乱流屏風

層流・乱流遷移の非平衡相転移のためのチャネル流実験装置

このサイトは東京大学佐野研究室(リンク)の実験装置「乱流屏風」の移設先を探す目的で作成しています。科学的な内容を引用する場合は原著論文(doi:10.1038/nphys3659 )を参照してください。質問・写真の利用は担当者(メール)までご連絡ください。
最終更新日:2018年1月7日

【ご報告】廃棄は回避できました!詳細は後日まとめますが、引き続き移設先を検討しております。

(2019年1月6日更新)

皆様のご協力と反響の大きさで事態を動かせたと思います。ひとまず、ありがとうございました!もう少し頑張る必要はあるのですが、現状を簡単にお伝えします。

  • 高額の移設費用の目処がつきました
  • 東大にもう1年間保管ができることになりました

→これら条件で科学館などに再度ご相談する予定です(まだまだ皆様のご協力が必要になるかと思います。よろしくお願いします。)

  • 移設費用さえあれば設置できる場所も見つかったため、最終的な行き場は確保できており、廃棄の必要がなくなりました。(もっと人目につく科学館などの移設先が見つかればそちらを優先するよう言ってくださっているので、科学館などへの打診はこれからもおこないます)


以下は以前の内容のままで、まだ更新していません。後日、あらためて更新いたします。

実験装置「乱流屏風」の移設先を探しています。

この実験をおこなった研究室の佐野教授の退官(2019年3月)ともない、現状では実験装置「乱流屏風」は廃棄予定となっています。科学的にも重要かつ目で見るだけでも美しい実験装置を科学館などに移設・展示することができれば、流体力学・統計物理学に関する科学教育および科学コミュニケーションとしても非常に意義があると考えています。移設先にお心当たりのある方、引き取りに興味のある機関の方は、担当者(メール)までご連絡いただけると幸いです。

【日本科学未来館の取材記事】:http://blog.miraikan.jst.go.jp/other/20181225post-834.html

【論文のプレスリリース】乱流発生の法則を発見:130年以上の未解決問題にブレークスルー(東京大学・理学部)

【原著論文】Sano & Tamai, "A universal transition to turbulence in channel flow", Nature Physics, 12, 249–253 (2016).

【当研究室について】東京大学理学部物理学科・佐野研究室HP

流れ/乱れ、伝播/消滅。

動画はこちらもどうぞ

動画:乱流屏風稼働時の様子(白黒)

乱流屏風とは?

層流・乱流遷移の非平衡相転移としての性質を実験的に決定することを目的に東京大学物理学科・佐野研究室にて作成された大型のチャネル流実験装置です。つまり、液体のまっすぐな流れ(層流)と乱れた流れ(乱流)の移り変わりを可視化する実験装置です。


乱流屏風の外観 (概形:水槽1m x 6m x 0.5cm、フレーム1.7m x 7m x 80cm)

高さ1m、横幅6m、厚さ0.5㎝の平たい水槽部分に金色のフレーク粒子を入れた水を右から左に流します。乱流部分は流れが乱れて金色フレークがキラキラするので可視化できます。

乱流では大小の渦が乱れて運動するため、次々と新たなパターンが現れては分裂し、かつ消えかつ結び、2度と繰り返すことのない美しい模様が流れてゆく様子を見て楽しむことが出来ます。これを私達は乱流屏風と名付けました。

(サイズ等を含む装置概要は後述)

層流と乱流のイメージ

層流はまっすぐな流れ、乱流は乱れた流れです。例えば、蛇口の水をある程度捻ったときのまっすぐな透明な流れは層流、たくさん捻ったときのゆがんだ流れは乱流です。また正確ではないですが、図の2枚の葛飾北斎作の滝の絵もそれぞれ層流と乱流の直感的イメージに近いと言えます。

美濃国養老の滝(葛飾北斎):層流

下野黒髪山きりふりの滝(葛飾北斎):乱流

乱流への移り変わりとは?

