博士課程での海外留学を考えている人には、個人的にはドイツがオススメです。
ここでは、僕が実際に留学していて感じたドイツの魅力を詳しく紹介したいと思います。
また、大学の博士課程に正規入学するだけではなく、マックスプランク研究所やライプニッツ研究所などに雇用された上で、博士論文のための研究を行うという選択肢があることを推していきたいです。
この場合でも、後述するような学生としての恩恵を十分に受けることができるので、非常におすすめです。
一般にドイツの大学・研究機関は世界的にも優れた学術/研究レベルを保っており、ドイツの博士課程でレベルの高い研究を行うことが可能です。ただし、当たり前ですが、良い研究ができるかどうかは、研究テーマ・所属するラボ・指導教員に依るところが圧倒的に大きいので、研究分野・テーマによってはドイツPhD留学がベストな選択でないこともあります。
僕は、全部で86あるマックス・プランク研究所(MPIs)のうちの1つに所属しています。マックス・プランク研究所はドイツの非政府非営利・学術組織で、これまでに 31人のノーベル科学賞受賞者を輩出しており、世界の科学研究をリードする研究機関のひとつとして知られています。実際、僕が所属しているマックス・プランク太陽系研究所(MPS)でも、太陽物理の分野(特に太陽内部を診断する日震学とよばれる分野)において世界の最先端の研究が日々行われています。
研究所に所属している教授・研究者・ポスドク・学生の国籍は様々で、非常に国際的です。また、世界中から著名な研究者が日々入れ替わり研究滞在しに来るのでそういった人達とも議論したり、共同研究をしたりしてコネクションを構築できます。それまで論文の名前しか知らず憧れていたような研究者たちとこうして交流できることは非常に刺激的で楽しいです。
ここで言っている'' 研究環境''とは、周りの学生やポスドク、教授陣の研究レベルの高さ云々ではなくて、労働環境としてかなりホワイトな職場であるという意味です。
とはいっても、元来研究者は四六時中研究し続けてもなんとも思わない人種なので、いくら職場環境がホワイトであろうが、夜遅くまで残って研究する人・土日祝日だろうが研究所に缶詰の人はたくさんいます。皆好きでやっているので悪しからず。
ちゃんと雇用契約を結んでもらえる
後ほど詳しく解説しますが、ドイツのPhD課程ではちゃんと学生全員に給与が出ますし、PhD学生というとそれなりに社会的身分があると認識されます。日本の博士課程でも学振やリーディング大学院等からお金を貰うことはできますが、ごく一部の学生に限られます。
ちゃんと雇用契約を結んでもらえて、年金・社会健康保険等すべて研究所にカバーしてもらえるので、無駄な心配をせず安心して研究に専念できます。
雑務が少ない
日本の大学教授は授業・学生の指導に加えて(会議・科研費書類関連の)雑務が多くて、研究の時間が十分に取れないという話をよく聞きます。自分が日本の大学院修士課程の学生だった時でさえ、毎月のように旅費の申請や出張のレポート書類を作成したり、スーパーコンピュータの計算資源の申請書を作成したり、奨学金プログラムへの応募書類・報告書類を作成していたと記憶しています。さらに、研究室のパソコン関連機器などに不具合が発生した時などは、自分で業者とやりとりして修理に出したりもしていました。これらの雑務で研究時間が奪われるのは地味に嫌なものです。
ドイツに来てからこれらの雑務から解放されました。これは、(そもそもマックス・プランク研究所はドイツ政府から潤沢な研究予算が与えられていることもありますが)主にドイツの研究現場は徹底的に分業されていることが理由です。例えば、研究費獲得は所長・部局長等のPIの仕事で、ポスドクやPhD学生はただ研究していればよいとされています。学会に出張に行きたいとなれば研究所が旅費を(ほぼ無条件に)出してくれますし、研究機材(例えばPCモニターや外付けHDDなど)が足りないとなれば研究所が買い与えてくれます。スーパーコンピュータで大規模な計算が必要となれば、ボスが計算資源を用意してくれます。さらに、研究所にはIT部門があり、技術的な問題はそこの専門家にメールすれば、即時対応してもらえるようになっています。
