上田市では新生代の海の生物の化石が見つかります。市内でよく見られる化石を中心にご紹介します。
ニシン科(イワシなど)、タイ科、ハダカイワシ科などの魚の鱗(うろこ)です。黒い泥岩からたくさん見つかります。
1~3枚目の写真はニシン科の鱗です。(写真の上が頭の方)猫のヒゲのような細い溝条(こうじょう)、細い指紋のような隆起線、年輪状の成長輪などが見られます。(隆起線や成長輪は標本によって見えにくいことがあります。3枚目の拡大写真で、左端や全体的にある水平方向の細かい線が隆起線。上の方にぼんやり見える少し間隔の広い凹凸が成長輪の一部です。)
4枚目はタイ科です。貝のような放射状の溝条があります。5枚目についてはわかりません。6枚目はハダカイワシ科の鱗だと思います。
一番多く見つかるのはニシン科の鱗です。(ニシン科はニシン、マイワシ、サッパ、ミズンなどですが、ニシンの化石はほとんど見つかっていません。別所層と同時期のニシン科の化石種には、ヒシナイイワシ(Eosardinella hishinaiensis)、ミヤノシタサッパ(Sardinella miyanoshitaensis)があります。)
多くの場所で鱗はどれも地層に水平に見つかります。土砂が崩れたりせず、静かに堆積してできた地層のようです。
背骨、ヒレ、頭部などが見つかります。バラバラに見つかることが多く、全身の化石はなかなか見つかりません。
魚の骨の中でも、エラの骨は比較的よく見つかります。三日月型のものは前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ) 「B」の字に似た形は主鰓蓋骨(しゅさいがいこつ)
1センチ前後の小さなホタテガイの仲間。現生のハリナデシコに近いです。殻は薄く地層面にペチャンコに潰れています。成長肋が見えます。密集しませんが、5体前後がまとまって見つかることも多いです。
ペッカムニシキ Palliolum (Delectopecten) peckhami という種類が多く出るようですが、特徴や見分け方を知らないので、その種類かどうかはわかりません。(ベッカムではなくペッカムです。)
この貝だけが見つかり他の種類の貝はまったく見つからない場所が多いです。理由はわかりません。
別所層ではほとんどの地層に有孔虫(ゆうこうちゅう)が含まれています。2ミリから4ミリ前後の比較的大きなものもあります。
1枚目の写真は、巻貝に似た円形の大きなものや、白い点のように見える微小なもの。2枚目は2ミリ前後の有孔虫です。右下は魚の鱗(うろこ)です。3枚目と4枚目は約1ミリの有孔虫。割れて断面が見えています。エゲレラ属(Eggerella)のような、細長い形。
青木層のチャート礫です。放散虫の化石(0.1ミリほどの粒)が見えます。放散虫の種類や時代・場所についてはわかりません。
川岸の砂岩層で見られます。
ギザギザのない細長い葉。密集せずにポツンポツンと見つかることが多いです。
イネのような細長く中央に筋のある葉です。幅は5ミリ前後。比較的多く見つかりますが、どれも幅の変化は小さく、先端が見当たりません。アマモ等の海草かもしれません。
やわらかい泥岩にたくさん入っています。きれいに取り出すのは難しいです。
海藻でしょうか。木の葉の化石よりも薄く、色も少し薄いものが多いです。
約5センチ。薄く細長いものです。
植物でしょうか。細長いものや幅の広いのものがあります。
押し潰された管状のものです。幅は12ミリ前後で一方の端は徐々に細くなります。長さは5センチ前後。ペッカムニシキ等と一緒にたくさん見つかります。多毛類の棲管かもしれません。形はウミイサゴムシ Pectinaria やコヅツガイ Eufistulana の棲管に似ています。
泥状や層状のものが詰まっている小さな殻が見つかります。一つの殻の中にいくつかの小さい殻が入っています。中が部屋に仕切られているような断面が見られることもあります。形はいろいろあるので、すべて同じ化石というわけではないかもしれません。
玄能石(げんのういし・げんのうせき)は粒状の方解石でできている石です。部分的には曲がっていても全体的にはまっすぐ。北海道、新潟、福島、ロシア、イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどで見つかります。Glendonite Jarrowite Thinolite などの名前があります。
玄能石(上側) (別所層)
玄能石(下側) (別所層)
地層面に対して上側は稜線や条線が不明瞭、下側は明瞭です。(1枚目の写真は上側、2枚目は下側です。)変形し表面は縮んで皺が寄ったようにも見えます。条線の方向は地層にほぼ一致します。水平に細長く伸びるものや、斜めや垂直に太く短く伸び、ピラミッドを2つ上下に合わせたような縦形のものがあります。T字形、X字形、星形、コンペイトウ形などもあります。同じ層では大きさと形が似通います。1センチ未満のものは密集することが多いです。(3枚目の写真は1センチほどの玄能石が密集しているもの。写真の範囲で500個以上か) 方解石以外には主に石英と黄鉄鉱をそれぞれ1割程度含んでいます。
シナノイルカの化石(長野県天然記念物)(別所層)
シナノイルカ化石概要図
クジラの化石(別所層)
クジラの化石(別所層)
無断で掘らない、崩さない(自分本位なマナーを作らない)
採集量をコントロールする(少量でも人数・回数が多ければ大きな破壊)
ネットで産地情報を公開しない、興味関心をあおらない(産地荒廃を後押ししてしまう)
勝手に優劣を付けない、身近な化石を大切にする(珍しくない、古くない、大きくない、きれいではない、高価ではないもの。希少なものに目を向けていると、今は良くてもいずれ楽しめなくなる)
楽しいと思う素直な気持ちを否定しない