学会長からのご挨拶

 第19回東京都作業療法学会学会長を拝命いたしました、阿瀬寛幸と申します。まだまだコロナ禍の影響による社会的変化から完全な回復をみない昨今ですが、本会は、4年ぶりの現地での講演・発表を中心とした開催に向けて、東京都作業療法士会学術部と本会実行委員会を組織している区中央部・南部・島嶼ブロックのメンバーを中心として日夜準備を進めています。

 今回のテーマである「Face to Face 作業で結ぶ東京の未来」は、実行委員会メンバーが何度も話し合いを重ね、本会をどのように創り上げていくかを話し合った上で決定しました。特に“Face to Face”には、「久しぶりの対面での開催」という思いがありますが、和訳すると「(困難に)立ち向かう」という意味もあるそうです。我々は、日々変化するコロナ禍においても、切れ目なく続く日々の生活「作業」について、対象者の方々や多くの支援者の方々と共に悩み、考え、改善を図りながら支援する日々を続けてきています。そんな中で、4年ぶりに同志である東京中の作業療法士が集うことのできる喜びと、改めてこれからも「作業」を強みとした実践を続ける強い思いを込めたテーマとなっております。

 日本作業療法士協会会員統計資料(2020年)によりますと、東京都の日本作業療法士協会会員数はまもなく4,000人に及ぶ勢いとなっており、47都道府県の中で最も多い作業療法士がいる一方、人口10万人あたりの作業療法士の数は27.4人と、日本全体における人口10万人あたりの作業療法士数50.3人を大きく下回り、47都道府県の中で最も少ない値となっています。また、ひとたび蓋を開けてみると、「隣には誰が住んでいるか、分からない」「家族とは疎遠で長いこと連絡を取っていない」「自宅はエレベーターのない5階建て」「通院は電車を利用しなければならない」など、様々な制約とともに、東京特有の社会的バリアがあったり、都心部においては、各専門機関に全国から患者さんが受診をされ、退院後の生活支援の連携には、広範囲への対応が必要となり、連携先とのネットワークを作りにくいなど、作業療法を展開する上でも東京ならではの問題に直面したりします。このような中、サブタイトルである「作業で結ぶ東京の未来」として、「対象者の生活を切れ目なく支援する作業療法を、東京においてどのように展開していくか」について考え抜く学会にしていきたいと思っています。

 これらを実現するために、「作業療法士の卒後キャリア」「医療・介護・福祉・保健・教育・労働・司法など領域の垣根を超えた東京の作業療法士のネットワーク」「作業療法士ならではの工夫と実践」などをこの機会に再考し、これからも対象者の人生の旅における困難を支え続けること必要だと考え、具体的なプログラムを準備しています。1人1人の作業療法士は対象者の方々とかけがえのない貴重な経験をしている一方、スポットライトが当たらずに記憶にしまわれてしまうのは非常に勿体ないことです。特に、昨今の急激な作業療法士数の増加とフィールドの多様化に対して、卒後のキャリアを形成する場がまだまだ足らないと感じ、1年に1回の大切な機会を仲間とともに、時間・知識・経験・想いの共有の場とし、明日からの作業療法に役立てられる1日となるようにしたいと強く思っています。

 コロナ禍や世界情勢における社会の変化は大きく、万が一、現地開催が難しくなった場合の対応として、アーカイブでの聴講も準備する予定です。本会は必要な感染対策を十分に講じた上で、「現地開催」をメインとして予定していますが、開催後のアーカイブについても、学会の余韻にひたりながら、復習にご活用いただければと思います。また、働き方の変化により、当日、現地で参加できない方々におかれましても、配信にて演者の強い思いとメッセージを受け取っていただき、明日の活力としていただければと思います。最後になりましたが、皆様のご発表・ご参加を実行委員一同心よりお待ち申し上げております。

第19回東京都作業療法学会 学会長

順天堂大学医学部附属順天堂医院

作業療法士 阿瀬寛幸