公開日:2025/12/01
公開日:2025/12/01
気管切開孔や永久気管孔をもつ方は、英語で “Neck breathers(頸で息をする人)” と呼ばれます。
Neck breathers のケアは、急性期から在宅まで、成人から小児まで、日常ケア、合併症予防、緊急対応、嚥下・発声など幅広く、多くの専門科や職種が関わります。
日本では、この領域を横断的かつ縦断的に支える仕組みがまだ十分に整っていません。
TraCARE は、必要な知識・技術・仕組みを整理し、neck breathers とケアチームが安心できる環境づくりに取り組むプロジェクトです。私たちも、現場の医療者の方々や neck breathers、ご家族のご経験から学びながら、一歩ずつ進んでいきたいと考えています。
Neck breathersの安全・安心・生活の質(QOL)を高めるために必要な知識・技術・仕組みを、信頼できる形で届ける。医療の質を向上する。
Neck breathers とケアチームが、より安心して日常と医療を行き来できる環境づくりに貢献する。
気管カニューレ閉塞、逸脱・迷入予防と緊急時対応の普及
気管切開ケアの標準化
多職種気管切開チームの普及
嚥下、発声、カニューレ抜去に関する取り組みの推進
Neck breathersと家族の生活の質 (QOL) 向上
【代表】
藤澤美智子
横浜市立みなと赤十字病院 集中治療部
髙田順子
東京べイ・浦安市川医療センターリハビリテーション室
武居哲洋
横浜市立みなと赤十字病院 副院長/救命救急センター長
【コアメンバー】
TraCAREは、医師・看護師・呼吸療法士・理学療法士・言語聴覚士・臨床工学技士など、小規模な多職種チームで運営しています。
メンバーの所属先や業務負担に配慮し、個人名の公開は限定しています。
TraCARE は、多職種の医療者による任意団体として運営されています。
現在、活動に対する報酬・資金提供は受けておらず、特定の企業・学会・団体に依存しない中立的な立場を保っています。
必要な協力が生じる場合には、目的と透明性を明確にした上で連携します。
メンバーの負担に配慮し、実施可能な範囲で取り組みを積み重ねる方式としています。
Neck breathersには、鼻や口と気管がつながっている気管切開の方と、つながっていない永久気管孔の方がいます。この違いによって、緊急時の対応は大きく異なります。外見だけで両者を見分けることは時に難しいため、患者さんのそばに「ベッドヘッドサイン」という情報シートを掲示しておくことは非常に重要です。
また、TraCAREでは、NTSP(UK)から正式に許可を得て、日本の医療現場に合わせた緊急対応アルゴリズムを作成しました。ベッドヘッドサインとあわせて両面印刷し、緊急時には読み上げながら対応できるように設計しています。
ベッドヘッドサインと緊急アルゴリズムは、各施設の環境に合わせて自由に変更し、ご使用いただけます。ぜひご活用下さい。
(営利目的での利用、または無断での改変・再配布は固くお断りします。)
【2026年度の主要目標】
ベッドヘッドサインと緊急アルゴリズムを普及する
【気管切開・永久気管孔患者の緊急対応ハンズオンセミナー】ICUメディカル協賛
2025.7.26. 日本集中治療医学会 第9回関東甲信越支部学術集会にて開催
2025.8.31. 第47回日本呼吸療法医学会学術集会にて開催
TraCAREが参考にしている主要なリソースをご紹介します。イラストをクリックすると、関連ページに移動します。
National Tracheostomy Safety Project (NTSP) ウェブサイト
英国でNeck breathersケアの品質改善に取り組むNTSPの公式ウェブサイトです。
Neck breathersの安全向上に関する教材、アルゴリズム、ガイドライン、YouTube動画など、多くの無料リソースが公開されています。
英語で作成された資料でも、ブラウザの翻訳機能やYouTubeの自動翻訳を利用することで、多くのコンテンツを日本語で閲覧できます。
TraCAREが参考としている重要な国際的リソースのひとつです。
気管切開 包括的ケアマニュアル
National Tracheostomy Safety Project
NTSPのマニュアルComprehensive Tracheostomy Careの日本語版です。
Neck breathersのケアは、ひとつの領域では完結しません。手術、カニューレの選択、日常のケア、合併症、緊急時対応、カニューレ抜去プロセス、成人と小児の違い、さらに医療システムの整備まで、広範な知識が必要になります。
