Tokai Area Circle of Syntax (TACOS)は、中京大学を起点に東海地方の言語学(主に統辞論/統語論)研究を促進することを目的として活動します。
第6回TACOS研究会
日時: 2026年3月12日(木) 16:00 ~ 18:00
場所: 中京大学 アネックス棟 6F アネックスコンベンションホール
ゲスト: 後藤 亘 先生(東洋大学 教授)
テーマ: 受動・非対格vPにおけるパラドックス ー ボックス・システムによる解消 ー
概要:
本発表では、受動構文および非対格構文における動詞句(vP)のフェイズ性をめぐるパラドックスについて考察する。非適正移動(Improper Movement)に関する理論的考察に基づけば、これらのvPはフェイズを成さないと予測される。しかしその一方で、再構築効果(Reconstruction Effects)等の経験的証拠は、それらがフェイズであることを強く示唆しており、理論的予測と経験的事実の間に矛盾が生じている。
このパラドックスを解消すべく、本発表では Chomsky (2024) の「ボックス・システム(Box System)」に修正を加えた、「素性付値に敏感なボックス・システム(Feature-Valuation-Sensitive Box System)」を提案する。本提案の骨子は、フェイズ・エッジにおける「ボックス化(boxing)」が、素性が完全に付値された(fully valued)要素に対してのみ適用されるという点にある。この仮定に基づけば、受動動詞や非対格動詞の内部項は、格などの解釈不可能素性がvP内において未付値(unvalued)のままであるため、vPエッジにおけるボックス化の対象外となる。このメカニズムにより、IP指定部へのA移動を許容しつつ、再構築効果に関しては当該vPがフェイズとして機能するという事実を、矛盾なく導き出すことが可能となる。
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第5回TACOS研究会
日時: 2026年2月20日(金) 16:00 ~ 18:00
場所: 中京大学 アネックス棟 6F アネックスコンベンションホール
ゲスト: 佐藤 陽介 先生(津田塾大学 准教授)
テーマ: 言語インターフェイスの裏の顔とは:省略現象に見える「遊び」と「甘え」の観点から
概要:
言語における省略を長年研究していると、通常は文法的になり得ないはずの構造が、省略下ではなぜか文法的に許容されてしまうというパターンが、スルーシング (sluicing) や項省略 (argument ellipsis) などの種々の省略構文で繰り返し観察されます。それは、人の心情に合わせると、「誰も見ていない (=発音されない) のであればバレないから大丈夫だろう」とばかりに、普段人の見ている時 (=発音される環境) ではやってはいけないことを、誰も周りにいなければふとやってしまいたい道徳上の誘惑にかられるようなものです。本発表では、この「普段は許可されない構造をつくること」を「遊び」、そしてそれが発音されない環境でなぜか例外的に許容されることを「甘え」ととらえます。その上で、なぜ省略現象下でのみこの「遊び」が「甘え」として受け入れられるのか、という独創的な研究上の問いを設定します。
では、これはなぜなのでしょうか。本発表では、この問いに対して、統語・音韻インターフェイス (syntax-phonology interface) の働きから答えを考えてみたいと思います。具体的には、併合 (Merge) に基づく構造構築のみを仮定する現行の極小主義プログラムにおいて、省略現象下の文法性を決定する要因は、統語計算過程そのものではなく、統語部門外のインターフェイスにおいて再定式化することができます。この考えに沿うと、統語計算上で起こりうる構造上の「異変」というのは、統語・音韻インターフェイスで発動される調整操作によって原理的に修復 (Repair) が可能であるという新たな見通しが立ち、そこから「遊び」と「甘え」が例外的に生じるのだと考えることができます。この方向性が正しければ、統語派生とつながる音韻部門は、統語派生に盲目的に従うだけの副次的な部門ではなく、構造構築の行方を大きく左右する侵略的インターフェイス (Invasive Interface) であるという、文法システム上の新たな帰結が得られます。
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第4回TACOS研究会
日時: 2025年9月26日(金) 17:00 ~ 18:30
場所: 中京大学 アネックス棟 6F アネックスコンベンションホール
ゲスト: 中村 太一 先生(東北大学 大学院文学研究科 准教授)
テーマ: 動詞の意味と文構造の関係を考える —場所・物材を表す名詞転換動詞を中心に—
概要:
本講演では、(1a)と(2a)に示すような、場所や物材を表す名詞転換動詞の意味と⽂構造の関係について考察します。
(1) a. Mary banked the money.
b. Mary put the money in a bank.
