Works - 音楽書

わが友、シューベルト

版元商品ページ

「近年めざましい進展をみせるシューベルト研究。その中心人物による記念碑的労作」(版元サイトより)である本書。掘り下げる深さとカバーする領域の広大さ、類を見ない熱量、40万字を超える文字数と夥しい数の図版量、そのどれをとっても圧巻で、読み進めるうちにそれまで見たことのない深淵の世界を覗くような感覚があったことから、それを感じられるような装幀を試みました。

まず、カバーには著者の堀さんからご提案いただいたルドルフ・フォン・アルト『トラウン湖』を装画として使用。帯でも謳われている「親しさ」を情感豊かにたっぷり伝えてくれると同時に、本書のすさまじい密度にも応えうるとして唯一無二であり、所蔵先であるウィーンのアルベルティーナが特別に高解像度データを作製してくれたことで、精細な印刷が実現しました。

そのカバーの中心部を正円で型抜きし、表紙にあしらわれたタイトルとそれを囲む球状星団「メシエ15」が覗き見えるようにしたのが、本装幀の最大の特徴になっています。シューベルトが「ここではないどこか」を探し求め、友とともに万華鏡から「星空」を覗いていた(であろう)という記述から着想を得たものですが、それが同時に、「他なるしらべを現前させる切断の享楽がこの作曲家を貫いている」と本文中に書かれているように、シューベルトの大きな特徴のひとつである「切断癖」をも表せるのではないかと考えました。

帯はトレーシングペーパーを用い、カバー装画のルドルフ・フォン・アルト『トラウン湖』を透けさせることで、「親しさ」と「断絶」が同居するようにしています。

*なお本書のブックデザインは、版元であるアルテスパブリッシングが2017年に刊行したイアン・ボストリッジ『シューベルトの「冬の旅」』(装丁:桂川潤)から多くを学びながら考案・制作されました。完成した本を持って桂川さんに御礼とご報告にうかがえないのはとても残念でならないのですが、桂川さんのご著書『本は物である』さながらに、本が「物」であることをあらためて感じられるような造本にできたのなら、そしてそのことで少しでも桂川さんの遺志をかたちにできたのなら嬉しく思います。

カバー装画:ルドルフ・フォン・アルト『トラウン湖』/表紙写真:球状星団「メシエ15」

仕様

カバー

帯・しおり

表紙

見返し

別丁扉

本文

花布

スピン