指先や音声で操作できるタブレット端末 (Google Nexus 10) の便利さに慣れた姉が,2010年7月に購入したモニター一体型パソコン (Lenovo C305, Windows 7) を捨てると言うので,ハードディスクを抜き取り処分するため自宅に持ち帰った.スイッチを入れてみたが,ソフトウエア,セキュリティ,ドライバ等の更新が実施されていないためか,起動はするもののいろいろな警告メッセージが出て処理が遅く到底使い物にならない状態であった.ソフトウエアアップデートや不要なファイルを整理し始めたものの関連ファイルの削除等に手間取り,最終的にはWindows 7 の完全修復を諦めて Windows 10 へのアップグレードを試みた.
Windows 10 のシステム要件では,1 GHz)以上のプロセッサ,32 ビット版では 1 GB以上のメモリとなっていた.Windows 10 へのアップグレードは問題なく進み,起動には時間がかかったものの,それなりに動いてくれた.パソコンの仕様書を見ると,CPUは Athlon II X2 250u の1.6 GHz (2 CPU) となっていて,メモリも 2GB あるので,最低のシステム要件はクリアしている.そこで,Super π(パイ)100 万桁の計算時間を測定してみた.結果は 49 秒であった.Core i7 (2600K)が約 10 秒,Core duo (1.8 GHz) の47秒と同程度であるから家庭用パソコンとしては問題ないはずである.
Lenovo C305シリーズ (White 08921HJ モニタ一体型
解像度 1600×900
グラフィックコントローラ Radeon X1250
CPU速度 1.6 GHz, Athlin IIX2 250u
RAM容量 2048 MB,メモリスロット数:2
HDD容量 320 GB
OS Windows 7、Home Premium(32bit)
MS Office搭載
通信機能:10/100Base内蔵
搭載光学ドライブ種類 マルチ(RAM・-R/RW・+R/RW)
ウエブカメラ
WIndowsシステムツールから「タスクマネージャー」を起動し,「パフォーマンス」を選択,次いで「メモリ」をクリックすると次図(左)が現れる.メモリ消費量をグラフおよび数値で確認すると,ブラウザ等は実行していない状態で利用可能メモリは 0.826GB であった.タスクマネージャーの最下部からリソースモニターを開いたものが右側の図,カラーの横帯はメモリーの内訳が示されている.青系の帯が利用可能なメモリ量である.
ブラウザで2個のホームページを閲覧すると,利用可能メモリは0.515GBに減少した.この状態でワープロ,表計算などのソフトを立ち上げ,画像を含む文章の編集を行うと搭載メモリ(物理メモリ)は消費尽くされてしまい,不足分を補うためハードウエア(HDD)の一部をメモリ代わりに使うことになるため,スムースな動きは期待できない.
本機のメモリ収納場所はネジ一本で開閉できるようになっているので,開けてみるとDDR2 PC2-5300が2048 MB (2GB) 一枚が 収納されていて,もうひとつのスロットは空いていた.そこで,手持ちの 2048 MBメモリを増設してみた.
4GBメモリに増設した後,ブラウザ等は実行していない状態(Google Drive は同期中)で利用可能メモリは 2.1 GB であった(次図).
4GBメモリ状態で,ブラウザで5個のHP(webページの編集,Gmail等)をタブで開き,さらにLINEを実行した状態で,利用可能メモリは 1.3GB であった.Office Word を立ち上げると 1.1 GB に減少した.
捨てる前の実験程度の気持ちでメモリ増設を試みたが,再起動してみて驚いた.見違えるように処理スピードが改善した.普段は Macintosh を使用しているので,Windows の特性を十分に理解していないが,その変化は予想外だった.特にグラフィック処理に明らかな改善が認められた.気象庁の高解像度降水ナウキャスト,Google ストリートビュー(Google マップでは 3D は使えない),スリープからの再起動等が大幅にスピードアップした.
2GB メモリの場合の「ハードウエア予約済み」の消費量が 180MB であるのに対して,4GB メモリの場合は 642MB に増大した.ハードウエア予約はBIOSや周辺装置のドライバ等に使われているはずである.3.7倍に増加している理由については, 仕様書に「ビデオRAMとして使用されるメイン・メモリーの容量は,BIOS等で設定変更することはできません.アプリケーションに応じてシステムから最適なメモリー容量が自動的に割り当てられます」と記載されているので,メモリ増設に伴い変化したものと思われる.
メモリが不足すると,コンピューターは自動的に過剰分をスワップファイル(ハードディスク,HDD) に書き込み,必要に応じて HDD から読み込んで仕事をする.通常「仮想メモリー」と呼ばれていて,この読み書きの動作がパソコンの動作を遅くしたり,動作を不安定にする原因になる.なお,「コミット済み」とは物理メモリ + HDD上の仮想メモリである.この値から仮想メモリの量が分かる.
私の場合,ブラウザ,ワープロ,表計算ソフト,Avogadro等の分子描画ソフトが同時に開けないと使い物にならない.裏側では,Google Drive 等のクラウドとの同期,ウイルスチェック,メール等が動いている状態で問題はないようである.
パソコン売り場では買い替えを勧められたと言っていたが,おそらくゲーム等の動作環境(グラフィック処理)を勘案してのことと思われる.古いパソコンの場合,グラフィックカードのドライバの提供が終了している場合が少なくない.そのような場合は, Google Earth では 3D 画像の地図は表示されなかったり,Windows 10 の「実行画面録画」等の機能は利用できない.
ブラウザ,メール,LINE等の目的であれば,本機のように発売時に Windows 7 が走っていたパソコンであれば,メモリを限度まで増やせば Windows 10 でも使えると言ってもよさそうである.なお, Windows 10 の無料アップグレード期間はずっと前に終了していたが,今年5月の時点でもアップグレードすることができた.
追記
・Mac mini (2009, CPU Core2 duo 2GHz, 4GBのメモリ) の場合,super π 104万桁計算に要する時間は25秒程度である.
・本機は,分子描画ソフト Avogadro において分子図の回転に支障はないが,Google Earth はライトモードに切り替わる.
・本機については,SSDに換装したら快適になったという記事がある.起動に要する時間を短縮したい場合は効果があると思うが,メモリの代わりにはならないはずである.