木質材料は,高い比強度などの物性や天然の風合いが愛され,古来より建築材料を初めとする広い市場で高い評価をうけてきました.しかし,プラスチックの特徴の一つである射出・押出成形法などの優れた成形性は,木質材料の製造には利用できませんでした.一方,プラスチック材料は,優れた成形性・生産性,均質な品質等を特徴とし発展してきましたが,改良すべき点として原料コストや強度不足を指摘することができます.
材料分野で大きな比重を占めるこの二つの材料,すなわち木材とプラスチックとの複合化技術は,本冊子中でより詳しく述べますが,およそ30数年前に始まり,時間の経過とともに木材比率を増加させる方向に進んできました.言い換えますと,プラスチックと木質材料との融合の方向に技術の発展をみてきました.今日では,プラスチックに少量の木質系フィラーを含むものから,ほぼ等量の混合材料,さらには高い割合で木質を含む材料に至る広範囲の木材・プラスチック複合体を選ぶことができるようになってまいりました.本質的に本技術はフィラー充填技術に含まれます.しかし,ほぼ等重量の充填率であっても体積では木質系フィラーが2倍程度に多くなり,圧倒的にフィラー量が多い配合に至るまでの広い範囲の中には,新規の要素が含まれ,まだまだ多くの発展の余地が残されています.
木材とプラスチックとの複合体は,今日の社会の要求を満たすいくつかの好ましい特性を備えています.その一つは環境調和性であり,木質原料として廃材,未利用材等を利用することができ,プラスチック原料にも産業廃棄された廃プラスチックが利用できます.また,材料に本来備わった熱可塑性を利用し,製品が用途を終えた後に再び成形し直して再利用が可能です.これらのリサイクル性は,今日求められている持続的物質社会の構築にむけて大きな寄与が期待できます.また,安全・安心な住環境を提供するための低VOC(低揮発性有機化合物)放散性建築材料として,木材・プラスチック複合体の占める役割に大きな期待がよせられます.
プラスチックに匹敵する成形性・生産性を木質材料に付与することは,材料分野での長年の夢でした.20世紀後半にプラスチック材料が著しい発展を遂げたにもかかわらず木質材料が大きな発展を見なかった実績は,この成形性の差が一つの原因であったと考えることができます.今日のエンジニア-ドウッドは10~20wt%の熱硬化性樹脂を結合剤(接着剤)に用いて製造されていますが,木質材料を多量に含む木材・プラスチック複合成形体の樹脂量も20%内外であり,木質材料/樹脂の組成比は大差がありません.したがって,念願の木質材料の押出し・射出成形が可能になったということが言えます.現状で成形速度はまだプラスチックに及びませんが,今後の技術の発展により差は減少するであろうと考えられます.また,プラスチックの疎水性を生かした高耐水性は,本材料の特徴の一つであり,この特性を生かす屋外用途の需要拡大が期待されるところです.
木材・プラスチック複合体は,幅広い組成比にわたる材料が含まれ,組成に比例して特性も連続的に変化します.また,個々多くの優れた特徴を持つ材料であり,種々の点で新規な特徴が認められます.したがって,本材料が社会に貢献し,発展するためには,各材料の特徴をよく理解し,最適な用途に供することが不可欠です.これまで,ややすると正しい情報が伝えられず,誤解を生じたり,誤った使い方をされる例が認められたように思われます.そこで日本木材加工技術協会関西支部は木材・プラスチック複合体研究会を組織し,本材料の社会への啓蒙,正しい知識の普及,および技術の向上を目指す活動を始めています.本小冊子は,産官学にわたるメンバーの協力をえて,上記の目的にむけての第一歩を踏み出すために編纂されたものです.いまだ不十分な点もあると思われ,今後よりいっそうの整備を進める予定ですが,本材料の理解が進み,社会に普及し,安全・安心な持続的社会の構築に向かって貢献する一助となれば幸いとするところです.
1. WPCの黎明期
1970年代頃既に10%~30%程度の木粉をプラスチックに加えて,押出しまたは射出成形による成形品を生産する技術が日本にも存在しました.この技術は,北欧のユージンクルーマン社等から導入されました.しかし,この頃の技術では,スクリューやバレルの摩耗が激しく産業的には成功するに至りませんでした.それ以外では,木質材料を低コストの増量材(フィラー)として,10%程度までの低比率で配合することが一般的でした.
