特殊反応場を利用するCO2化学変換
カーボンニュートラルに資するCO2資源化はいまや世界中で多くの研究が行われておりますが、大きなエネルギー消費を伴ってしまうと本質的な解決にはつながらないことから、いかに外部エネルギーを使わず、簡便かつ安価に化学変換できるかが重要になります。我々は反応促進剤である触媒の開発に加えて、CO2を化学反応へと導く環境構築を目的として新しい反応場の設計を行っています。
無機固体表面の微細構造制御による高機能触媒の開発
元素の性質とは、同じ元素同士で集合体(バルク)を形成した時に発現するものですが、その元素を1つだけにしたり、周囲を別の元素で囲んだりするとこれまで見たことのないような機能を発現します。そうして従来と配位環境や微細構造の異なる状態を構築することにより、固体表面でユニークな化学反応を引き起こす新規触媒材料を開発します。
金属ナノ薄膜触媒の開発
工業触媒の多くは熱安定性の高い担体表面に金属ナノ粒子を析出した構造が一般的ですが、金属を二次元方向に配向した薄膜構造が極めて高い触媒性能を発現することがあります。Rh触媒によるNO還元反応を例にとると、Rh薄膜はRhナノ粒子に比べて数十倍の速さでNO還元できることが明らかになっており、同一元素でも配列制御だけで大幅に触媒機能が向上するというユニークな結果が得られました。
三元触媒における貴金属節減・代替技術
希少で高価な白金族元素(Rh, Pd, Pt etc.)は、工業利用の大半がガソリンエンジン自動車の排ガス浄化触媒(三元触媒)として使用されています。燃料電池車や電気自動車など次世代型自動車が幅広く研究開発されていますが、まだまだ人間社会に欠かせないエンジン自動車がこの先環境問題を再び引き起こさないよう、白金族元素の優れた触媒性能を安くて豊富な汎用元素で代替する技術が重要です。
窒素ドープ炭素の触媒作用に関する研究
カーボンは最も身近な無機材料の一つですが、構造安定なために固体触媒としては機能しません。そこでsp2混成のC-C網の中にNをドープすることにより、縮合反応や空気酸化など様々な有機合成に有効な新規触媒材料に変身させることにより、豊富な炭素資源を用いた金属フリーな触媒を設計します。
高密度二酸化炭素を反応場に利用する有機合成
超臨界二酸化炭素やCO2膨張液体など、高圧CO2によって構成される反応場では有機基質に近接するCO2分子がユニークな化学的相互作用を発現します。そうした分子間相互作用に起因する官能基の保護効果や化学結合の制御を利用して、有機合成における反応性や生成物選択性を自在にコントロールすることができればCO2加圧という単純操作のみで化学反応を操ることができます。