「明星大学訴訟」地裁判決を読む

A-n-I/26

1 はじめに

 前回のレポートA-n-I/25で文科省が秘密裏に大学の対面授業実施と拡大のため、予算措置にまで手を入れようとしていたことが明らかになりました(新型コロナ感染拡大防止のために対面授業を抑制する大学が予算的に不利になりようにしていた)。

 その中で、文科省が「これ以上学生への十分な説明もなく、対面授業の実施が低調なままでは、授業料の徴収に理解が得られないことについて、文科省としても発信する」と計画していました。

 

文科省内部資料「大学における適正な授業の戦略的推進について」 A-n-I/25

 

 私はこの点について、

 

「これ以上学生への十分な説明もなく、対面授業の実施が低調なままでは・・・」という文言は、文科省として大学側の授業料徴収に対する正当性のボーダーラインを行政として示す試みに他なりません。つまり、「対面授業の実施が低調であること」を証明し、さらに学生が「十分な説明がなされていない」と主張すれば、それは文科省が「理解が得られない」、つまり、正当に授業料を徴収できない状況であるということになります。これは学費返還訴訟の1つの論点になりえたものです。

 

 としましたが、実際の訴訟が念頭にありました。

 それは「令和2年度の学費の半額相当である55万円と慰謝料90万円の合計額」である145万円の支払い(加えて年3パーセントの金利相当)を求めた「明星大学訴訟」です。

 これは東京の私立大学「明星大学」を2020年度入学学生(裁判中に退学し「元学生」)が訴えた裁判です。

訴えの趣旨はコロナ禍で対面授業を実施せずオンライン授業を実施したことは債務不履行であるというものです。東京地裁で2022年10月19日に判決が出たこの裁判については、私は東京在住の二人のエージェントを介してモニターしていました。今回、判決文が入手できたので裁判所の判断について簡単にみておこうと思います。

2 裁判所の判断

(1)コロナ禍における対面授業の実施義務

 裁判所は、債務不履行責任の有無を検討するため、コロナ禍における面接授業の実施義務について検討しています。以下、みてみましょう。

 

原告は、大学は、在学契約に基づいて、学生に対し、学校教育法83条1項の目的にかなった教育役務を提供するとともに、これに必要な教育施設等を利用させる義務を負うところ、面接授業の有する教育的効果及び大学設置基準25条1項が主に面接授業を想定していることからして、面接授業を行うことが学校教育法83条1項の目的にかなった教育役務の提供に当たると解されることに加え、本件大学が体験授業を重視していること、経営学部においても面接授業を重視していること、原告がそのことを重視し、本件大学に入学したことも併せ考慮すれば、被告は、〔1〕学生に対し、面接授業を実施し、大学施設等を利用させる義務を負っていたが、面接授業を一切実施せず、〔2〕大学施設を利用させなかったことは、在学契約の債務の不履行に該当する旨を主張

 

 原告は大学設置基準の想定が面接授業(対面授業)であること、大学及び学部が体験授業を重視していること、これらから大学側が「面接授業を実施し、大学施設等を利用させる義務を負っていた」(つまり、対面授業という債務を大学側が負っていた)とします。

 裁判所は大学設置基準では「授業は、主として教室における対面の授業である面接授業を想定しているということができる」としながらも、以下のように続けています。

 

