたと歩み寄ってくる制服姿の一人の女性。彼女はおそらく車椅子のお客を見つけて、お手伝いに来てくださったのです。席を見つけてくれ、商品も運んでくれました。

パリにも車椅子の物乞いの人がいました。彼は、私のよりカッコイイ車椅子に乗ってて、マックの紙コップを手に持って、道にいました。

念願のルーブル美術館へ、ガラスのピラミッドの中にはエレベーターもあるんですよ、知ってました?オープンなエレベーターでちょっと怖いんだけど。ルーブル美術館もピラミッドに入るとスーツの女性がすたすたと近づいてくるんです。しかも日本語で話しかけられて、ちょっと戸惑ってしまいました。彼女はエレベータへ案内してくれると、「カードは持っていますか」と訊いてきました。一瞬、何のことかわからなかったけれど。障害者手帳のことだと気づきました。そんなものが必要だとは思っていなかったので、ホテルに置きっぱなしです。ないことを伝えると、並んでチケットを買うように言われました。でも、チケットカウンターに並んでいると、販売員の青年は私の車椅子を指さして、そのまま行くようにとジェスチャーで伝えてきます。結局、無料で入館しました。

昔、お城だったルーブル美術館は階段がいっぱいありましたが、その度にリフトが設置されていました。リフトを動かす専門の職員さんもいます。流石は世界のルーブル美術館。

パリの夕方、何度か夕立にあいました。ある時、雨の中シャンゼリゼ通りを主人が私の車椅子を押して、走りました。すると、十戒のあのシーンのように傘の波が左右に割れていくのです。日本では、車椅子で移動していると人にぶつかりそうになって、一生懸命避けなきゃいけないんですよね。

旅行中思ったのは、外国では車椅子で街を往く人が多いこと。通りすがりの人がふつうに手伝ってくれること。まちを歩いていて段差があると、困ったなあと思うより先に道行く人が、車椅子を持って上げてくれます。そして、そのまま行ってしまう。お礼も言う間もない日常。

最後、シャルルドゴール空港で1泊。障害者用のお部屋を取りました。車椅子で動き回れる広いお部屋でした。お風呂もバスタブはないものの車椅子で入れて、とっても広くバリアフリー。ちょっと、感激しました。

空港でバスに乗って、ちょっと見物。空港内の駅で、ケーキを買いました。濃厚なカスタードクリームの味が今でも忘れられません。

ミラノの空港でトランジット。イタリアの人は陽気なんです。私の車椅子を押してくれた空港の職員さんが車椅子についていたベル(自転車のベルみたいなもの)をリンリン鳴らして、とっても喜んでるし。飛行機の乗るのに階段が登れないので、リフトの付いた車に乗ったんだけど。「スーパーカーに乗せてやる」らしいようなことを言って楽しそうに話しかけてくれるんです。

関西空港では、車椅子ルートがありました。わんちゃんと一緒にエレベーターに乗ったり、なんかあまり並ばずにチェックもなく外へ出たような気がする。車椅子だと密輸とかできちゃうかも。冗談ですよ。

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工房銀夫婦 宮岡義人・篤子