「アクションを起こす」

大阪女学院大学のWomen’s Leadership in Action の授業では、「国際社会や地域社会に関わるテーマに取り組むことにより、知識、理解力、外国語運用力、汎用的技能を獲得すること」(シラバス2022より)が求められ、各グループが活動テーマを決め、みんなで話し合いながら取り組みます。その中で今回ご紹介するチームは、メンバーの強い思いから「外国籍のひとり親世帯を助けたい」と活動を行いました。

日本語さえ上達すれば生活がしやすくなるのか

この問題に取り組むことで、チームの一員で自身もひとり親家庭で育った学生は次のように語ってくれました。「この問題に取り組む前は、外国籍のひとり親の方は、日本語さえ上達すれば生活がしやすくなるのではないかと思っていました。しかし、この問題に取り組んでいるうちに、日本語の問題だけでなく、母国の文化や言語を使わずに日本で生活することで、アイデンティティを失いかけていることも気づきました。親が異国で1人きりで苦労しながら子育てをしてくれているにも関わらず、親を尊敬できなかったり、海外にルーツがあっても日本で育った子どもは自身のアイデンティティを失っていることも多く、親子の間でのギャップが生まれ、その結果、自分のルーツに自信を持てない子どもたちがいることは日本の国にとって大切な問題ではないかと考え始めました。」

チームは、外国籍の親のために子供たちが持って帰る学校からのお便りの翻訳サービスを始めます。外国籍の保護者の方は、Google 翻訳を使用しても学校からのお便りの内容が、わかりにくい為、学校が直接連絡してくれるまで何もできないことが多いそうです。そこで、気軽にメールで相談できるようにLINEグループを開設。LINEで翻訳してほしい内容知らせてもらうと英語やタガログ語、ベトナム語、ネパール語などに翻訳して、返信する無料のサービスです。

例えば、「芋ほり会のお知らせ」とあっても、「なにをする?」「芋って、どんな芋?」と疑問だらけ。日本人が簡単な日本語と思っていても、通じていないことが多いのです。


どうしてグループ名をSallyという名前にしたのか?と質問すると

「Sallyとは Strong Ally の略で、「強い味方」という意味をします。女学院の魅力を見せるために、可愛い名前をつけながらもその名前の意味は深いことがポイントだと思います。」と答えてくれました。

想像もしなかった出会いと学びがありました

といっても、活動はどれも順調にはいかなかったようで、常に悩みながら進めた彼女たち。

「実は色々な団体に連絡したのに良い返事がもらえないどころか、全く返信をもらえなかったこともあり、計画通りに事が進まない。。。と落ち込んでいました。そんな時に私たちのグループは、 生活苦から無理心中を計った外国籍のひとり親の話とそれを繰り返さないように立ち上がったSouth East Asian Communityについて書かれた新聞を読みました。早速その団体に連絡を取りましたが、いつものように返事は無く、どうしようかと悩んでいたところ、翌週の授業で先生からその記事に載っている住職さんのお寺に連絡をしてはどうかと言われました。みんなに背中を押され、授業中に廊下に出て電話をしてみたところ、その一本の電話が私たちが考えてもみなかった世界に連れて行ってくれたのです。この経験を通して、諦めないこと、ポジティブな気持ちを持つことの大切さも学びました。」

ひとり親をサポートするSouth East Asian Communityの勉強会に参加。打ち合わせの様子 

「今回、「アクションを起こす」授業を履修して、想像もしなかった出会いと学びがありました。

私は、自分の境遇もあり、ひとり親をサポートしたいというチームに入り、最初にみんなで私たちの起こしたいアクションや目的についてよく話し合いました。そして結果的には全員の総意で、外国籍のひとり親にターゲットを絞って行動を起こすことにしました。今思うと、この時にしっかり話し合っていたので、ブレずに目標に向かってチームが一つになれたのではないかと思います。」

South East Asian Communityのイベントに参加し、自分たちの境遇や活動を発表 

「この大学で私は、このように、アクションを起こす機会を与えてもらったことが一番の喜びです。ずっと今まで片親家庭で育ち、周りと違うことを悩んでいたからこそ、同じ境遇を持つ子どもたちの助けになりたかったのですが、学生なので何もできないだろうし、親になった訳ではないので親の気持ちも理解できないだろうと思っていました。でも実際にこの授業に入って、アクションを起こす環境に身を置いたので、周りと協力して、私にも他の人に役に立つ行動が起こせました。みんながいたからこそ、できたことだと思います。小さなアクションがこのような出会いを生み、この授業を取る前には考えもしなかったことを学ぶ事ができました。」

あなたの強い味方

「私たちのグループは、授業が終わったらそれで終わりにするのは良くない、一時だけのサポートはいけないと考えています。そこで、引き続き、この問題のために貢献したいと考え、学期の半ばにSallyという同好会を立ち上げました。Strong Ally、つまり、あなたの強い味方という意味です。私たちの思いを伝え、賛同する後輩にもこの同好会に入ってもらい、活動を続けていきたいと考えています。そして、子どもたち、親たち、日本の社会のためにアクションを起こし続けたいです。子どもたちのアイデンティティのために、海外にルーツを持つ子どもたちが自分の文化に誇りを思うようなイベントを企画するのが私の次の目標です。」

大阪女学院大学はこんな素敵な、社会との繋がりのある本物の勉強ができる大学です。」