(2) a. Bill saddled the horse.
b. Bill provided the horse with a saddle.
(3) a. #Mary churched the money.
b. Mary put the money in the church.
(1a)は場所を表す名詞を基体とした動詞bankが⽤いられていますが、例えば、(1b)のようにputを使って書き換えることができます。同様に、(2a)は物材を表す名詞転換動詞saddleを⽤いた例ですが、(2b)のように書き換えられます。しかし、(3)に示すように、名詞転換動詞が⽤いられた例は、対応する書き換えの例よりも厳しい意味的制限が観察されます(Kiparsky (1997))。
本発表では、まず場所や物材を表す名詞転換動詞の諸特徴を概観します。その後、動詞の項構造や意味が統語上で形成されるという⽴場の下で(Hale and Kyser (1993)他)、これらの名詞転換動詞が持つ諸特徴がどのように説明されるのかを考察します。さらに、従来の主要部移動を⽤いた分析とNakamura (2025)が提案するFormCopyに基づく分析の⽐較を⾏い、Form Copy分析のほうがより広範な特徴(Kiparsky (1997)が指摘する意味的制限等)を説明できる可能性があることを示したいと思います。
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第3回TACOS研究会
日時: 2025年2月20日(木) 15:00 ~ 16:30
場所: 中京大学 アネックス棟 6F アネックスコンベンションホール
ゲスト: 瀧田 健介 先生(同志社大学文学部英文学科教授)
テーマ: 「同じ」ってなんだろう?: 省略現象における同一性条件について
概要:
例えば、”Can you eat natto?”に対して”Yes, I can!”と答えるとき、意味的には”Yes, I can eat natto!”と答えているわけですから、”eat natto”の部分は「聞かれていることと同じ」だから省略できていると考えられます。ですが、英語や日本語をはじめとする様々な事例から、「同じだから省略できる」とは限らないし、そもそも「同じとは何か」という問いは結構奥が深いことが知られています。今回の講演では、このような「同一性条件」に関する私自身の研究を元に、それを少し発展させながらこの問題に対して取り組んでみたいと思います。
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第2回TACOS研究会
日時: 2024年2月21日(水) 14:55 ~ 16:25
場所: 中京大学 アネックス棟 6F アネックスコンベンションホール
ゲスト: 坂本 祐太 先生(明治大学情報コミュニケーション学部准教授)
テーマ: What Lies Behind Silence: A Case Study of Japanese
概要:
本講演では、日本語における音韻的にゼロの照応形(空項)に焦点を当て、その背後に理論的に何が潜んでいるのか明らかにすることを目的とする。より具体的には、Hankamer and Sag (1976)の研究以降、照応形の派生には省略か代用のどちらかが伴っていると考えられているが、先行研究において確立された省略・代用のテストを日本語の空項に適用し、それらが省略によって派生されるべきなのか、それとも代用によって派生されるべきなのか、様々な構文を通して論じる。
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第1回TACOS研究会
日時: 2023年6月3日(土) 14:00 ~ 15:30
場所: 中京大学 アネックス棟 6F アネックスコンベンションホール
ゲスト: 杉崎 鉱司 先生(関西学院大学文学部教授)
テーマ: やさしい母語獲得:ゆるくない言語理論の視点から
概要:
ヒトに生まれれば誰でも母語の知識を身につけることができるので、子どもにとって母語獲得は「やさしい」作業であると考えられます。なぜなのでしょうか?生成文法と呼ばれる言語理論は、ヒトに生まれつき与えられている母語獲得専用の仕組みが発達の筋道と到達点を制約しているという仮説を採用し、その仕組みに関する理論を明確に(「ゆるくない」ように)組み立てることを目指しています。このお話では、生成文法の仮説を支持する母語獲得からの証拠を、私自身の研究から「やさしく」説明したいと思います。
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TACOS管理者
大滝宏一 (中京大学国際学部准教授)
土橋善仁 (中京大学国際学部教授)
野村昌司 (中京大学国際学部教授)
林愼将 (南山大学国際教養学部講師)