ドイツの分業体制でもうひとつ驚きだったのは、ドイツのPhDプログラムにはコーディネーターという世話係が存在し、PhD学生が博士号取得するための様々なサポートするのはもちろん、応募者の募集・選別・広報、さらにはプログラムの予算管理などをしています。このような職はドイツでは珍しくなく Scientific coordinator と呼ばれていたりします。コーディネーターは基本的に博士号取得者しかなれないのですが、彼らは研究・論文執筆をするのではなく、事務的な仕事を行います。このような分業体制が確立されているおかげで、研究者は研究に集中することができるようになっているのです。
有給が多い
学生なのに有給って変に聞こえますが、マックス・プランク研究所ではPhD学生も被雇用者なので有給取得の権利が与えられています。だいたい年30日です。消化しきれない場合は、次年度に繰り越すことも可能ですが、一応年度内に使い切ることが推奨されています。
よほど、博論提出日を来週に控えているみたいな状況でない限り、基本的に指導教員に有給を申請しに行くと快諾されます(そもそもボスも有給でいなくなることも多い)。多くの人は夏(や冬)にまとめて数週間バカンスで旅行に行きます。バカンス中は完全に研究のことを一切シャットアウトしてメールも返さない主義の人もいれば、旅先でもスカイプで研究の進捗を聞きたがる人もいます。
PhD取得後のケアも万全
基本的に日本やアメリカのように学期制であれば、3月の卒業に合わせて博論提出・ディフェンスを行い、かつ卒業後の進路のための就活も同時並行で進めなくてはいけません。
一方、私が所属しているマックス・プランク研究所では、PhDを取得後約半年間は研究所に籍を置き給与をもらい続けることができる制度(Postdoc warp-up phase)が設けられており、その間に博士論文の研究をジャーナル論文として出版したり、ポスドク先を探したり、企業に就職する場合は就活をすることができるようになってます。もちろん、早々にPhD取得後のポストが決まっている場合は、この契約を打ち切って出て行くことができます。この制度のおかげで卒業を控えている学生の精神的プレッシャーがだいぶ軽減されるので、非常にありがたいです。
ドイツの多くの大学(理系学部)では、学部の授業はドイツ語ですが、博士課程の授業はほぼ全て英語で行われています。修士課程は半々といったところでしょうか。
従って、(少なくとも理系でドイツPhD留学をする場合)十分な英語力さえあれば問題ありません。
僕が所属している マックス・プランク国際研究学校(IMPRS)では、全てのプログラムが英語で行われるため世界各国からの留学生が集まっており、非常に国際的です。ドイツ人は約3割で、他のヨーロッパ諸国やインド・中国などからの留学生が多いです(ちなみに日本人は僕だけ)。研究所の教授陣や研究者スタッフも国際的で、実際に僕のボスはフランス人とオーストラリア人です。さらに、研究所のスタッフ(受付・秘書さんなど)も皆おどろくほど英語が堪能なので、「ドイツ語が喋れないとやっていけないのでは、、」心配する必要はありません。
しかしながら、せっかくドイツで暮らしているのだからドイツ語を話せるようになった方が良いです。日々の生活がより快適になるだけでなく、現地の文化をより深く理解することができますし、交友関係も広がることでしょう。マックス・プランク研究所では、非ドイツ語圏からの留学生・ポスドクを対象に無料で受講できるドイツ語講座を提供しているので、おのおのレベルに合わせてドイツ語を学ぶことができます(本当に至れり尽くせりです)。ところが、残念なことにほとんどのPhD学生やポスドクは研究が忙しくなってくるあまり、途中でドイツ語学習をドロップアウトしてしまうようです(僕しかり)。