これらすべてを体系的にまとめたComprehensive Tracheostomy Care の内容を日本語に翻訳しました。Neck breathersを支える医療者、家族、地域のケアチームにとって、日常の判断と安全向上に役立つ1冊です。
気管切開術・術後管理に関するガイドライン(第2版)
日本気管食道科学会編
このガイドラインでは、解剖や手術手技の基本に加えて、近年選択肢として広がっている輪状軟骨切開(開窓)術、経皮的気管切開や、緊急気道確保として行われる輪状甲状靱帯(膜)穿刺・切開術などについても詳しく学ぶことができます。
術式だけでなく、気管切開後のケアや、気管カニューレ関連事故から得られた教訓、日本で実際に行われている取り組みについてもまとめられており、Neck breathersの安全管理に関わる多職種にとって非常に有用です。
さらに、**全国実態調査(気管切開術と術後管理の現状)**も掲載されており、本邦における臨床現場の実際を把握するうえで貴重なデータとなっています。
TraCAREの学習・教育資料としても、多くの示唆が得られる重要な1冊です。
リンク先の学会HPから無料でダウンロードが可能です。
喉摘者のためのガイドブック
イツァーク・ブルック著、日本頭頸部癌学会より公開
米国ジョージタウン大学のブルック教授(医学博士)が、ご自身も喉頭摘出術を経験された立場からまとめられた一冊です。
治療の流れ、日常のケア、加湿の工夫、合併症への備え、発声方法やコミュニケーション、精神的サポート、さらに旅行時の注意点まで、喉摘者の生活に必要な情報がきめ細かく整理されています。
本ガイドブックは、永久気管孔の方、ご家族、医療者のだれにとっても、日常の疑問や不安に寄り添う実用的なリソースです。
医療事故の再発防止に向けた提言
一般社団法人 日本医療安全調査機構 医療事故調査・支援センター
気管切開において、気管カニューレの逸脱や迷入は、起こりうる最も重大な合併症の一つです。特に術後早期は、気管切開孔が未熟で安定していないため、カニューレが抜け落ちたり(逸脱)、間違った組織に入り込んだり(迷入)するリスクが極めて高くなります。
実際に亡くなられた方の事例をもとに分析された内容は、私たちが日常のケアや緊急時の対応を見直すうえで、すぐに活かせる具体的なポイントが示されています。また、同ページに掲載されている動画は、スタッフ教育にも非常に使いやすく、多職種での学習や危機意識の共有に役立ちます。
Neck breathersの安全を守るために、必ず目を通しておきたい重要なリソースです。
PMDA 医療安全情報(気管切開に関する)
下のイラストをクリックすると、該当資料をダウンロードできます。
TraCARE 資料利用ガイドライン (責任と免責含む)
TraCARE が公開する資料(ベッドヘッドサイン、緊急アルゴリズム、解説資料など)は、neck breathers の安全とケアの質向上を目的として作成されています。ご利用にあたっては、以下の内容をご確認ください。
1. 利用目的について
TraCARE の資料は、以下の目的で自由に利用できます。
・医療施設内での教育・研修
・多職種勉強会での共有
・啓発のための掲示・配布
・非営利目的の医療・教育活動
2. 改変について
・ベッドヘッドサインとアルゴリズムは各施設の運用に合わせた調整や追記は可能です。
・ただし、営利目的での利用、または無断での改変・再配布は固くお断りします。
3. 出典表示について
資料を使用・配布する場合は、以下の表示を推奨します。
© TraCARE 2025
出典:National Tracheostomy Safety Project(許可取得済)
4. 商用利用について
・営利目的・商用活動での使用はできません。
(例:有料セミナー教材、販売物への利用など)
5. 責任と免責
・TraCARE の資料は参考情報であり、最終的な判断と対応は、各施設およびケアにあたる医療者・スタッフの責任のもとで行われます。
・TraCARE は資料の使用に伴う損害・損失・障害について一切の責任を負いません。
・TraCAREが提供する情報は、診療の質改善を目的としたものであり、現行の標準的ケアを直ちに代替または定義するものではありません。
6. ロゴについて
・TraCARE ロゴの改変は禁止しています。
・ロゴを資料やスライドに使用する際は、TraCARE 代表への事前連絡をお願いします。
7. お問い合わせ
資料利用に関するお問い合わせは、お問い合わせのフォームをご利用ください。
更新履歴
2025/12/01 公開(初回版)