この乱流屏風では流れの速さによって乱流が出来るかどうかの水の性質が変わります。一般的には他の性質でも変わるので、その指標は「レイノルズ数」で表されます。水流が遅いとき(=レイノルズ数が低いとき)、乱流が出来ず流れはまっすぐなのでキラキラはありません。水流が速いとき(=レイノルズ数が高いとき)、屏風平面全体に乱流が広がります。レイノルズ数が中間のときは、もととなる小さい乱流のエリアが全体の一部分だけを占め、時間とともに広がったり消滅したりします。この過程を通して、層流から乱流への”遷移”が見えます。

伝播の物理

中程度のレイノルズ数で生じる乱流は隣に広がり領域を増やしたり自然に消滅したりします。一度全ての乱流領域が消滅すると復活しません。このような広がりの法則は森林火災や感染症の数理モデルとも似ており、共通する法則で出来る空間的なこのような広がりは「(方向性を持った)パーコレーション」と呼ばれています。広がる速さや消滅する頻度によって広がりのパターンが変わります。乱流屏風には水の物理だけではなく、いろんなことに適応できるような伝播の物理も含まれています。

展示方法の一例

本実験装置を科学館など科学教育目的で展示する際には、水流の速度を次第に早くしていくことで、流れが層流から乱流へと遷移していく様子を一目で実演できます。何よりも、乱流のエリアがキラキラと光るため、見ているだけでも美しく、自然現象に興味を持つきっかけを提供できます。その上で、乱流屏風を通して、イギリスの物理学者レイノルズが1883年におこなった層流・乱流遷移の最初の実験から現在までの流体力学の歴史を概観することで流体力学の基礎概念に触れ、伝播の物理という統計物理学の概念も解説することで、層流・乱流遷移の奥にある、つい最近になって発見された美しい物理法則を実感できます。本実験装置は、流体力学と統計物理学について同時に学ぶことのできる貴重な実験展示となると考えています。

もちろん、ここで提案した方法に限らず、様々な場所・形態での移設の可能性を模索しています。

イメージ図(実物は折りたためません)

イメージ図(実物は折りたためません)

装置概要

展示サイズ:長さ約7m、高さ1.8m、奥行き80cm

    • 水槽サイズ:高さ1m、横幅6m、厚さ0.5㎝
    • 重量:約300kg (3つに分解して移動可能)

水槽外装置

    • 送水用タンク(1.2m x 1m x 0.5m)
    • 駆動用ポンプ(フレームに組み込み)
    • 制御装置(フレームに組み込み)

    • 水道水使用可
    • 必要量:1トン弱

電源

    • ポンプと制御用に200V電源
    • 最大電力:約1kW程度
    • 照明をする場合は別途必要

可視化用のフレーク

    • 安価で繰り返し使用できます。

メンテナンス

    • 半年に一度水を取り替える
    • 1年に一度程度フレークを高圧洗浄機で取り除く (業者に頼むと20万円程度)

移設

    • 3つに分解して輸送
    • 輸送費は場所によって大きく変わるのでご相談ください。

まとめ:移設先を探しています。

本実験装置「乱流屏風」は当該研究を行った研究室の閉室(2019年3月)に伴い、廃棄される予定です。しかし乱流屏風は、上記の通り科学的に意義のある研究を行った実験装置であるだけではなく、乱流自体や層流・乱流の遷移、またパーコレーションを可視化でき、これらの概念を直感的に理解するのに大変適しており教育的にも意義のある装置です。さらに金色フレークが乱流によりきらめく様子は「金の屏風」を連想させ、見た目に美しい実験装置でもあります(他にきれいな物理実験装置と言えば霧箱やカミオカンデなどでしょうか)。レイノルズによる1883年の実験装置はイギリス・マンチェスター大学に保管されており、科学史上も貴重な財産となっています。本実験装置は130年以上の未解決問題に一石を投じたもので、科学史的にも展示・保管に値すると考えています。

この装置の設置・移設に興味がある方は、担当者までご連絡ください。

担当 谷田 ((メール):turbulencebyobu (at) gmail.com )