面接授業の教育的効果が高いものであったとしても、授業の全部又は一部を面接授業で実施することが困難な場合にまで、必ず面接授業を実施しなければならないというものとは解されず、大学設置基準の所管庁である文部科学省高等教育局長も、令和2年3月24日付けの「令和2年度における大学等の授業の開始等について(通知)」において、学生の学修機会を確保するとともに、感染リスクを低減する観点から、いわゆる面接授業に代えて、遠隔授業を行うことが考えられるとし(前記認定事実(2)ア)、緊急事態宣言後の同年4月17日付け「大学等における新型コロナウイルス感染症の拡大防止措置の実施に際して留意いただきたい事項等について(周知)」において、すべての業務を一律に休業とするのではなく、遠隔授業の活用を検討するよう求め(同イ)、文部科学省高等教育局大学振興課は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、臨時休業が長期化するなど、本来授業計画において面接授業の実施を予定していた授業科目に係る授業の全部又は一部を面接授業により予定どおり実施することが困難と認められる場合には、特例的な措置として、面接授業に相当する教育効果を有すると大学において認められるものについては、大学設置基準第25条第1項で規定する授業の方法を弾力的に取り扱って差し支えなく、特例的な措置において面接授業以外の授業として認められる遠隔授業は、同条第2項の規定による遠隔授業ではないから、同令32条第5項の規定は適用されず、同規定の60単位の上限に算入する必要はないとして、60単位を超える遠隔授業の利用も可能とし(同ウ)、その基本的な考え方は、文部科学省高等教育局大学振興課が令和2年5月1日付けで発出した「遠隔授業等の実施に係る留意点及び実習等の授業の弾力的な取扱い等について」(同エ)、同年6月5日付けで発出した「大学等における新型コロナウイルス感染症への対応ガイドラインについて(周知)」(同オ)、令和2年7月27日付け事務連絡(同カ)、令和2年9月15日付け周知(同キ)にも引き継がれている。

 

 「面接授業の教育的効果が高いものであったとしても、授業の全部又は一部を面接授業で実施することが困難な場合にまで、必ず面接授業を実施しなければならないというものとは解されず」と裁判所は判断し、その上で文科省の「学生の学修機会を確保するとともに、感染リスクを低減する観点から、いわゆる面接授業に代えて、遠隔授業を行うことが考えられる」という見解を示しています。

続けて、文科省の調査をもとに「令和2年5月20日時点での授業の実施状況についてアンケートを実施したところ、回答のあった890校のうち864校が授業を実施しているものの、面接授業を実施しているのは僅か27校にすぎず、面接授業と遠隔授業を併用しているのは59校であり、その余の778校が遠隔授業を実施していたこと(前記認定事実(3)ア)から」、裁判所は「かかる弾力的な運用が全国の大学・高等専門学校において、当時の新型コロナウイルス感染症の感染状況等に応じた適切な対応として、広く受入れられたと認めることができる」としています。

つまり、面接授業の実施はコロナ禍という「授業の全部又は一部を面接授業で実施することが困難な場合」においては必ず実施しなければならないものではないとします(大学側にその義務はない)。さらに遠隔授業(オンライン授業)で代替することが可能であり、それは当時、一般的な対応として受け入れられていたため、裁判所は「新型コロナウイルス感染症が蔓延する中、大学・高等専門学校が休校となるのを避け、授業を実施することを可能とする合理的な選択肢であったと認めることができる」と判断します。


 したがって、面接授業の教育的効果が高いものであったとしても、授業の全部又は一部を面接授業で実施することが困難な場合にまで、必ず面接授業を実施しなければならないというものとは解されず、原告がそのような場合においても、面接授業を実施する債務があると主張するのであれば、採用することができない。

 

 このように原告の主張する債務(コロナ禍での対面授業の実施義務)を認めませんでした。

(2)前期の授業形態についての検討

 続けて、「被告に本件在学契約の債務不履行に当たる事実があったかどうかを、具体的に検討する」として大学の判断を次のようにまとめます。


 本件大学は、政府が緊急事態宣言を発出する前に当面は面接授業を実施しないと決定したことになるが、その約2週間後に緊急事態宣言が発出されたことからすると、不合理な判断であったとはいい難く、同年5月20日時点で、令和2年度前期において原則として遠隔授業を実施する旨を判断し、その方針どおり実施したことも、この時点における全国の大学・高等専門学校における授業の実施状況(前記認定事実(3)ア)に照らして、本件大学のみ突出した選択をした不合理なものではなく、本件大学と最寄り駅(多摩モノレール中央大学・明星大学駅)が同じ場所に多摩キャンパスを有する中央大学においても、法学部及び商学部において、令和2年の前期・春学期は全面的にオンライン授業を実施するにとどまったこと(同エ)からすると、本件大学の経営学部において、令和2年度前期につき、遠隔授業を選択し、面接授業を実施しなかったことをもって、不合理な判断であったと認め難く、他にその認定を覆すに足りる証拠がない以上、被告が令和2年度の前期に本件大学経営学部において、面接授業を実施しなかったことが在学契約の債務不履行に当たるということはできない。

