研究内容
森林放射能汚染のリスク評価:福島の森林再生のための総合的評価手法の開発
福島第一原発事故により汚染された森林は林縁から20mの範囲以外が未除染で、森林を事故前のように住民が安全かつ安心して利用できるために、森林の除染により空間線量を低下させ、森林を長期的に適切に管理していくことが求められている。本研究室では、原子力災害による放射能汚染からの最適な森林再生の方向性を示す総合的な評価手法を確立することを目標とした研究を農学と医学の研究者と共同で行う。
福島第一原発事故により汚染された森林は林縁から20mの範囲以外が未除染で、森林を事故前のように住民が安全かつ安心して利用できるために、森林の除染により空間線量を低下させ、森林を長期的に適切に管理していくことが求められている。本研究室では、原子力災害による放射能汚染からの最適な森林再生の方向性を示す総合的な評価手法を確立することを目標とした研究を農学と医学の研究者と共同で行う。
環境汚染物質の環境中動態モデルの作成
除染レベルに対応した10年後のCs-137の地中分布
近年、抗生物質が効かない細菌(薬剤耐性菌)の増加が、世界的な問題となっている。2050年には、薬剤耐性菌による死亡者数が、がんによる死亡者数を上回ることが予想されている。薬剤耐性菌は、病院といった医療に関わる場所だけの問題と捉えられがちだが、その拡散には、河川水といった環境水が果たす役割が大きいことがわかってきた。例えば、薬剤耐性菌を含む病院排水が河川水へ流れ込み、それが農業用水などに使われることで人々に取り込まれるといった可能性が考えられている。このため、薬剤耐性菌問題の解決には、環境という視点からのアプローチが必要不可欠である。本研究室では、主に水環境中の薬剤耐性菌に着目した研究を行っている。
薬剤耐性菌のDNA系統解析
大腸菌コロニーの培養
森林除染を実施した場合の効果(空間線量率の低下)とデメリット(土壌流亡、森林生態系へのマイナス影響)を定量評価するモデルの構築を目指す。以下の2つテーマでの研究を実施する予定。いずれのテーマでも、モデルを構成するパラメータの設定とモデル推定値の検証を実施するために福島県内の森林数ヵ所に調査に行き土壌と植物等を採取してデータを得るとともに土壌を用いた物理化学実験を実施する。最終的に、過去数年間本研究室で開発を続けてきた空間線量率評価モデルに組み込むことにより森林除染の効果を定量的に評価する。
(1-1)森林土壌と樹木・菌類における放射性物質の動態解析モデルの構築
森林除染による森林土壌中の放射性物質濃度、樹木や菌類の根量、土壌中栄養分の量の変化を推定する。
(1-2)森林除染による森林の災害防止機能・土壌保全機能と水源涵かん養機能への影響評価モデルの構築
森林斜面における土壌、水、放射性物質の移動を土壌壌物理化学及び水文学的アプローチによって解析できるモデルを構築し森林除染による土壌流亡量を定量的に評価する。
森林地域の住民の仕事(林業など)、森林もたらす文化的サービス(山菜・きのこ採取、散策やハイキングなどのレクリエーション・レジャー活動)の事故前後での変化を、2つの定量的指標(生活時間と食品摂取量)で把握するために複数の森林地域の住民にアンケートと聞き取り調査を実施する。調査の結果得られたデータから、事故による性、年齢などによる個人分類ごとの住民の生活行動時間と森林食材を含めた食品摂取量の変化を解析する。その結果をもとに健康リスク(外部被ばく、内部被ばく、被ばく以外の疾病罹患、心理的影響)を評価する。
森林がもたらす生態系サービスのうち、供給サービス(木材生産、原木しいたけ栽培や山菜・きのこ・野生鳥獣などの森林食材採取)と文化的サービス(森林でのレクリエーションや観光)の貨幣的価値を、関連する林業、観光業の従事者の雇用や地域経済における役割も含めて評価するモデルを作成し、森林の放射能汚染がもたらした損害、除染を実施した場合の効果とデメリット(人件費・工事費などのコスト)を経済的指標(貨幣、木材生産量)で評価するモデルを作成する。モデル作成のために林業や観光業などに関する統計報告などの資料収集や現地調査を実施する。
日本は島国であり、諸外国と比較して臨床における薬剤耐性菌の性質が異なることが知られている。しかし、日本の環境水中の薬剤耐性菌の性質に関する知見はほとんど得られておらず、また地域的なものに限定されている。本研究では、全国の環境水から薬剤耐性菌を単離し、DNA解析により薬剤耐性遺伝子や病原性遺伝子を検出し、環境水中の薬剤耐性菌の健康リスク評価に必要な知見を提供する。
環境水中には薬剤耐性菌が存在することがわかっているが、その起源 (汚染源)に関する知見はほとんど得られていない。本研究では、薬剤耐性菌としても問題となっている大腸菌に着目し、起源生物ごとに大腸菌のDNA配列が異なるという仮説のもとでスーパーコンピュータやプログラミングを駆使してDNA配列解析を行い、特定の起源の大腸菌に多く見られる遺伝子 (=遺伝子マーカー)を特定する。開発した遺伝子マーカーを用いて、水質汚染源を特定し、健康リスクの低減に貢献する。