一般に、ドイツではPhD学生全員に給与が出ます。ただし給与形態は様々で、大学のラボの研究費から支払われてたり、TAの対価として教授から支払われていることもあれば、僕のように研究所と雇用契約を結んでいたり様々です。さらには(日本でいう学振DCのように)個人が外部の財団などから給付型奨学金をひっぱってきていることもあります。したがって、額も人それぞれではあるのですが、基本的にそんなに贅沢せずに暮らすのに問題ない金額が支払われるので、安心して研究に打ち込むことができます。
参考までに、僕の場合だと、マックス・プランク研究所といういわば準公的研究機関に属しているので、そこでの給料は TVöD と呼ばれるドイツの公務員の給与基準に則ったものになります。多くの場合、その中で E13 というアカデミック分野の人向けのクラスに分類されます。ここまではポスドクも同じなのですが、PhD学生の場合は労働時間の内 約65% は研究所のための研究とみなされ給与が出るのですが、残り35% (授業を受けてる時間など)は自分の勉学の為・学位取得の為だと見なされるため給与は出ません。従って、本来の TVöD E13 の約65%の額がもらえるということになります。さらに、ドイツに住んでいる(税金を納めている)年数が多くなれば多くなるほど、E13の中での位が上がっていき給与もそれに応じて増えていく仕様になっています。
マックス・プランク太陽系研究所のPhD学生の場合、平均すると額面で約2600-3000€となります。しかしご存知の通りドイツは税金・健康保険料・社会保険料が非常に高くそれらが差し引かれた結果、手取りは 1800-2000€となります。幸い、僕が住んでいるGöttingen は田舎で家賃もそんなにかからない(ワンルームであれば 平均300-400€)ので、これで十分に暮らしていくことが可能です。健康保険料も高いのですが、ドイツは医療が充実しておりよほど特殊な病気でない限り医療保険が利用できるので、安心です。
ドイツでは、大学の''授業料''は原則無料(私立大学や一部の州を除く)です。非EU圏の外国人留学生であってもです。これは非常にありがたいです。アメリカの大学の授業料の高さは改めて指摘するまでもありませんが、日本では国立大であっても年間 55万円(+入学金30万円)ほどかかってしまいます。
ただし、実はこれはドイツでは''学費がタダ''というわけではありません。各セメスター(半期)ごとに学籍登録料(Semester fee)なるものを大学に支払わなくてはいけないのです。これが大体 250-350€かかるのですが、これには大学の施設代や公共交通機関乗り放題チケット料金、美術館などの学割代も含まれています。こうして年間約 500-700€ 大学に納めることになるのですが、それでも日本の国立大の授業料と比較して圧倒的に安上がりであることはいうまでもありません。さらには、これによって後述するような学生の(多大な)恩恵を受けることができるようになります。
食堂(Mensa)
ドイツでは、大学食堂はメンザを呼ばれます。提供される食事のクオリティーは(日本の学食に比べると)お世辞にも高いとは言えませんが、学生証を見せれば正規の値段(ランチであれば4-6€)が 50%割引になって、日々のランチが約 2-3€で済ませられるようになるので、大変助かります。メニューは 2-3 種類から選べるようになっていて、ベーガンやベジタリアン向けのメニューも含まれています。
ただし、残念ながら多くのメンザは昼食のみの営業となっており(一部夜間メンザもあるにはある)、夕飯は自炊するしかありません。
ジム(Hochschulsport)
学生であれば、学内のスポーツ施設を格安で利用できます。月に約 2€ の会費を払うことでジムの筋トレ器具を使用したり、(僕の場合であれば)バスケットボールの練習に自由に参加できるようになります。
ただし、一部別途料金が発生する種目もあります。例えばプールで泳ぐには 約2€、ボルダリングするには約4€別途かかります。それでも、学外のジムに通うよりは断然格安でスポーツを楽しむことができます。