2. 米国におけるWPCの発展
1992年,モービルケミカル(米国,後に独立してトレックス)によりLDPE(低密度ポリエチレン)と木粉との比率を約50対50程度に複合させた製品が販売開始されました(開発・製造開始は1989年,於フィラデルフィア).これが,世界ではじめて事業化されたWPC製品となりました.この製品は,屋外用高級デッキ材として発売され毎年売上を倍増させる程の成功を収めました(2001年売上高1.17億ドル,木質系デッキシェア8%).
米国における木質デッキ市場規模は1998年で960万立米でした(天然木含む全体).米国では,新築住宅の20%~30%がデッキを作るという既成市場があり,その市場の中心材料は薬剤処理した木材です.しかし,CCA等砒素を含む防腐材注入処理木材の住宅用途使用が2002年末までで禁止となったことで巨大な置換市場が生まれました.前出のモービルケミカルを始めとする米国WPCメーカーが多く立ち上がってきた背景にはこの様な潜在市場の顕在化がありました.現在では,木質デッキに加え,ガードレールも市場を大きく広げてきている様です(木質デッキ,ガードレール市場 合計約32億ドル 2002年データ).
3. その他海外でのWPC事情
ヨーロッパでは,北欧等からWPCの研究対応が始まり,オーストリアのIFA(InteruniversitaeresForschungsinstitut fuer Agrabiotechnologie)等によって30年来の基礎研究を行ってきました.これらを基礎にシンシナティ・エクストリュージョン,ファザレックス,プロポリテック等の数社がグループを作って技術を推進してきました.
米国では屋外用途に95%,屋内用途に5%であるのに対しヨーロッパでは屋外用途に25%,屋内用途に75%であり,著しい市場コントラストを示しています(2003年データ).
ヨーロッパでは,米国の様に新築時にデッキを張る風習が無いこと,また米国のWPC販売の60%を占める巨大スーパーマーケットチェーンやDIYチェーンが無い等の違いがあります.ヨーロッパのマーケットは米国より遅れて成長してきていますが,製品の用途は多岐に渡っています.外壁材・デッキ等のエクステリア部材から,フロアー材・壁材・ドア枠等の建材,ベッドフレーム・テーブルトップ・椅子等の家具の部材,あるいは,射出成形による自動車部品まで製品用途は広がりつつあるようです.
この様な製品用途の広がりに合わせ,木粉の配合率は50%~85%の範囲で其々異なっています(エクステリア50%~70%,インテリア70%~85%の木粉配合率が多い).ヨーロッパで多くを占める屋内用WPCの木粉高充填製品の多くをシンシナティエクストリュージョンの協力会社等を中心に25社程度が製造していますが,2003年の推定生産量は米国の45万トンに対し約2万トン程度となっています.
シンシナティによるWPC押出成形機開発は,シンシナティミラクロン時代の1980年代初頭に遡ります.この頃,ストランデックス(米国)との共同開発が始まり1990年代初めに完成しました.また,ファザレックス(オーストリア)との開発も1980年代後半に開始され1990年代半ばに完成しています.これらの開発は,当初木粉充填率60%程度から始まり,70%程度まで高めて完成しました.一方,1990年代に入り,テクウッド(オランダ)との共同開発が始まり,当初から木粉充填率80%超の高充填を目指した開発を進めました.金型開発に関してPPT社を交え,1990年代終わり頃,一度完成を見ました.シンシナティでは,この開発経験を生かしさらに高い木粉充填率で成形できる押出し機開発を独自に進め,1990年代終わり頃に90%木粉充填率で成形することに成功しました.この様な開発を経て,1999年から世界で初めて(※),WPC専用押出し成形機を一般ユーザー向けに発売しました(※特注物を除く).しかし初期の物は,WPC専用と言っても通常の異方向コニカル2軸押出し機にWPC成形用に開発したスクリューを搭載したものでした.その後スクリュー・バレルの摩耗・腐食対策,形状・素材の変更,特殊コーティング,ベント孔形状最適化等様々な改良を施し現在のWPC成形専用押出機Fiberex Tシリーズを完成,2002年からの発売となりました.この間,シンシナティミラクロンは,2000年からシンシナティエクストリュージョン(オーストリア)とミラクロン(米国)とに分かれ,別会社となっています.