 

 明星大学の判断は緊急事態宣言の発出時期から「不合理な判断であったとはいい難く」、さらに全国的にみても「本件大学のみ突出した選択をした不合理なものではなく」、近隣の大学でも同様の措置が取られたことも鑑みて、「令和2年度前期につき、遠隔授業を選択し、面接授業を実施しなかったことをもって、不合理な判断であったと認め難く、他にその認定を覆すに足りる証拠がない以上、被告が令和2年度の前期に本件大学経営学部において、面接授業を実施しなかったことが在学契約の債務不履行に当たるということはできない」とします。

 文科省の文書について原告は「令和2年7月27日付け事務連絡では、遠隔授業の実施は、飽くまで『面接授業の実施が困難』な場合の例外的な措置であるから、緊急事態宣言が発出されたとしても、そのことから直ちに面接授業を実施しないことが社会通念上許容されることにはならず、上記債務の不履行につき、被告に帰責事由がある旨を主張」します。これに対して裁判所は「令和2年度前期における新型コロナウイルス感染症の感染状況に加え、前記説示したところなどに照らして、被告が令和2年度前期に本件大学経営学部において、面接授業を実施しなかったことが在学契約の債務不履行に当たるということはできない」として「原告の前記主張は採用することができない」とします。

以上の部分は2020年度前期にあたります。

期の授業形態についての検討

裁判所は後期についても検討しています。後期の大学の授業運営について次のように裁判所は判断をしています。「勉天」は当該大学のLMSです。以下、長いので適宜区切りながら説明します。

 

本件大学は、新型コロナウイルスの感染状況等をうかがいながら検討を進めたが、依然として収束の見通しが立たないとして、学生・教職員の安全確保を重視し、令和2年度後期においても一部の科目(実験科目・実習科目)を除いて、前期同様遠隔授業を継続することを決めた

 

 感染の収束が見込めない中で「学生・教職員の安全確保を重視し」遠隔授業を基本としながら、一部の実験科目や実習科目を対面で実施する方針を大学は示します。

 

あらかじめ全学生にその旨を明らかにするなど情報の発信をする一方で(原告の陳述書(甲9)には、本件大学から一律に面接授業を実施しない理由について全く説明がなかったとの陳述部分があるが、勉天を通じ複数回にわたり、相応の説明がされたことは否定できない。)、令和2年9月15日付け周知において言及された交流機会の設定、学内のPCルームの開放や遠隔授業を受講するための教室を用意する措置を講じ、図書館の利用に工夫をこらすなど(この点は後述する。)したものと評価することができ

 

 原告は「一律に面接授業を実施しない理由について全く説明がなかった」と述べていますが、実際はLMS等を通じて情報発信が行われ「相応の説明がされたことは否定できない」状況でした。また、交流機会の設置やPCルームの開放、学内での遠隔授業受講教室の設定、「図書の郵送貸出や複写サービスを行うことなど」、工夫して図書館が利用できる状況でした。

 

遠隔授業を継続することにした理由も、本件大学の学生数、本件大学への交通手段、授業再開後の学生の行動様式などに照らし首肯し得るもので(本件大学が懸念する感染拡大の危険の内容からすると、面接授業中の感染対策など、本件大学の努力だけで払拭することができないことも、明らかといえる。)、その時点における全国の大学・高等専門学校における授業の実施状況(前記認定事実(3)イ)や東京都内の大学における授業の実施状況(同ウ)、更には本件大学と最寄り駅(多摩モノレール中央大学・明星大学駅)が同じ場所に多摩キャンパスを有する中央大学においても、令和2年後期・秋学期の授業も、原則としてオンラインによる遠隔授業での実施を継続し、面接授業は、一定の条件下で実施するにとどまったこと(同エ)に照らし、本件大学のみ突出した選択をした不合理なものとはいえない。

 

