富田地区まちづくり基本構想(赤大路小学校・第四中学校・赤大路コミュニティセンターリストラ&富田地区振興のための赤大路地区併合計画)について
高槻市は、『広報たかつき』2021年2月号において、「富田地区まちづくり基本構想」に関する記事を掲載しました。
記事では、寺内町として栄えた歴史を持ち、酒蔵があり、歴史的景観整備を行ってきた「富田地区」の活性化の必要性を訴え、①かつて無計画に作りすぎて維持費が払えなくなった老朽公共施設を削減し、「小中一貫教育」を名目に四中校区内の小学校と中学校を統合して「施設一体型」小中一貫校を整備することを二本柱としています。
上記の整備方針の対象地区は、「富田都市拠点(富田駅周辺)及び第四中学校区」としており、記事では多世代の交流と学びを重視していることから、富田地区にある老人・青少年関係施設の機能は残しつつ、富寿栄住宅建て替えによる余剰地も活用して、高槻市が「都市拠点」と指定する富田小学校周辺に新しい施設一体型小中一貫校を整備したいという高槻市の意向が色濃く(あるいはあからさまに)表現されています。すなわち、「歴史ある」富田地区のまちづくりのために、赤大路小学校校区を巻き添えにする(赤大路小学校を取り潰す)方針が事実上表明されています。
また、今後の予定として、2021年に「パネル展示」「ワークショップ」「パブリックコメント」を実施し、2022年2月には計画を決定するとしています。
四中校区が非施設一体型小中連携の取り組みを行っていることは地区住民には周知のことですが、施設一体型小中一貫校整備の方針は赤大路小学校保護者や赤大路小学校区の住民には初耳であり、このような重大問題が突然既定方針のように発表されることには驚きを禁じえません。
このページでは今回の発表に至る高槻市関係の動きをまとめ、その問題点を整理します。
■経緯(市議会議事録などより)
2006年 高槻市学校教育部長、市議会で「小中一貫校の設立については、現在、本市としての予定はございません」と答弁。
2010年 奥本市長、小中連携の取組について「一体型の施設における小中一貫校」に連動するものとして位置付けているわけではないと議会で答弁。
2010年 四中校区が市の小中一貫教育モデル地区に(3年間)
2014年 総務省、公共施設等の統廃合・再編を本格的に推進するため、各自治体に公共施設等総合管理計画を策定するよう要請
2015年 濱田市長、「施設一体型小中一貫校についても検討を進めます」と議会で答弁。
2016年 高槻市小中一貫教育学校検討委員会、四中校区をモデル校区に施設一体型小中一貫校を整備するよう提言。
2016年 北岡市議が(小中学生が一施設に混在することによる)施設一体型の問題点、「中1ギャップ」の欺瞞性、通学域の拡大がもたらす問題、地元との情報共有の重要性について市議会本会議で指摘。
2016年 富田地盤の岡井市議、議会で、四中校区は、校区の子どもたちの学力や進路の課題を克服するために1985年頃から長年にわたり、学校、地域、行政が連携した取り組みを進めてきたとの認識を示し、 「(小中一貫校設置について)すぐにでも動ける実施組織の立ち上げを急いでほしい」と発言。
2019年 高槻市長、施政方針に「富田副都心」を掲げる
2020年 富田地区地盤の市議グループと「富田地区まちづくり基本構想策定業務」を受託している類設計室が富田地区の老朽公共施設で開催された「未来にわたり住み続けたいまち」まちづくり学習会で「施設一体型小中教育一貫校を含んだまちづくり」について報告。
2021年 高槻市、広報2月号で「富田都市拠点」の開発と「施設一体型小中一貫校」を関連づける「富田地区まちづくり基本構想」に関する記事を掲載。
以上の経緯からうかがえることは、
・四中校区では以前から小中連携の取組が盛んだった。
・2010年頃まで市は施設一体型を検討していなかったにも関わらず、国が全国的に公共施設リストラ大号令を出した2014年をはさみ、新市長になって突然施設一体型に前のめりになり、「四中をモデルに施設一体型を」という提言を市の機関に出させ、「富田を副都心に」と言い出した。それによりそうように、富田地区地盤の市議は盛んに施設一体型小中一貫校整備について運動した。
という流れです。
■問題点
〇なぜ児童が少ない富田小学校の都合が優先なのか
富田小学校は児童約200人、赤大路小学校は540人超。人口的な中心性がどちらにあるかは明らかです。それはJR北側地区の方が生活の利便性も高く、マンション群に児童がたくさんいるからです。富田小学校をなくしたくないという一部富田地区住民及びそこを地盤とする市議の利益は理解できますが、なぜそのために赤大路小学校が犠牲にならないといけないのでしょうか。過疎地や郊外で子どもが少なすぎる小学校を廃止するならともかく、なぜ富田小学校ではなく赤大路小学校をつぶすという必然性があるのでしょうか(富田小学校と柳川小学校か寿永小学校の統合なら3校の距離も近く、踏切もない上に人数的にも納得ができます)。
公共施設のリストラをしたければ、富田小学校の周辺には作りすぎた老朽公共施設がなぜかたくさんあります。それと富田小学校を統合して再編すれば済む話です。
富田地区に施設一体型を建てたい人は「赤大路小学校はすでに満員でこれ以上詰め込めない」「四中ははずれにある」と言うかもしれませんが、富田小学校も四中校区の南端であり、地理的な条件はほぼ同じです(地理的な中心性を重視すれば、JR社宅や支援学校敷地を買うしかありません)。
