Photo by ChatGPT
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2024年10月7日14時に「れいわ新選組」の総選挙に向けた記者会見が行われ、反原発活動家で首都圏反原発連合のコアメンバーの1人、「ミサオ・レッドウルフ」氏の立候補が発表されました。偶然、その記者会見が行われる30分前の13時34分、「活動休止」となっている首都圏反原発連合に以下のメールを送付していました。
このメールのもとになったのは日本共産党の平成25年度の政治資金収支報告書における以下の記載です(「会費・拠出金等」の最後の項目に注目)。
「首都圏反原発連合」は3.11以降の日本の社会運動の鏑矢のような団体です。同団体から「レイシストをしばき隊」(現「対レイシスト行動集団=C.R.A.C.」)とその中核人物である「野間易通」氏や「神原元」氏、「菅野完」氏など有名活動家を世に出してきました。また、野党共闘の発端となった取り組みを牽引したとミサオ氏は以下のように述懐しています。
このような日本の社会運動・政治史において重要な市民団体に日本共産党から資金が流れていた・・・となると既存政党が市民運動を背後から操っていたのかと勘ぐりたくもなるでしょう。「首都圏反原発連合」の収支報告では2013年4月の寄付金総額が「628,794」であり、20万円の送金と矛盾はありません。
しかし、その金額は確認できる分で20万円1回きりと大したものではありません。
より重要なのは同団体の住所「文京区湯島2-4-4-4F」です。
この住所は日本共産党系の労働組合「全労連」の入っているビル「平和と労働センター・全労連会館」です。全労連会館には運営委員に日本共産党が入る「原発をなくす全国連絡会」が入居しており、2013年5月5日のWebアーカイブに記録されている同団体のウェブサイトには「TEL:03-5842-5611」と現在の全労連事務局の電話番号が書かれています。
また、2013年7月1日に「文京区湯島2-4-4-4F」に居住する「原発をなくす全国連絡会」に30万円の「会費・拠出金等」が日本共産党中央委員会からあり、 2024年現在、「平和と労働センター・全労連会館」4階には全労連のみが入居しているようであり、2013年もそうであったなら、同団体が「平和と労働センター・全労連会館」4階の全労連に当時存在したことになるでしょう(以下、平成25年度の政治資金収支報告書、最上段に注目)。
そのため、単純に「原発をなくす全国連絡会」と「首都圏反原発連合」を取り違えたのかとも思ったのですが、会計処理の際、入金実績のない、日本共産党とは完全に独立した「首都圏反原発連合」と自分たちが運営委員の「原発をなくす全国連絡会」を取り違えるとも思えません。こうなると、2013年、「原発をなくす全国連絡会」と「首都圏反原発連合」は同じビルの同じフロアに入居していたことになりますし、4階に入居していたのが全労連だけであったなら、同団体が「原発をなくす全国連絡会」と「会費・拠出金等」両方の事務局をしていたことになります。
20万円の「会費・拠出金等」なら、共闘団体間の儀礼的なものなのかと思ったのですが、もし事務局が同一組織内にあったなら「首都圏反原発連合」は2013年段階で日本共産党系組織となってしまうでしょう。確かに心当たりはあります。
「首都圏反原発連合」主催のデモに参加し、同団体にも(いわゆる末端ですが)関与していた「千葉麗子」氏は著書『さよならパヨク : チバレイが見た左翼の実態』(2016、青林堂)において、以下のように回想しています(電子書籍版より引用)。
*「0602反原発国会大包囲」は2013年6月2日実施
共産党やその関係者の比率が上がってきたせいか、抗議集会も共産党らしくなっていった気がします。もっとも当初私が気づかなかっただけで、すでに共産党が幅を利かせていたのかもしれません。 知人らから聞いたのですが、デモに音楽や踊りを取り入れるのは、日本共産党が昔から得意とすることらしいです。ラップミュージシャンが多数参加していたのも、共産党のスタイルに合っているからだと考えるとなるほどと思います。(略)あげくに吉良よし子氏のフォトブックとやらも売り始めたのです。なぜ吉良よし子氏だけ? もうわけがわからないというか我慢の限界でした。(「沖縄民謡、サンバ、そしてフォトブック」章)2013年ごろから日本共産党が「首都圏反原発連合」に急接近していたことがわかります。
2012年に起きた日本共産党系全学連の影響下から東京大学教養学部自治会が脱した「東大自治会全学連脱退事件」当事者であるX氏の手記に気になる記述があります。
2011年11月、X氏は日本共産党東京都委員会のT氏=田川豊氏に次のように言われたといいます。
T氏から、東大から原発ゼロの運動を巻き起こさなければならない、そのトップを務めてくれないか
2011年下旬には日本共産党は本格的に反原発運動への関与を計画していたようです。
一方でT氏の「日本共産党に対する事実上の離党文書」(2011年12月19日作成)に以下のような記載があります。
「原発ゼロ」という言葉は「日本共産党に系列化された団体」が用いているというのです。
「首都圏反原発連合」のウェブサイト「活動の軌跡-Ⅰ-【大規模抗議行動etc.】」と見ると、デモ活動に「原発ゼロ」を冠する取り組みが複数確認できます。それらは2013年の「0310原発ゼロ☆大行動」から始まっています。
*この点はそこまで関係があるかは微妙です。2012年に「原発ゼロの会」という超党派の議員連盟が立ち上がっているからです。ただし、この連盟に日本共産党の議員もかなりの数参加しています「首都圏反原発連合」と「日本共産党」の関係は、いかなるものだったのか。政治資金収支報告書の通り、その所在地が日本共産党系労組「全労連」の建物にあり、全労連が事務局を担当していたとすれば、これまで一部で噂されたように、311以降の市民・社会運動へ日本共産党が関係団体を通じ、組織的に関与していたということが見えてきそうです。
当該メールを送付後、2024年10月9日現在、返信はありません。しばらく待っておこうかと思ったのですが、現在も事務局を日本共産党系の組織が押さえていたなら選挙を前に返信を行うとも思えず、また、「首都圏反原発連合」の中心メンバーの1人ミサオ氏が、れいわ新選組から立候補、さらにれいわ新選組が日本共産党唯一の小選挙区当選を果たしている沖縄1区での候補擁立による両党の関係悪化など、目まぐるしい変化が起きる中で、この事実の公表を先に行いました。
ミサオ氏は立候補に際して次のようなメッセージを出しています。
311以降、市民・社会運動と既存政党の間で一体何が起きていたのか、選挙戦を通じて明らかにしていただきたいです。
公開日:2024年10月9日