 裁判所は「遠隔授業を継続することにした理由も、本件大学の学生数、本件大学への交通手段、授業再開後の学生の行動様式などに照らし首肯し得る」とオンライン授業継続の理由について理解を示しました。また、前期に続き、全国他大学及び近隣の大学の状況と比較しても「不合理なものとはいえない」と判断しています。

 

大学においては、学問の自由や大学の自治が認められ、施設の管理についてのある程度自主的な秩序維持の権能や、教授の具体的内容及び方法についてのある程度自由な裁量が認められ、本件大学が実施した遠隔授業が,面接授業に相当する教育的効果を有するものではなかったことを認めるに足りる的確な証拠はない(原告の陳述書(甲9)によれば、原告にとって遠隔授業は全く満足できるものではなかったことが認められるが、Zoomによる講義では、学生が発言できる機会のあるものがあり、明星LMSを利用した講義においても、チャットを使って教授に質問する手段が設けられており、毎回、レポートの課題が出されるものもあったというのであるから、本件大学としては、遠隔授業にも教育的効果が得られるよう様々配慮していたことがうかがえる。)

 

大学側の施設利用の裁量が認められますが、重要なのは中盤から後半です。裁判所は、原告の「原告にとって遠隔授業は全く満足できるものではなかったことが認められる」としながら、「Zoomによる講義では、学生が発言できる機会のあるものがあり、明星LMSを利用した講義においても、チャットを使って教授に質問する手段が設けられており、毎回、レポートの課題が出されるものもあったというのであるから、本件大学としては、遠隔授業にも教育的効果が得られるよう様々配慮していた」と認定しています。

つまり、原告1人の主観的な意見ではなく、それぞれの授業で教員への質問機会等の工夫、課題など、教育的効果が得られるような配慮を認め、「本件大学が実施した遠隔授業が,面接授業に相当する教育的効果を有するものではなかったことを認めるに足りる的確な証拠はない」とし、

 

本件大学の経営学部の1年生が受講し得る科目について、大学構内での面接授業を実施せず、被告において面接授業に相当する教育効果を有すると大学において認める遠隔授業のみを実施したことが著しく不合理であるとはいえず、被告が本件在学契約に基づく債務の履行を怠ったといえない。

 

 としています。

(4)オンライン授業が許容される条件について

 原告はそもそも「社会通念上、面接授業を実施せず遠隔授業で代替することが許容されるのは」と以下の3つを挙げており、裁判所もそれを検討します。

 

〔1〕十分な感染対策を講じても面接授業を実施することが困難である場合に限られ、その場合であっても、〔2〕学生に対し、合理的な説明を丁寧に行うこと、〔3〕遠隔授業の受講に終始するような学生が生じないようにすることなどの配慮が求められるというべきであるところ、これらの検討や義務の履行を怠った旨を主張

 

これに対して裁判所は、

 

〔1〕遠隔授業を継続することにした理由も、本件大学の学生数、本件大学への交通手段、授業再開後の学生の行動様式などに照らし首肯し得るもので、原告が想定する面接授業中の感染対策など、本件大学の努力だけで払拭することができないことも、明らかといえるし、〔2〕本件大学が勉天を通じ複数回にわたり、相応の説明をしたことは否定できず、〔3〕交流会を設定したり、学内のPCルームの開放や遠隔授業を受講するための教室を用意する措置を講じたり、図書館の利用に工夫をこらしたりするなど、遠隔授業の受講に終始するような学生が生じないようにすることなどの配慮をしたことが認められる

 

としています。

オンライン授業継続理由として、学生数や交通手段、学生の行動様式など、大学側が挙げているものについて裁判所は妥当と認めており、「原告が想定する面接授業中の感染対策など、本件大学の努力だけで払拭することができないことも、明らか」としています。また、説明についてもLMSで複数回行っており「相応の説明をしたことは否定できず」、交流会や施設利用などの取り組みも「遠隔授業の受講に終始するような学生が生じないようにすることなどの配慮」として認められています。