〇跡地利用をどう考えているのか
赤大路小学校・第四中学校を廃止した場合の跡地利用はどうする方針なのでしょうか。跡地を住宅地として再開発した場合、当然児童生徒数が激増し、新施設一体型小中一貫校は超マンモス校になることが見込まれますが、その対策をどう考えているのでしょうか(跡地利用によって人口が急増した結果、再度小学校をつくらなければならなくなった場合、高槻市長は未来永劫笑い者になるでしょう)。これらの計画とセットでない限り、いきなり施設一体型学校統廃合だけを打ち出されても検討に値しません。
また、災害時には、高齢者や体の不自由な人などを含む赤大路地区住民が身を寄せる避難所はどうなるのでしょうか。災害時にJRや阪急を渡れる保証はありません。赤大路小学校の分の人数も富田小学校地に収容しようというのでしょうか。
おまけに富田小学校は市のハザードマップでは水没することになっている一方、高台にある赤大路小学校は無事であることが明記されています。災害時に有利な方をつぶして不利な方へ統合しようとする理由を市は明らかにする責任があります。
〇施設一体型の不利益についてどう検討しているのか
540名超の赤大路小学校と200名の富田小学校、366名の第四中学校を合併させると1100名、30クラス超となり水泳や体育館、運動会などで支障があるのではないでしょうか。特に中学生のテスト期間に小学生の運動会などの練習がある場合や、中学生のクラブ活動により小学生の放課後の運動場利用が制限されるなど弊害が予想されます。他にも全国的に様々指摘されている施設一体型のデメリットについてどのように検討しているのか、市は早急に表明すべきです(逆に施設一体型の具体的なメリットは教職員の打ち合わせがしやすくなるといった内部事情のみで、赤大路小学校をつぶすほどの理由にはなりません)。
〇市が開発したがっている「富田都市拠点」(富田小学校)周辺は普通の住宅地
富田小学校周辺はいわゆる繁華街・中心市街地ではなく一般的な住宅地で、公共施設がやや集中して立地している地域です。なぜ市はそこまでして都市計画的、地理的に合理性の低い富田小学校周辺を開発して小学生の保護者を含む人口を誘致して地価を上げることにこだわるのでしょうか?
〇通学路の安全問題
赤大路小学校の児童を富田地区に通わせることになった場合、JR北側の多数の低学年児童にJR2ヶ所、阪急3ヶ所の踏切や高槻最悪の歩行者環境であるJRガード下付近を通らせることになります。特に密集する登下校時間のみでなく、放課後の遊びなどで、今までとは違う低学年児童の交通が多く発生します。これは保護者にとって住宅購入地の選択に関わる大問題です。
現在も北昭和台からJRの踏切を越える児童や校区北側から171号線を超えて通学せざるを得ない劣悪な交通環境におかれている児童がいますが、市は篤志家の高齢者に立ってもらって挨拶運動とかねて注意を喚起するだけ、というアリバイづくりに終始しています。彼らは健康状態が優れなければ休み、何かが起きても責任をとれるような立場ではありません。鉄道の高架化、踏切の地下道化、高架人道橋化など、交通対策の選択肢はいくつもあるにも関わらず、高槻市、大阪府、国、鉄道会社はこの何十年も対策を実現できず、実質的に無策を貫いています。この問題に対して具体的にどのような検討をしているのか、市は早急に表明すべきです。今回、JRの北側に多く居住する児童に何の対策もなく富田小学校への通学を求めることは、この状況をさらに一気に悪化させる行為で、通学路の安全確保上許されることではありません。
〇ワークショップやパブリックコメントはアリバイづくりに過ぎない
パネル展示は単なる展示であり、ワークショップはその恣意性と政治的代表性の無さから単なる「市民参加」のアリバイづくりの域を出ない手法です。パブリックコメントはウェブフォームへの市民の書き込みに対して市が「原案通り」と回答するだけのアリバイづくりの儀式に過ぎません。市として直接の利害関係者である当該地区の全保護者・住民(未就学児童のいる家庭や避難所のゆくえを心配する高齢者を含む全住民)に対するアンケートを実施し、結果について公表の上、各学校・及び公民館・コミュニティセンターで説明会を行うことを求めます。説明会については平日及び土日に何度でも開催してなるべく多くの保護者・住民が直接話をできるように実施することを求めます。
■まとめ
以上のように、今回の「構想」は、公共施設のリストラをしたい市役所、児童数の減少により将来が危ない富田小学校を守りたい地元市議の利害が一致し、小中連携から施設一体型に一気に飛躍し、有無を言わさず突破しようという、住民を無視した、時代錯誤な暴挙です。赤大路小学校の児童及び保護者、地区住民に対する配慮は全くなされておらず、不利益しかありません。ただひたすら「歴史ある」富田地区の利益だけが優先されています。
赤大路小学校区の住民・保護者の皆さん、このままだと、市長・市役所と富田地元議員のやりたいようにやられてしまいますよ? 小中連携は施設一体型でなくても十分できます。公共施設のリストラがしたいなら、富田小学校周辺のつくりすぎた老朽施設を整理すればいいだけです。白紙から考え直しませんか? まだ変えられます!学校に、市役所に、あなたの声を届けましょう!