経済的な躍進を続ける中国に於いても,近年WPCに関する関心が高まっています.中国では,1980年代にWPC製造設備と技術がイタリアから導入され自動車の内装部品(主としてドア部品)の製造に関する研究が始まりました.これは,PPと木粉を約50対50の比率で複合したもので押出成形とプレス成形を組合わせた製造方法であったようです.この研究は,主に中国森林アカデミー木材工業研究所,南京林業大学,北京化学大学で行われています.
一方,数社の企業は米国や日本から設備や技術を導入し,WPCの製造を開始し初めているようですが,未だ最終製品として市場価格との折り合いがついていないようです.
4. 日本におけるWPCの展開
日本では,1993年ミサワホームが塩ビと木粉とを約70対30程度に複合させた,「Mウッド」を開発し自社住宅商品の内装用に,使用し始めたのが最も初期のWPC導入例となります.
1997年には積水樹脂の「オレンジウッド」が発売され,日本における公共屋外用WPC市場の萌芽となりました.「オレンジウッド」はPEと木粉とを約75対25程度に複合させ,低発泡押出成形し,表面に滑り止めのエラストマーを同時押出成形した成形品です.この製品は屋外デッキ専用WPC製品として開発,販売されました.
これとほぼ同時期の,1996年~1999年にかけてアイン・エンジニアリング(現在はWPCコーポレーションが事業を継承)が「アインウッド」,ミサワホームが「Mウッド2」と言う名称で,PPと木粉を約45対55程度に複合させた,異形成形によるデッキ材等の屋外用製品群を発売しました.
永大化工では,ストランデックス(米国)と1998年ライセンス契約を結び2000年後半から「ストランデックス」の商品名で屋外用製品の受注生産を開始しました.
その他,屋外用製品としては,ゼオン環境資材(現在は前田工繊)と積水樹脂が販売している土木関連製品があります.日本ゼオンでは,1995年にPP+PEと木粉を約65対35程度に複合させた「ゼオパークウッド」を浮き桟橋用床板を皮切りに発売しました.これに先立って,押出し成形品の表面をサンディングする事で木質感を出す方法を発見,特許出願しています.その後社名がゼオン環境資材(現在は前田工繊)となってから2002年に注型成形による木粉入りプラ擬木「Kシリーズ」を発売しました.積水樹脂では,金属芯材と組合わせた擬木製品,「テンダーウッド」を発売展開しています.現在は両社とも柵,土留め,階段等擬木全分野に展開しています.
一方で,アインや,ミサワホームから技術供与を受けた企業群による生産も始まります(【アイン(現在はWPCコーポレーションが事業を継承):YKK AP,東播商事,グリーンテクノ美山,成和興産,カムイ・エンジニアリング】/【ミサワホーム:エコファクトリー,松下寿,北信土建,エコウッド,エアウォーター,秋田ウッド,M.アートコーポレーション】).これら企業群の成形品はほぼ100%リサイクル材を原料としており,環境をキーワードとする追い風に乗って公共工事等に多く採用される事となりました.こうして日本でも2000年を過ぎる頃には屋外用WPC市場が一気に開花することになります.
屋内用の製品としては,1995年にミサワホームとナカ工業共同開発による軟質塩ビに木粉を充填した連続階段手摺が発売されました.続く2000年には,長瀬産業が「ぷらすっど」の商品名で,同じく手摺や腰壁を発売しました.「ぷらすっど」の手摺はABSと木粉を約49対51程度に複合させたもので,鉄芯等を入れずにBL(優良住宅部品)認定を取得した最初の商品となりました.
屋内用の床材としては,2003年松下電工において,PPと木粉等(無機フィラー含む)を約40対60程度に複合させた,薄いシート状(1.5 mm)のフローリング材を製品化し販売を開始をしています.シート状の成形品の開発はこれが初めてのものとなります.