(5)施設利用についての事実認定

 施設利用については、図書館利用やパソコン室、遠隔授業受講用教室開放などの事実を認定し「本件大学が原告に対し、教育施設等を利用させていなかったとはいえないし、その他被告が原告に対して教育施設等の利用をさせる義務を怠ったと認めるに足りる的確な証拠もない」とし「被告が原告に対する在学契約に基づく債務の履行を怠ったといえない」としています。

(6)結論 

 裁判所は以上の議論を受けて、

 

被告に債務不履行は認められないため、それを前提とする原告の被告に対する不当利得返還請求権も認められない。


 としており、大学側に債務不履行がなかったと認定します。

そして、結論として、


以上によれば、主位的請求及び予備的請求はいずれも理由がないから、棄却することとして、主文のとおり判決する。

 

 主文は判決文冒頭に以下のように提示されています。

 

1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

3 おわりに

 原告は地裁判決後、控訴しており、舞台は東京高裁に移されています。そのため、この判決が確定ではないのですが、2023年4月現時点では裁判所がコロナ禍の授業形態に示した唯一の判例であり、非常に重要なものであるため、今回取り上げました。

 ポイントは様々でしょうが、裁判所がコロナ禍という特殊な状況下での対面授業実施の義務(債務)を認めず、休講措置を回避するためのオンライン授業を「合理的な選択肢」であったと認めた。これが最も大きいものでしょう。

 判決文についてはオンライン判例集などで取得可能です。

 さて、文科省の動きと照らして見ておきます。裁判所は、大学が「相応の説明をしたことは否定できず」としています。学生への「説明」は、文科省が強調していた部分です。手元の資料によると当該大学側は2020年度前期から学生・保護者への情報発信を行なっており、9月には保護者向けのウェブサイトも設置していました。今回は省略しましたが判決文でも同様のことが確認できます。文科省が「これ以上学生への十分な説明もなく、対面授業の実施が低調なままでは、授業料の徴収に理解が得られないことについて、文科省としても発信する」と検討する前から、このような「説明」は行われており、裁判所が今回、それを認めています「これ以上学生への十分な説明もなく」というものが(あくまでも東京の一私立大学の事例ですが概ね、他大学も同様の傾向にあったと思われます)、現実と乖離していることが明らかになります。

 また、「対面授業が低調」であることについては上記の通り、コロナ禍においてその義務は認められませんでした。つまり、コロナ禍において対面授業を抑制することには合理性があったと裁判所は認めたわけです。継続中の裁判なので論評は避けたいのですが、この点に関しては、私は常識的な判断と感じます。

 もし文科省が「これ以上学生への十分な説明もなく、対面授業の実施が低調なままでは、授業料の徴収に理解が得られないことについて、文科省としても発信」していたら、今回の判決にも影響を与えたかもしれません。ただ、文科省がこのような発信を行なったなら、各大学が「コロナ禍において対面授業を拡大できる」論理と根拠を求めたように感じます。

それがどこで問題になるかは別にして、どこまで行っても「新型コロナウイルスの感染拡大」についての評価が問題になるのですが、今回の判決を見ても文科省の状況認識はかなり特殊なものだったことが伺えます。

 ところで、継続中の裁判なので触れるべきか悩んだことなのですがオンライン判例集ではすでに公表されているので良いかと思い、話そうと思います。

 原告弁護人2名ともウェブ上の記録から日本共産党系の弁護士団体「自由法曹団」のメンバーとして活動していたことが確認でき、うち1名は過去に東京支部の幹事として仕事をしていた人物であることが判明しています。後者については日本共産党の東京都議会議員選挙候補者の応援者として名を連ねています。

 この裁判に日本共産党や日本共産党の学生団体「日本民主青年同盟」、さらに自由法曹団が組織的に関わっているかと言われると、私自身はかなり懐疑的です。しかし、日本共産党が対面授業再開を求めていたこと、大学の学費減額を求めていたことは今回の裁判の性質とかなり似たものを感じますただ、この点が明瞭になることはないのではないかとも思います。裁判についてはひとまず、高裁で判断が出るのを待ちたいと思います。

