今回で13回目を迎えた映像翻訳フォーラム、

当日は160名以上の方々にご参加いただきました。その模様をリポートいたします。

第一部:

基調講演「ニューラル機械翻訳と字幕翻訳」

山田 優 氏(関西大学 外国語学部 外国語教育学研究科教授)

翻訳を職業としている人にとって関心が高まっているニューラル機械翻訳の行方。 「今の仕事がなくなってしまうかもしれない」、「効率化できるかも」、「ギャラに影響は出るの?」等、様々な思いを抱えているのではないでしょうか。今回のフォーラムは、学習者や翻訳者だけでなく、制作会社や配給会社など、多数の企業様からのご参加もありました。業界内で、いかに機械翻訳が注目されているかの表れでもあります。

今回の講演では、「プロの字幕翻訳とファンが自主的に字幕を付けたFanSubでは、どちらが視聴者の負荷が少なく、満足度が高いのか」、「字幕翻訳ができる人の脳の動き」、「ニューラル機械翻訳の現時点の精度や今後どのような可能性を持っているのかとその研究結果」など、翻訳者も含めた制作者にとって、普段、触れられない情報が満載でした。

機械翻訳の精度が上がり、大衆の求める翻訳が機械でも可能になった場合、語学学習者や翻訳者が減ってしまう懸念はあります。その問いに対して、山田教授は「語学を勉強する必要性がなくなってしまったとしても、他の言語を知っている事で、言語を話せる以上の価値、言葉から想像できる世界がある」とおっしゃっていたのが印象的です。

「字幕翻訳を取り巻く環境は変化してきていますが、改めて今、人間として翻訳はどのように変化すべきか、または変化してはいけないところが残るのか、再考してほしい。翻訳の本質職業としてのプロフェッショナル性をどのように人間が考えていくべきか考えるために、テクノロジーは進化しているという考えもある。この基調講演を契機に考えてほしい」とメッセージを残してくださいました。

<ご参加者からの感想>

・北海道 40代女性(フォーラム参加3回目)

機械翻訳がどのくらい進んでいるかを知ることができた。


・神奈川県 30代男性(フォーラム参加4回目)

初めて耳にする内容ばかりで非常に興味深かったです。


・神奈川県 20代女性(フォーラム参加1回目)

機械翻訳の現状や今後について、とても参考になったのと同時に、翻訳者の役割について考えさせられた。


・東京都 30代女性(フォーラム参加2回目)

機械翻訳の発展のスピードの早さを知ることができ、人間の翻訳者にしかできないことがあるのか、

どのような姿勢で努めていくべきなのか考える機会になりました。


・東京都 40代女性(フォーラム参加7回目)

普段の翻訳では考えられない部分がクリアに整理されておもしろかったです。


・東京都 20代女性(フォーラム参加1回目)

機械翻訳の研究が進む中でも、人間による翻訳の重要性を再認識できた。


・神奈川県 40代女性(フォーラム参加3回目)

今、最も関心のある話題だったので、とても参考になった。機械翻訳に対する不安、疑問が少し解消された。


第二部:

字幕翻訳コンクール 授賞式&最優秀者の翻訳講評

6年ぶりの開催となった今年度の字幕コンクールでは、あいち国際女性映画祭でワイズ・インフィニティが字幕制作の担当したご縁から、マリセル・カリアガ監督の『七つの米袋』という作品を課題として使用させていただきました。


これまでのコンクールとの大きな違いは、タガログ語音声の作品に対し、英語・韓国語・中国語の3言語のスクリプトから字幕翻訳いただいた点です。iYuno Global社が独自開発したクラウドツール、iMediaTransを用いる事で、1つの映像で複数名の字幕制作状況を管理する事が可能になり、字幕制作ソフトの有無や言語に関係なく、どなたでもご参加いただけるコンクールを開催する事ができました。 動画配信サービスの成長により、即時性、同時性が求められる昨今、1つの作品が同時進行で多言語化される仕組みを体感いただけましたでしょうか。


最終的に、予想をはるかに超える約200名の方にご応募をいただきました。 ご参加いただきました皆様、ありがとうございます。

経験者部門

佐藤純子さん

石塚葉月さん

西井真実子さん

<経験者部門の受賞者と審査員。授賞式にて>

経験者部門の最優秀賞に選ばれたのは、ワイズ・インフィニティの通信講座を受講後、見事トライアルに合格。英語字幕翻訳者としてお仕事をされて3年になる、佐藤純子さんです。「地方在住なんですけど、ワイズさんの通信講座を受け、その後プロ試験に合格しまして、お陰様でもうすぐ仕事を始めて3年になります。地方では無理だと思っていた、憧れの字幕翻訳の仕事を今、毎日できている事に、毎日楽しいですし、感謝でいっぱいです。これからもがんばっていきたいと思います。」とコメントをいただきました。おめでとうございます!


授賞式後の講評では、最優秀賞に輝いたお二人の字幕を上映いたしました。 それぞれの審査員がどのような基準で優秀賞・最優秀賞を選んだのか、今回の作品を訳す上で難しかった部分、どのような工夫を期待していたか等のお話をいただきました。未経験、経験者の部門によって、訳の傾向もあり、非常におもしろい講評を聞く事ができました。

ご参加者に聞いてみました

次回も業界の今と未来をお伝えしていきます。 また来年お会いしましょう!