学生証があれば、その大学が属している州内で基本的には、電車・バス・トラムが乗り放題です。
例えば僕が住んでいるGöttingenでは、市内のバスに乗車する際に運転手に学生証をみせるだけで乗ることができます。大人料金は毎回3€近くかかってしまうので、馬鹿になりません。
電車もローカル線は乗り放題です。Göttingen からは Kassel や Goslar、Hanover などに気軽に無料で行くことができます。さらには Brumen や Hamburg の手前までも原理的には無料で行くことが可能です。しかし、あまり遠いと ICE という特急電車で行った方が便利になるので(ICEは学割の適用範囲外) 現実的ではないかもしれません。
ドイツには数多くの美術館・博物館があります。ヨーロッパの文化・歴史・芸術を学ぶことができるので、是非とも訪れたいところです。
ほとんどの美術館・博物館は学割が利用でき、半額や場合によっては無料で入館することができます。
また、オーケストラのコンサート(プロ・アマ問わず)や映画館などにも学割が適用されます。僕は知り合いがオーケストラに所属していたので、演奏会の度に学割を利用させてもらってました。
銀行口座維持費
実は、ドイツの銀行口座を開設すると、一般に口座維持費がかかる場合が多いです(N26のような完全ネットバンキングのみのサービスを利用すればかかりませんが)。しかしながら、学生であればこの口座維持費は免除されます。また、クレジットカードを持つ場合は一般に年会費がかかりますが、これも学生であれば無料になったり安くなったりするようです。
Amazon Prime会員費
学生であれば誰でも無料で Prime 会員になることができます。速達も配送料もかからない上、Prime video(ただしドイツの映画やドラマばかりなので見てもあまりよく楽しめないのだが)も見放題となります。何を隠そう、Amazon ヘビーユーザーなので、大助かりです。
UNiDAYs
UNiDAYs とは、様々なオンラインストアで利用できるクーポンをもらうことができるサービスで、ドイツの学生であれば誰でも利用することができます。
僕は、Apple store で MacBook や iPad など比較的大きな買い物をした時に利用しました。体感で1割くらい安くなったと記憶しています(ただし Apple製品に関して言えば、ドイツではかなり課税されているので、日本帰国時に購入する方が安くなると思います)。
このように、ドイツでは学生としての恩恵を多く受けることができ、学生に非常に優しい国ということが分かると思います。聞いた話では、これらの学生優遇を受けるためだけに大学に籍を置いている人も多く存在しているようです(この場合でもセメスター登録料は納めなくてはいけない)。
ちなみに、言うまでもありませんが、これらの学生優遇制度はドイツの税金システムによって支えられています。博士留学では、大学もしくは研究所からの給料から多くの税金が差し引かれてはいるものの、その恩恵もまた自分で受けることができるのです。
ドイツの博士課程には明確な開始時期や修了時期はありません。みなさん好きな時期に始めて各々博士論文が提出できるようになったら頃に修了します。博士課程修了に要する年数は人それぞれで、早ければ2年弱で終わらせる人もいますが(非常に稀)一般には3年半-4年かかることが多いです(もちろん延長した場合もその間の給与は出ます)。僕も5月という非常に中途半端な時期にドイツに来てPhD学生を始めました。日本とは違い非常にフレキシブルなので、中には企業で働いていたのを辞めてPhD課程に入り直す人も珍しくないです。学生の年齢も様々で30代でも全然珍しくありません。
(日本よりは)博士号の価値が社会的に認識されている
一般に、日本企業は年功序列が根底にあるため、「年齢とプライドは高いのに実務経験ゼロ」の博士号取得者に対する風当たりは以前強いようです。一方ドイツでは、(既に述べたように年齢関係なく実力主義なこともあり)基本的に博士号を所持していることは企業への就職にも有利に働くと言われています。実際、ドイツの上場企業の役員の多くは博士号を持っており、有名自動車・化学メーカーなどでは、ほぼ全てのエンジニアが博士号持ちだそうです。
