タイフーンショット計画
台風制御
台風制御
2014年のブログで 「 台風を弱める装置」と題した特許が存在することを紹介した.話題の性質上,その後の動向については追跡することなく時間が経過した.ところが,最近,「タイフーンショット計画」という言葉を見かけるようになった. 調べてみると,台風の「脅威」を「恵み」に変えるという計画という. しかも産学官一体となったプロエクトで2050年までに台風を人工的に制御することを目指しているとのことである. 話が壮大なため, 素人にはイメージが沸かないので, 最近の紹介記事の一部(図を含めた)を以下に紹介させてもらった.
脅威が恵みになる未来目指す
2050年までに台風を人工的に制御することを目標とする「タイフーンショット計画」。台風のエネルギーを利用した「台風発電」の実現も目指しており、横浜国立大の筆保弘徳教授(右)は「今まで脅威だった台風が恵みに変わるという未来を目指していきたい」と力を込めた。
1960年代にはハリケーン制御の計画が米国であったが顕著な成果が出ないまま頓挫した。筆保教授は当時との違いについて「半世紀の間に台風の解明は飛躍的に進んだ。スーパーコンピューターが発達し自由にシミュレーションできるようになった」と語る。
筆保教授は2019年の房総半島台風(台風15号)を用いたシミュレーション結果を紹介。台風の目の中に大量の氷をまくと中心気圧が上がって風速が低下し、建物被害は制御しなかった場合より30%減ったという。筆保教授は「予測精度も足りず、制御の仕方も問題あるが、こういった検証が今の技術でなんとかできそうだ。今後の研究でさらに高めていきたい」と話す。また、台風のエネルギーを利活用し、台風の風で船を動かし、水中のスクリューが回ることで発電をする「台風発電」に取り組む計画もあるという。
一方、名古屋大の坪木和久教授は航空機から台風の目の中やその周辺に観測装置を投下し、風速などの情報をリアルタイムで地上に送る「航空機観察」に取り組む。これまでに3つの台風で観測を行ったという。坪木教授は「台風を制御するには台風の正確な予測が必要だ。そのためには現場で高精度な観測をすることが重要となる」と意義を語った。
台風制御は内閣府が掲げる「ムーンショット型研究開発制度」に今年3月採択された。筆保教授は「倫理的社会的問題についても人文科学の先生と考え、皆さんの理解を得ることも重要となる」と話した。
信田 真由美 (毎日新聞社科学環境部)
台風は制御できるのか - 日本記者クラブ 2022年07月08日 14:15 〜 15:45 10階ホール 「台風は制御できるのか」(会見レポート)
台風の構造と制御のイメージ(出所 タイフーンショットofficial)
暖気核に水やドライアイスを航空機から散布する.
帆船型風力発電船のイメージ (出所:日本海事協会)
飛行機の翼の形をした帆を使えば,向かい風でも航行できるという.
オイルショックの際に話題になったものの普及には到らなかった帆船の復活については,8月26日のNHK朝のニュースで話題になっていた.
関連資料によると,同種のプロジェクトが米国で計画されたことがあったが,頓挫したらしい.それから半世紀,最近のスーパーコンピュータの発達はめざましく,気候の変動予測やシミュレーションによる地震や水害などの災害に対するリスクの把握が可能になった.予備的なシミュレーションによると,台風中心に冷却材を散布すると確実に勢力を減弱させることができるという.また,台風発電帆船なるものを用いて.スクリューを動かして発電し脅威を恵みに変えることもできるともいう.
「台風制御」は内閣府が掲げる「ムーンショット型研究開発制度」に今年3月に採択されたばかりである(下記「目標一覧」8の中の一つ).本計画のチームリーダーである筆保弘徳教授(横浜国立大学)の提案書(イラスト解説書,以下のリンク)が分かりやすいので参考にしてほしい.
未来につなげ タイフーンショット計画 ~2050年までに台風の「脅威」を「恵み」に〜
本計画は30年先を見据えた計画である.夢物語に終わらないことを期待したい.
注)「ムーンショット型研究」とは, 難しいが,実現すれば大きな効果をもたらすような.壮大な計画や試みを指す.
目標一覧
目標1.2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現
目標2.2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現
目標3.2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現
目標4.2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現
目標5.2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出
目標6.2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現
目標7.2040年までに、主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現
2022年8月15日の記事
技術研究センターの設立
2021年10月、横浜国立大学先端科学高等研究院に台風専門の研究機関「台風科学技術研究センター」が創設された。この研究機関は産官学が一体となっており、大学や研究所の研究者はもちろん、気象庁や産業界からも人材が集まった。台風にはまだ解明されていないメカニズムもあり、台風の予測精度も十分ではない。近年でも、2018年の台風第21号や2019年の台風第15号(令和元年房総半島台風)や第19号(令和元年東日本台風)による大惨事の記憶が新しく、今もなお台風により甚大な被害に遭っている。そこで台風科学技術研究センターでは、台風をとことん研究して、台風被害がゼロになる社会を目指す。さらに、新たな研究成果や技術を直接的に社会に還元できるように推進する。
台風科学技術研究センターに所属する研究者の専門分野は、気象学にとどまらず、工学、人文学、法学、経済学、経営学など多岐にわたり、台風をキーワードにして文理融合・異分野で連携している。このように、専門性の垣根を越えた研究者が集結して取り組んでいるのは、未来に向けた壮大なミッション「タイフーンショット計画」。このタイフーンショット計画は、「台風の脅威を恵に」を旗印に、2050年までに台風の勢力を人為的に抑える技術と、台風エネルギーの利活用を実現する長期的かつ壮大な計画だ。以下省略
計画の詳細については, 以下のHPを見てほしい.
台風科学技術研究センターとタイフーンショット計画|2022 ... 産学官連携ジャーナル
(2022.8.26)
ほんまかいな?