2000年頃から新しい成形技術として,木質70%~95%高充填成形技術がヨーロッパ(シンシナティエクストリュージョン等)から日本に導入され開発が始まりました.アイリスオーヤマではホームセンタールートで,2002年にPPと木粉を約20対80に複合させた屋外用支柱(ラティスポスト)を木質高充填の製品としては国内で初めて発売しました.ここまで,木質材料が増えると中充填までのプラスチックの性質から木材の性質が製品の性質となることも解ってきており,今後はこの分野での研究で先行しているヤマハリビングテックや永大化工等を始めとした企業から,その性質を生かした材料・製品の開発が期待されます.
5. WPCの今後に向けて
記してきた企業を始めとする民間の努力を官・学が側面から支援することによって木質低充填から高充填までの技術の広がりと共に,WPC市場が広がりつつある中,購入者側から見た共通の規格や指標等のインフラの未整備が問題となっています.
米国ASTMは木質含有量が50%を超えない複合体の基準をPlastic Lumber Standardとして,50%を超える複合体と分け別個に基準を設定しています.また,ワシントン州立大学(WSU)とUS海軍は,WPCを沿岸施設に利用するために製造及び利用について広範囲なプロジェクトが1997年から進められています.参加グループは,ストランデックス,アモコ,ハネウェル,ペンシルバニア州立大学,マイアミ大学等が含まれ,総額1200万ドルの事業です.そこでは、ポリマーの構造,成形デザイン,反応熱力学,処理助剤,金型設計,発泡成形,溶融接着,共押出し,強化材エレメント等の研究が行われています.評価項目としては,凍結融解耐性,塩・霧に対する挙動,紫外線劣化,シロアリや海水性穿孔虫耐性,腐食,クリープ,クリープ破壊,疲労が調査されています.ここで,重視されているのは初期費用でなくてライフサイクル及び維持費用です.これらの諸性質についてはデータベースが作られつつあります.
日本に於いても,平成16年度改訂で標準化テーマとなった環境JIS策定のアクション・プログラムのテーマの中から,木質・プラスチック再生複合材が選定される等,規格化,標準化へ向けた環境整備が動き始めており,今後は製品JIS,同規格に基づく試験方法JIS,第三者認証設立等更なる環境整備が求められています.
以上,市場からのWPCへの関心の高まりに伴い,各国,各エリアで始まっている規格の整備が,今後世界市場に対応する統一規格の布石となっていくと考えられています.技術的な進歩,規格の整備に伴い循環型社会へ向けたWPCの潜在的な需要開拓の動きと競争は今後ますます加速することとなると予測されます.
1. WPCの分類
WPCは,木質材の充填量にて,使用目的あるいは性能など違いがありますので,木質材の充填率によって,以下のように分類されております(表-1).但し,使用する木材,樹脂(ベースプラスチック)の種類,成形方法等によって,充填量の分類が若干オーバーラップする場合もありますので,充填率による分類は,あくまで目安としてお考えください.
2. WPCの特徴
WPCの性能は,木質材の充填率により,異なってきますが,一般的には,充填率の増減により,ある傾向が認められます.
一方,WPCは,木質材とプラスチック(樹脂)の中間的位置づけでありながら,木材あるいはプラスチックと性能的にその延長線上でない場合もあります.
このため,充填率の異なる各種WPCと木材(加工木も含む)とプラスチックを同一軸で比較すると,煩雑になりますので,ここでは,まず,WPC素材全体と木材(加工木材も含む)及びプラスチックの比較(メリット,デメリット)を明確にした上で,各種WPCの木質材充填率の違いによる特徴及び性能を示しました.
1)木材(加工木材)との比較
下表には,木材に対しWPCのメリット,デメリットを示しました.
2)プラスチックとの比較
下表には,プラスチックに対し,WPCのメリット,デメリットを示しました.
3)各種WPCの特徴
低充填ウッドプラスチック(Type I)
従来,塩ビ等の内装建材用途にて,木調の意匠を付与するために,木粉を添加する技術は,広く知られておりました.この技術は,古くから知られており,WPCの草分け的素材ではありますが,一般的にWPCの名称は使用されておらず,プラスチック製品のカテゴリーに属する分野になっております.しかしながら,また,添加の目的から,使用する木質材は,専用の木粉(バージン材)が中心であります.
