■展示概要
土は古来から常に私たちの隣にあり、植物を育てたり、道具や建物の素材になったりと私たちの生活を豊かにしてきた。
土の性質は地質・地形・気候・生物・時間という5つの要素によって決まり、細かく見ると全く同じ性質の土というものは存在しない。
そのため、古来の私たちが行っていたような、その場所の土を使ってものを作り、使用するという行為は、作り手の思いも入り込むことによって場所と人の繋がりを強める力を持っていた。
現在私たちが暮らす空間は、地面はアスファルトで舗装され、どこの場所で作ったのかわからない大量生産品で満ちている。
それは便利な環境ではあるが、どこかのっぺらぼう的で、心を上滑りしているように感じる。
しかし、そんな環境下であっても、私たちは記憶が詰まった土地に対して強い思い入れを持っている。
今回の展示では、そういった「思い」をその土地の土を用いた生産行為によってモノとして落とし込む研究・実践をまとめたものである。
長い人生を独りで生きていくことはむずかしい。
人・場所との記憶やつながりが心の支えとなったことは誰にとっても経験のあることだろう。
土と、それに満ちた思いを感じることができる空間を作っていくことで、私たちの道路を照らしていくことができるのではないだろうか。
■展示詳細
「つくること、つかうこと」/手づくりタイルと産業の行方
(京都芸術大学 空間デザインコース 柏元京)
街を見渡すと、マンションの外壁やレトロな建物の水回りなど、さまざまなところに
タイルが使われ、私たちの生活空間を彩っていることに気づく。
そんなタイルは、実は生産の過程でたくさんの廃棄が出ている。
今回私は大学の卒業制作として、この廃棄されるタイルをどう減らすべきか、どう付き合っていくのかを、歴史や産業の仕組みのリサーチを通して考察・実験を行った。
この展示がタイルだけではなく、物流が発達した世の中で生きる私たちがどう「製品」と関わっていくべきなのかを考えるきっかけになることを目指す。
「土の命を纏う」/"絆地"とあなたを繋ぐ土染めの衣服
(京都芸術大学 ファッションデザインコース 田中美乃里)
忘れたくない場所、思い入れのある土地、そんな場所のことを絆地(きずなち)と名付け、その絆地の土で染めた衣服を制作した。
いのちある土にはその人にとって特別な、人とのの縁・記憶・時間が含まれている。
だからこそ、それを纏うことに意味があると考えた。
具体的な制作過程では、土を顔料としてではなく染料として染色に使用する方法を研究。
土を単なる無機物として扱うのではなく、土の中の様々な生き物のいのち(有機物)を抽出することで得られるエッセンスで布を染色する方法を見つけた。
あなただけの特別な場所のいのちが生み出す色を最大限引き出し、身に纏うことで、あなただけの絆地を少しでも思い出し、繋がってほしい。この制作と研究はそんな想いと共にある。
■在廊
○柏元京 22日午前、23日
○田中美乃里 22日、23日
■作者プロフィール
柏元京(かしもとみやこ)
京都芸術大学
空間演出デザイン学科
空間デザインコース
4回生
2021年度
優秀学生賞 受賞
田中美乃里(たなかみのり)
京都芸術大学
空間演出デザイン学科
ファッションデザインコース
4回生
学科内作品コンペ
『No Design Award 2021』
グランプリ 受賞