 次回は最後に少し示された「日本共産党と対面授業再開運動」の関係についてまとめたいと思います。

追記

2023年6月9日、東京高裁及び東京地裁立川支部に資料問い合わせのおり、この裁判は2022年12月に「控訴取り下げ」となっていたことが判明しました。上記内容は2023年4月14日にリリースしたものですが、この時点で「控訴」までは確認できていましたが「控訴取下げ」までは確認できていませんでした。この旨、ご了承ください(2023年6月9日)

引用:

東京地方裁判所立川支部令和3年(ワ)第1588号:令和4年10月19日民事第1部判決(LEX/DB INTERNET)

お願い・2021年4月19日に「文部科学省に届いた『苦情・要望』についての調査」のレポートをアップロードして以降、SNS上で私への誹謗中傷を含む投稿が、複数回、複数アカウントによってなされました。・その中から悪質なものに関して、不法行為としての名誉毀損が成立しており私に対して大きな損害が発生していることが考えられましたので刑事・民事の両面から法的措置を取るため、発信者情報開示の仮処分申請を東京地裁に行いました。債権者面接及びTwitter社代理人を交えた双方審尋が行われ、2021年6月9日、仮処分命令が発令いたしました。・これに伴い2021年6月17日、Twitter社より当該アカウントのIPアドレスが開示され、プロバイダへの消去禁止仮処分及び発信者情報開示請求訴訟を提起するため、サイバーアーツ法律事務所 田中一哉弁護士に対して委任契約を結びました。・今後はプロバイダとの間での発信者情報開示訴訟となり、契約者の情報が開示されて以降、刑事告訴及び民事訴訟を準備いたします。
・ただし、情報開示訴訟となりますと費用的時間的コストがさらにかかり、損害賠償請求の金額もより高額になってまいります。・不法行為の事実関係を争うかどうかは別にしても、誹謗中傷をされた方も債務が膨大になる危険が高まります。
・以上のことより、私への誹謗中傷に御心お当たりのある方は早急に代理人、サイバーアーツ法律事務所 田中一哉弁護士(連絡先ウェブサイト)にお申し出いただきますようお願い申し上げます・双方で事実関係を確認できましたら、示談も含めて法的措置のあり方を改めて検討いたします。
SNS投稿の引用方法について *以下、TwitterについてはXと読み替えます・公開中のレポートについてSNSの投稿を引用する際、以下の基準で行います。・Twitterの場合は埋め込み機能を用いての引用を認めています。(参考:Twitterサービス利用規約・ただし、レポートはPDF形式が基本のため、この機能を用いることができません。・Twitter社はTwitterフェアユースポリシーを公表していますがこれは米国内でのルールあり,我が国においては著作権法の権利制限規定で公正な慣行による引用(32条)が認められています
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。(出典:e-Gov 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)
・このことからTwitterの投稿引用に関しては、公正な慣行に合致する方法であれば著作者に無断での引用が可能だと考えられます。・論文等で引用を行うための「公正な慣行」=「一般的な慣行」ではURLの記載は必要だと思われます。(参考)editage 「ソーシャルメディアからの情報を学術論文に引用する方法」・ただし、今回の調査については、大学生のアカウント等、未成年のものが対象となる可能性が考えられ、また、内容も論争的なものを含むことから、(場合によりますが)不必要にアカウントを人目に晒すことは本意ではありません。
・そこでTwitterに関しては「アイコン」「名前」「スクリーンネーム」及び「添付画像」について隠し、さらにURLについては場合によって検索避けのため画像での貼り付けとして、対象アカウントの保護と引用慣行の徹底を行おうと思います。・例外として、すでに削除されたものでアカウント所有者に危害が生じないと判断できる場合、あるいは研究の都合上、「名前」等を明記したほうが適切だと判断した場合は一般的な引用の慣行に従うこととします。・政治家等の公職者、メディア等の企業体等の公共性が高いと思われるアカウントについては一般的な引用の刊行に従うこととします。・ご自身のアカウント/投稿の引用方法について問題がある場合、当ウェブサイトの「お問い合わせ」からご連絡ください。

2023年4月14日 ver1 公開

2023年6月9日 ver2 (「追記」)

本ウェブサイト掲載の内容は蒲生諒太の個人研究成果です。所属機関等の公式見解ではございません。