このように、ドイツは(日本とは違う意味で)超学歴社会です。博士号を持っている人は社会的にも敬意を払われているようです。例えば、何かサービスに申し込みをする際には Title(称号)を選択する箇所があり、Dr. や Ph.D. が選べます。中には自宅の表札にも Dr. をつけてる人もいるほどです。
永住権もとりやすい
ドイツでPhD課程を修了した人の中には、卒業後もドイツで働き続けて永住権を取得する人が多いです。というのも、ドイツでの無期限滞在許可(永住権)取得要件は、
5年以上合法的に滞在
その間5年以上ドイツで納税
生活に困らない程度のドイツ語能力(B1程度)
なのですが、そのうち最初の2つはドイツでPhD学生(3−4年)とポスドク(2−3年)をすれば要件を容易にクリアすることができるのです。残る問題はドイツ語なのですが、一般にB1試験をパスするには、約1年弱気合いを入れてドイツ語を勉強する必要があると言われています。ドイツで永住権取得を考えてるような人にとってはそこまで高いハードルではないでしょう。
僕が所属している国際マックスプランク研究学校(IMPRS)では、卒業に必要な単位数が厳格に決められています。意外とこの要件が厳しいので、研究進度が早い優秀な学生であっても2年での早期卒業はなかなか難しいですし、卒業まで3年より長くかかってしまうことも珍しくありません。
計3回の研究所セミナーでの発表+指導教員達との面談(4単位)
計2回以上の国際会議での研究発表(4単位)
計2報のジャーナル論文(4単位)
必修の講義(自分の専門分野と非専門分野から最低一つずつ/3単位x2)
研究倫理・論文執筆・キャリア選択・プロジェクトマネジメントなどの講義(4単位)
ティーチング・実験のチューター(計8単位)
この中で圧倒的に苦労するのが、ティーチングの8単位を集めることです。というのも、TAをするには大学の講義や実験を担当している教授に採用してもらう必要があるのですが、この競争率が非常に高いのです。特に、僕のような非ドイツ語圏からの留学生がTAをできる講義は限られるため(一部の修士向けの授業と初年度に受講済みの博士向け授業など)そもそもTAのチャンス自体なかなか回ってこないのです(ドイツ語が堪能なら学部生向けの講義も担当できるようになるため選択肢はグッと広がります)。そのため、多くの学生は少しでも選択肢を増やすためにあまり専門ではない分野の講義であっても頑張って教えるのですが、当然事前にたくさん勉強・準備する必要が生じてくるので研究時間が奪われる羽目になってしまいます。
僕は、宇宙物理のデータ解析をするラボのTAをすることになり、そこでは2−3人のグループを教えて(拘束時間は大体3−4時間)、レポートを添削して修正してもらい、最終提出版を採点するという業務をしていました。なかなか大変だったのですが一番の問題は、1単位獲得するために最低5つのグループ(10-15人)を担当しなくてはいけないということです。ティーチング単位は計8単位必要なので、全部このラボのTA業務で集めようとすると累計 80-100 人近く担当しなくてはいけないこととなり、時間的にも負担的にも現実的ではありません。結局、僕はたまたま空いた必修講義のTAもすることができたため何とか合わせ技で8単位かき集めることができたのですが、博士論文提出ぎりぎり直前までかかってしまいました。
前述した通り、ドイツのPhD課程は英語でやっていけるのですが、日々の生活ではドイツ語ができないと苦労することが数多くあります。卒業後にドイツで就職したり永住権を取得しようと考えている場合、当然なおさらドイツ語能力が必要とされます。