一方,近年中充填以上のWPCが普及拡大している中,これら木質材の充填率が高いWPCの二層成形シェル層への実用も多くなってきています.
中充填ウッドプラスチック(Type II)
この中充填WPCは,国内で現在最も汎用となっているWPCで,プラスチック製品に対し,剛性,熱安定性などの機能化を付与するために,木質材を充填していますが,意匠性に関しても,外観に加え触感も木質感を有しております.また,木質材の充填率範囲が広いため,充填率により,性能を自由にコントロールできることが大きな特徴のひとつで,加工性を要する建材用途から耐久性を有する屋外用途にも広く利用されております.加えて,木質材,樹脂とも等量に近い比率ですので,比較的使用する樹脂,あるいは木材の幅が広く使用でき,現在では,樹脂あるいは木材双方の廃材を利用したWPCも多くなっています.
高充填ウッドプラスチック(Type III)
高充填WPCは,素材のほとんどが木質材であるため,木材の特性を多く残したWPC素材です.樹脂分が少ないため,WPCの中では,熱寸法安定性,加工性に大きな優位性を持っており,木材用途の代替として適しています.しかしながら,木質材成分が多いため,耐久面から,室内ユーズが中心となり,従来のMDF,パーチクルボード及び合板等の加工木に対して,成形が可能であると言う利点を最大に活かした素材となります.
4)各種WPCの性能
下表には,主な性能におけるWPCの一般的な特徴を示し,充填率による傾向を模式図で示しました.
3. WPCの用途(事例)
次項表には,WPCの用途とその施工事例を示しました.
用途
施工例
ホームユース
【デッキ】
【フェンス】
ホームユース
【デッキ】
【パーティション】
ホームユース
【システムバス】
【デッキ】
パブリックユース
【公園造作(ルーバー)】
【擬木(林間公園の手摺り)】
パブリックユース
【公園造作(ベンチ)】
【ボードウォーク】
4. WPCの原料
WPCの原料は,木質材(及びその他フィラー成分の場合もあり),樹脂(プラスチック)及び各種添加剤で構成されております.ここでは,主原料である木質材及び樹脂に関してご紹介いたします.
1)木質材原料
WPCに用いられる木質材料は,バージンの木粉(WPCのために,有価物から生産された木粉)と木質系廃材を利用した木粉(リサイクル木粉)の二種類に大別されます.国内のWPCは,環境面,コスト面から,リサイクル木粉を使用するところが大半で,品質面においても,国内で発生する木質廃材はWPCに適したレベルの高い木質材も多く,また,木質廃材の加工処理によっても十分な品質を担保できることから,下表には,このリサイクル木粉の種類を示しました.
リサイクル木材
「建設,建築廃材」,「工場加工廃材」,「製紙廃材」,「除・間伐材」,「流木」等
2) プラスチック(樹脂)
木質材は230℃を超えると大きく変質しますので,使用する樹脂も,この変質温度以下の融点(軟化点)を有する樹脂を使用する場合がほとんどです.代表的な樹脂は,ポリエチレン(低密度,高密度),ポリプロピレン及びAS系(ABS,AES等を含む)となります.また,充填率によっては,リサイクルされた樹脂を用いることも可能です.
5. WPCの成形方法
1) 押出成形
WPCにおいて最も汎用的な成形方法であり,現在販売されている製品のほとんどが押出成形品といっても過言ではありません.木質材の充填率により(流動性の関係上),特殊な成形設備を用いる場合もありますが,基本的には,プラスチックの押出成形と同じです.
【押出成形工程図】
2) プレス成形
MDFあるいはパーチクルボードは,木粉(木繊維)と樹脂を混合し,プレス成形する成形体であります.しかしながら,これらは,結合材として熱硬化性の樹脂を用いており,WPCのプレス成形とはこの点が異なります.
現状,WPCにおけるプレス成形においては,流動性を大きく考慮する必要がないため,樹脂の性状あるいは,木質材の種類(形状)等大きな制約がありません.
