「は~い、それでは通知表を配りま~す。出席番号順に来て下さ~い」
あっという間に時間は過ぎ、遂に今年の学校も最終日。別に明日は祝日でも何でもないが、何故か本日水曜日に終わる。何とも不思議な授業日程だ。この日程を作った人誰だよ。
おっと、もうそろそろゆる~い担任から名前が呼ばれそうだ。
「雨宮慧く~ん。よく頑張りました~」
「ど、ども」
俺はそれを見ずに急いで畳むと、自分の席に戻る。結果は予想できているが、それでも少々ドキドキしながら再びオープン。
「……うん」
一通り目を通したけど、それしか感想が出てこねえ。だって、一学期と全く同じオール三だからだ。
てか、オール三を二連続で取れる俺って、ある意味才能があるかも? オール三を取る才能が。これからの人生で何の役にも立たなさそうだが。
そんなことを考えて担任所見を眺めて過ごしていると、前から五十嵐がやって来た。つまり、全員の通知表を返し終わったということか。
ただ、五十嵐は張りつめた顔をしている。いったいどうしたのだろう……。
ハッ! もしかして数学の点数がヤバかったから一がついたとか⁉
俺の学校では、数学は必履修科目である。学年末の通知表で年間の成績に一がついてしまったら問答無用で留年になる。二学期の今は、一を取ってもすぐに留年という訳ではないが、留年にリーチがかかってしまう。
「ど、どうだった……?」
「慧……」
五十嵐は泣きそうになりながら、震える手で通知表をこちらに裏返した。
「数学、一じゃなかったよぅ……」
「良かったな!」
五十嵐の数学の欄には、二という絶対評価が黒々と印字されていた。おい! 一がついたと誤解を招くような表情は止めろ! ちなみに相対評価の欄は全てC。マジで危なかったな。
でも、他の教科は四とか五とかいう高評価が並んでいる。やっぱり数学だけが本当にできないのな。
…………。
あれ?
普段ならここで『……ふっ、我は』とか言って、水無瀬が頼んでもいないのに自慢してくるはずなんだが。今日は珍しいことに何も言ってこない。
変だな、と思って右隣の席を見ると、水無瀬は何故か通知表をガン見しながら口をパクパクしていた。
「どうした?」
「あうあう……副教科が」
「副教科?」
あー、そういえばコイツ引きこもりだったから、今学期は一カ月くらいしか出てなかったんだよな……。実技が評価の主体である副教科の成績は良くなかったのか。
「どうだったんだ?」
「全部二……」
水無瀬はガクッと項垂れた。
あぶねえな……こっちも留年スレスレの道を進んでいる。
「もっちーは?」
「オレは普段通りだった」
そんな話をしていると、注目を惹くために担任がパンパンと手を鳴らす。
「は~いみなさ~ん。今年の学校はこれで終わりになりま~す。冬休み中は怪我や病気に気をつけて過ごしてくださいね~。それでは、SHRを終わりま~す。よいお年を~」
ということで、今年の学校は終わったのだった。
よーし、待ちに待った冬休みだー!