問題は、PhD学生として普段からボスと英語で議論して、英語で論文を読んで書いて、友達や同僚とも英語で話して、残りの時間は必死に自分の研究をして、、という生活をしているとなかなかドイツ語学習に充てる時間がとれなくなってしまうということです。僕自身ドイツ留学する前は「留学中はドイツ語も勉強して卒業する頃にはトリリンガルになろう!」などと意気込んでいましたが蓋を開けてみればドイツ語の授業に出席したのは結局最初の3回だけでした。もちろんこっちで数年間暮らしているので多少のドイツ語単語やちょっとした挨拶などは出来るようになりますが、とてもドイツ語を聞き取ったりましてや話したりなどは未だに全然出来ません。周りの学生やポスドクも似たような状況の人が多いです。意識的にドイツ語学習の時間を設けないと、ドイツ語はできるようにならないので注意が必要です(当たり前)。
ドイツに限らず慣れない海外での留学生活は困難の連続です。現地の生活に馴染めるかどうか・病まずにうまくやっていけるかどうかは個人の性格にも大きく依るでしょう。ここではドイツ留学で気をつけたほうがいい点・カルチャーショックを受けやすい事柄などを軽くまとめてみます。
気候
5月ー10月は非常に快適なので問題ないでしょう。夏場も30度を超えることはあまりなく過ごしやすいです。また、日も長く夜9時過ぎでも比較的明るいので気分も良いです。
問題は冬です。いうまでもなくめちゃくちゃ寒いですし、日も短いです(午後4時には暗くなる)。現地のドイツ人でさえ冬の間は抗うつ剤を飲んでいる人がいるほどです。 気分が沈まないようにするには、日が差している間に外に出て日を浴びたり、運動したり、気分転換をするのが大事です。
食生活
ドイツでは基本的に自炊することになります。というのも大学の学食は基本的にランチしか営業していないからです。日本のように、安価にお一人様でもご飯を済ませられる場所(牛丼やファミレス・ラーメン屋・定食屋等々)は無いので、6時くらいになったら、みんな自炊しに帰ります。スーパーで売ってる野菜は割と安く、お米や多少のアジアンフードも売っているので、それほど困りません。ドイツでは、家のキッチンにオーブンが付いていることが多く重宝します。
レストランは比較的高額なところが多いので、たまに行く程度です。周りの日本人からは「ドイツの食事は(イギリスほどではないにしろ)美味しくない」とよく聞きますが、僕個人的にはドイツの食事は好きです。ファーストフードは Macdonald や Burger King、Subway などもあるにはありますが、ドイツでもっと人気なのは Imbiss と呼ばれるケバブ屋さんです。ケバブは大体1個3-4€で美味しいです。
それと、いうまでもなくビールは美味しいです。しかも安い。スーパーや酒屋さんでは1瓶500 ml が大体 0.75€で水と同じくらい(かもっと安い)で買えます。だからといって毎日飲んでいると、すごい勢いで太ってしまうので注意が必要です。
サービス業
ドイツ(に限らず日本以外)におけるサービス業には期待してはいけません。こちらでは皆テキトーに仕事をしているので、仕事が遅かったり、期限をすっぽかされたり、電話やメールを無視されたり、態度が悪かったりとトラブルは絶えません(僕のドイツ語力が壊滅的なのも一因)。ドイツで日本のようなサービス精神・親切な接客などを期待しないことと、ちゃんと主張して時には相手の非を認めさせることが大切です。
ちなみに、こういったトラブルは他の留学生や同僚ポスドクも多かれ少なかれ経験していることなので、お互いに慰めあったり、協力して戦うことで多くの場合ちゃんと乗り切れます。
電車・バスの遅延
ドイツでは、電車やバスが遅れるのは当たり前です。そのせいで電車の乗り換えができなくなることはよくあります。さらに、ストライキで公共交通機関がストップすることも定期的にあります。正直、僕が住んでいる街は自転車移動で完結してしまうので、そんなに不便に感じたことはないです。
日曜日
日曜日や祝日は基本的に全てのお店が閉まります。ショッピングはもちろんスーパーで買い出しもできないので、ちゃんと土曜日までに買い物を済ませていないと大変なことになります。ドイツ人は、教会に行ったり、庭でリラックスしたり、散歩したり、BBQしたり、家で家族とまったり過ごすようです。