3) 射出成形
プラスチックの成形方法の中で,最もポピュラーな成形方法ではありますが,WPCにおいては,木質材の充填率あるいは,使用する樹脂特性により対応の可否は異なります.海外では,実用化事例もありますが,国内では開発中の技術であります.しかしながら,近い将来,WPC成形方法の新たな柱となる可能性は十分あると考えられます.
1. 一般,全体
WPCってどんな意味ですか?
Wood Plastic Composite の略です.木材とプラスチックを練り合わせたものという意味です.環境JISでは,「木材・プラスチック再生複合材」という名称が使われています.
WPCは,何からできていますか?
木材とプラスチックを微細に粉砕して配合,成形します.どんな用途に使う製品を作るのかによって,それぞれを配合する比率は変わります.また,木材もプラスチックも廃材を利用する事ができます.
WPCには,何か基準はあるのですか?
リサイクル材としてのWOCに関しては,環境JISの基準があります.それ以外は,現在ではそれぞれ製品JIS等の基準に準拠する形となっています.
2. 製品
WPCには,どんなサイズがありますか?
エクステリア,インテリア,その他土木向け等様々な様々なサイズで成形されています.サイズ,形状等の種類についてはメーカーにお問い合わせ下さい.
WPCは,どんな用途に使われているのですか?
エクステリア,インテリア,その他土木向け等様々な用途に使用されています.詳しくはWPCの用途(事例)の項をご参照下さい.
WPCは,どのように保管したらよいですか?
ある程度温度が一定で平たく,乾いた所に寝かせておくと変形等を防ぐ事が出来ます.直射日光,雨にぬれるような場所を避けて保管して下さい.
3. 性能
WPCの性能的特徴は?
マテリアルリサイクルできる事です.一度だけでなく,回収~リサイクルを繰り返す事ができます.また,通常,木材,プラスチック共に微細に粉砕してから成形する為,棘やささくれ等が発生せず安全です.
WPCは,劣化するのですか?
木材のように棘が出たり,ささくれたりはしません.使用用途や配合によって違いがありますので,メーカーにお問い合わせください.
WPCの寸法変化は大きいのですか?
プラスチックの配合率が大きいと熱による伸び縮みが発生しやすくなります.また,木材の配合率が大きいと吸水による変化が大きくなります.ただし,どちらもそれ単体の時より動きは小さくなります.
WPCは腐らないのですか?
基本的には腐りません.
色のばらつきはあるのですか?
木材程ばらつきません.ただし,使う材料によって若干のばらつきがあります.特に廃材を使用する場合は,材料を選別しない限りこの傾向が強くなります.顔料等を混ぜ込んで調整する場合もあります.
汚れたりしやすいですか?
プラスチックを混ぜているため,木材に比べ汚れにくいです.
4. 加工
WPCの切断はどのようにしたらよいのですか?
基本的に木材用の加工具で切断可能です.
釘は打てるのですか?
基本的に釘は打てません.固定等する際には,下穴をあけビス等により固定して下さい.
WPCに塗装はできるのですか?
配合しているプラスチックや,表面仕上げ等によりそれぞれに違いがありますので,メーカーにお問い合わせ下さい.
5. メンテナンス
WPCの清掃はどうしたらよいのですか?
配合しているプラスチックや,表面仕上げ等によりそれぞれに違いがありますので,メーカーにお問い合わせ下さい.
WPCの補修は可能ですか?
落としたりして端部等の一部が欠けた物を接着するには,市販の瞬間接着剤で接着可能です.ただし,強度面での安全性が必要な部位には接着剤を使用しないで下さい.
6. その他
WPCのリサイクルはできますか?
WPCは本来循環対応を目的に開発された素材です.環境JISでは,廃材の利用率によって分類・表示が規定されています.
WPCは燃えますか?
木材やプラスチック同様燃えますが,火のついたタバコを置いたくらいでは,焦げるだけで,火はつきません.火気には充分注意して下さい.
WPCはリサイクル品ですか?
全てそうであるとは限りません.ただし,廃材を使用したリサイクル製品が多く製造されています.
WPCを捨てる時は,木とプラスチックのどちらとして捨てればよいですか?
捨てずにリサイクルするようにして下さい(対応方法はメーカーにお問い合わせ下さい).やむを得ず捨てる場合の分別方法は各地方自治体窓口にお問い合わせ下さい.