日本こども協会とは、木原雅子(協会代表、前京都大学学際融合教育研究推進センター教授)が設立した、WYSH教育の開発と普及を目的とする組織で、財団法人日本子ども財団(2009年-2021年)、社団法人日本こども協会(2021年-2024年)を前身とする組織です。WYSH(ウィッシュ)とは、Wellbeing of Youth in Social Happiness(子どもたちの真の幸福)の頭文字をとったものです。
木原雅子は、1990年代後半から、社会疫学者として、HIV/AIDSの予防研究に関わる中で、わが国初の全国規模での国民性行動調査、大学生性行動調査を始めとして、数多くの若者対象の量的・質的性行動調査実施し、その分析から、若者の性行動とそれに伴う性感染症の増加が、「人間的関係の希薄化」という現代社会の根底的問題が生み出す現象の1つの過ぎないとの理解に達し、それを2006年に「コネクティドネスモデル」として提唱しました(「10代の性行動と日本社会-そしてWYSH教育の視点」、ミネルヴァ書房、2006年)。
木原雅子は、HIV/性感染症予防教育は、単なる知識・スキル教育ではなく、その根底的問題に取り組むものでなければならず、そうであれば、その教育は、HIV/性感染症予防だけではなく、様々な問題に応用できると考えました。そして、2003年のNHKスペシャル出演をきっかけに、様々な問題を抱えた学校からの授業依頼が来るようになったことから、木原雅子は、それぞれの学校の問題や生徒の発達段階に合わせて、HIV/性感染症予防教育、道徳教育、キャリア教育、情報教育、人権教育などを含む多様な授業モデルや教材を開発し、評論するのではなく、自ら実践して行きました。WYSH教育とは、それらを総称する言葉です。実施した授業の一部は、事例集に詳細に記載されています。
WYSH教育の開発には、自らが提唱する、社会疫学socio-epidemiology(注:ソーシャルマーケティング、行動理論、疫学、質的方法などを統合する研究方法の体系)を方法とし(サイエンスscience)、子どもを引き付けるイラストや動画や演出を駆使し(アートart)、そして何よりも、対象とするすべての子どもたちの可能性を信じ、寄り添おうとする心(ハートheart)が込められています。
日本こども協会は、このWYSH教育を普及を目的として、コロナ流行以前は京都で研修会を実施していましたが、コロナ流行以降は、それをオンラインに換えて、活動を続けています。