株式会社ティーエスアイ
図.エミューの姿
エミューはオーストラリアの草原や砂丘などに分布するヒクイドリ目エミュー科に属する貴重な鳥類で、ダチョウに次いで世界で2番目に大きい走鳥である。
エミューはユーカリの森や疎林、マレー(丈の低いユーカリ種の林)、ヒースの草原、乾燥低木林、砂質草原などの開かれた場所を好んで生息しており、巣は地面のくぼみに葉や小枝を敷いてつくり、
非常にうまく隠してある。
エミューは,広大な土地を食物を得るために常に何百キロも移動しなくてはならないため、食物が
豊かな時に体重が倍になるほどの多くの脂肪を蓄える。そのため食物が少ない時でもその脂肪分を栄養に換え、長い期間飲まず食わずで耐えることができる。
毎年12月から1月にかけて、つがいを作り約30k㎡のなわばりを守り、4から6月の間に9から
20個の卵を産む。オスが抱卵を始めると、メスは他のオスと再びつがいを作り卵を産む。オスの抱卵期間は58から61日間で、その間貯め込んだ脂肪を栄養にして飲まず食わずで卵を抱き続ける。
そのため抱卵後には、45kgあった体重が20kgまで落ちる。
図.エミューの爪
エミューは、成長になると頭長が2m(体高は94~102m)、体長は69~81cm、体重が50kg(38~50kg)以上になる。
強い脚力を持ち、2m以上の歩幅で、時速40~50kmのスピードで長距離を移動できると言われている。肢指は3本(ダチョウは2本)で強い爪をもち、これは唯一の武器となる。体温は38.4℃で寿命は5~10歳と言われている。
図.オーストラリアの紋章
オーストラリア原住民アボリジニの人々が、約4万年前からエミュー油を関節の痛み、筋肉痛、打撲、やけど、皮膚の異常などに塗布しておりました。医薬品のない頃から今日に至るまで秘薬として幅広くエミュー油が使われてきたという歴史があります。
現在ではTGA(豪州治療医薬品局)の定める医薬品として認められており、MIMS (医薬品目録)にも登録されている。
エミューは、オーストラリアがゴンドワナ大陸(先史時代に南半球にあったとされる 巨大な超大陸)から分離して以来、8000万年にもわたって住んでいる。
18世紀後半まではいくつかの種がいたが、ヨーロッパ人が移住するとまもなく本土 以外の島部の種は絶滅した。
エミューの肉は牛肉と鶏肉のちょうど中間のような味で、植民の初期には開拓民の重要な食料となった。
現在でも本土においては環境に良く適応し、広く分布している。
エミューの脂肪は通常、一羽あたり9kg前後を採取することができる。脂肪から精製したオイルを利用する。
エミューオイルは、不飽和脂肪酸であるオメガ-3(α-リノレン酸)、オメガ-6(α-リノール)およびオメガ-9(α-オレイン酸)が含まれているもので、いずれも必須脂肪酸である。オメガ-3(α-リノレン酸)は体内でアラキドン酸に合成され血圧調整作用がある。オメガ-6(α-リノール酸)からはドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタイン酸(EPA)が合成され、それぞれ脳・神経組織での情報伝達活性化、抗血栓・動脈硬化作用がある。オメガ-3(α-リノレン酸)にはアトピー性皮膚炎等のアレルギー症緩和に効果がある。
1.皮膚浸透性(オレイン酸)
皮膚の細胞を活性化させるオレイン酸を40から50%も含む、天然オイル。
オレイン酸が、オイル成分を皮膚表面から筋肉細胞まで速やかに運び、べとつき感をなくす。
2.抗炎症効果(多価不飽和脂肪酸)
抗炎症効果を持つ多価不飽和脂肪酸のリノレン酸を5%以上、リノール酸を約17%も含み、
皮膚の表面を細菌やバクテリアの増殖から保護する。
3.酸化防止
酸化防止剤として知られるビタミンEは、新しい細胞の成長を助ける働きがある。
傷を治す効果など、皮膚のあらゆるトラブルに有益である。
表.各種油脂に含まれる脂肪酸組成の比較
※ 出典㈱ティーエスアイ
図.脂肪酸含有量の比較
エミューから採れるエミューオイルはオーストラリアの先住民が傷や火傷などの治療薬として古くから利用しており、経験的に炎症や創傷に効果がある事が知られている。
エミューオイルは創傷初期の炎症を緩和することが報告されているが、創傷治癒を促進する機序は不明である。我々は、エミューオイルの創傷治癒機能を明らかにすることを目的として、線維芽細胞と血管内皮細胞の増殖および線維芽細胞のプロコラーゲン産生に対するエミューオイルの効果を調べた。
生細胞数は、WST-8を用いて測定した。プロコラーゲン産生量は ELISA 法で測定した。エミューオイルは Dimethyl sulfoxide で溶解し、0.001%、0.01%あるいは 0.05%に なるように培養液に添加した。エミューオイルを培養液に 0.05%添加してヒト線維芽細(NB1RGB)とウシ頸動脈血管内皮細胞(BCAEC)を 24 時間培養すると、細胞数はそれぞれ 25%と 61%増加した。また、NB1RGB が産生するプロコラーゲン量はエミューオイル により増加した。以上の結果から、エミューオイルは細胞の増殖を促進することで創傷治癒効果を高めることが示唆された。
エミューオイルの創傷治療効果より 日本農芸化学会2023年03月 高梨他
エミューオイルの抗炎症作用は皮膚の美容においても有用である。また、エミューオイルは抗炎症作用を有するだけでなく、皮膚浸透性や保湿性が高いというスキンケア化粧品の素材として優れた性質を備えており、オーストラリア産やアメリカ産のエミューオイルが化粧品原料として広く市販されている。
本研究では、エミューオイルがマクロファージと線維芽細胞からのIL-6生産を抑制することを示した。エミューオイルはまた、マクロファージのPGE2産生とCOX-2の発現を抑制した。PGE2は炎症における疼痛の主因であることから、これまでに報告されているエミューオイルによる疼痛緩和の少なくとも1つの要因は、PGE2の産生抑制するものであることが強く示唆された。
エミューオイルは線維芽細胞のIL-6産生も有意ではないが抑制する傾向を示したことから、マクロファージ以外の細胞からの炎症性物質産生も抑制することが強く予想される。
フレグランスジャーナル 47(10)52-55 2019年 足立他
図.エミューオイルの抗炎症・美白効果に関する研究
図.マクロファージの炎症性サイトカイン産生に対するエミューオイルの効果
出典 2018年11月食香粧研究会総会・シンポジウム
出展 2024年 第25回大会 ペット栄養学会発表
2025年 化粧品開発展にて、エミューオイルが紹介されました。