フランク・ロイド・ライトの帝国ホテルのための黄色いタイル。ライトが黄色が欲しいと言って、探しているうちに常滑にたどり着いた。武田五一の建築にも携わった久田吉之助という人が最初に引き受けたが揉めて、その辺の顛末はテレビドラマにもなった。ドラマのソースは久田と揉めた張本人の牧口銀司郎というホテル側の人が残した手記。牧口の手記では久田を一方的に悪人として書いているが、寺内信一によれば、久田は常滑のテラコッタの率先者であったとのこと。
牧口は久田をまるで極悪人かのように書いているが、牧口自身は久田との問題を収めるためにヤクザの親分を頼って、またその親分を称えてみたり。どっちが悪い奴かわからないというのが私の感想。予算超過と納期遅れは誉められたものではないが、受注生産であることや新しい試みであること、さらに当時の常滑の窯の商習慣をおもうとやっぱり牧口さん言い過ぎじゃないかなと思う。ともあれ、久田は寺内の言う通りテラコッタの率先者であった事は今も見ることが出来る彼の仕事が物語る。肝心のタイルは紆余曲折経て伊奈初之烝と長三郎親子によって完成された。
事の顛末について知りたい方はテレビドラマなど参照されたい。
自分が作ったものは油揚げのようだが、本物のタイルはもっとスッキリかっこいい。
参考:
「故・水野平吉氏保存 帝国ホテルのスダレ煉瓦」(INAXライブミュージアム/2006)
寺内信一「尾張瀬戸・常滑陶瓷誌」(学芸書院/1937)