短く笛が鳴る。直後、ボールは鉛直方向に投げ上げられるが、すぐに重力に引かれて自由落下を始める。そして、バシッといい音が鳴り、相手コートへ綺麗な放物線を描いて飛んでいった。
男子第一回戦第三戦、C組vsF組。その試合が、今始まった。
ボールが飛び交い、次々とポイントが入っていく。その度に、観客のいる舞台上や、二階のテラス席から歓声があがる。
そんな白熱した試合の様子を、俺はコートの脇から見つめていた。
バレーボールでは、一度に六人ずつコートの中に入ってプレーする。そして、サーブ権を獲得するごとにポジションが時計回りに一つずつずれてローテーションしていくのだが、今回はあくまでレクリエーション。全員が参加できるように、フロントライト(前衛の右端)の次は外に出て休憩、その代わりに一番前で待機していた人がバックライト(後衛の右端)に入る、というルールが採用されている。俺たちのクラスには男子が十八人いるので、その十八人でグルグルと回していくことになる。
俺の高校には男子バレーボール部が存在しない。必然的に、運動神経のいい奴がバレーボールのエースとして扱われる。そのうちの一人であるもっちーは、俺の前に並んでいた。
「よし! いけいけ! そこだ!」
観客に負けないくらいのテンションと大声を出している。いかにこの球技大会に熱を込めているかよく分かる。
試合は一進一退の状況を呈している。ここで、遂にもっちーがコートの中に入った。
コートに入ると、相手がミスをしたので、もっちーが早速サーバーとなる。もっちーはボールをあげると、勢いをつけてバシーンとボールを相手コートに放った。
ボールは弾丸の如く、ほぼ直線軌道を描くと、誰も取れずに相手のコートにダムッと落ちた。
「いよっし!」
ガッツポーズ。サービスエースだ。流石もっちーである。観客席からも黄色い声があがる。
次も俺たちのクラスからサーブだ。しかし、今度は相手も上手くボールを拾い、そのままラリーが続く。
しかし、C組は得点を許さない。コート内に落ちた球は、どんな球であろうと拾い上げる。元々ラリーは上手くいっていたが、もっちーが入って遂に完成した、ように見える。
それからはC組の独壇場。最後まで一度もF組に得点を許さず、そのままC組は二十五点を獲得してF組は勝利した。もっちーが入ってから、結局ローテーションが俺に回ってくることはなかった。
出番がなくてちょっと残念だ。
何がともあれ、まずは第一関門突破である。こうして、C組男子は準決勝に進出したのだった。