ワークショップ:分布族・離散集合の幾何学とその周辺

日にち:2020年12月1日(火)
場所:Zoom オンライン
プログラム(PDFは
こちら):

  • 9:40〜10:20 小林 愼一郎 (東北大学)
    弧推移的なグラフ上のラプラシアンの固有値に対する普遍不等式

本発表では, グラフに対するラプラシアンの固有値が受ける制約(普遍不等式)について得られた結果を説明する.
グラフの長さ1の弧全体の集合に自己同型群が推移的に作用するとき, グラフは弧推移的であるという.
弧推移的なグラフに対して, ラプラシアンの第k固有値を第1固有値から第k-1固有値のみの情報で上から評価する不等式を主結果として述べる.
これは, Cheng--Yang(2005)が与えた等質リーマン多様体に対するラプラシアンの高次固有値に関する結果のグラフ版, およびHua--Lin--Su(2017)が与えた整数格子グラフ上の有限領域に対するDirichletラプラシアンの固有値に関する結果の有限グラフ版と思うことができる.また, 弧推移的なグラフは頂点推移的であるが, 今回得られた結果を頂点推移的なグラフに対して自然に拡張することができないことを, 反例を用いて説明する.

  • 10:50〜11:50 關戸 啓人(京都大学)
    C60フラーレンの対称性と離散ソボレフ不等式の最良定数について

C60フラーレンとは,炭素原子60個からなる球状の分子である.
最初に発見されたフラーレンは,バッキーボールと呼ばれる切頂二十面体の形のC60フラーレンであるが,
C60フラーレンには1812通りの異性体が存在することが知られている.

各炭素原子が線形バネでつながっている古典力学モデルを考え,離散ソボレフ不等式の最良定数をフラーレンのかたさの指標として導入することができる.
C60フラーレンの全1812個の異性体について,最良定数を求めることで,C60フラーレンの中で最もかたいフラーレンはバッキーボールであることがわかった.

また,フラーレンの対称性や分類について,現在の取り組みの一部を紹介したい.

  • 13:00〜14:00 五明 工 (名古屋大学)
    有限グラフの固有値の最大化問題と埋め込み不変量の最適化問題

Goering-Helmberg-Wappler は有限グラフの埋め込み不変量を最適化する問題と, その(半正定値計画問題の意味での)双対問題としてグラフ上のラプラシアンの第1固有値を最大化する問題を導入した.
我々は、Goering 達によって与えられた問題とは別の類似した埋め込み問題を考え、これら2つの埋め込み問題の最適値の間の関係および第1固有値の最大値との関係を付けた.
また、正多面体や切頂二十面体がその1-スケルトンと同型なグラフの最適埋め込みとして実現されることを紹介する.
本講演の内容は, 摂南大学の小林俊公氏, 鹿児島大学の近藤剛史氏および名古屋大学の納谷信氏との共同研究に基づく.

  • 14:30〜15:10 黄 章開(東北大学)
    Inradius collapsed manifolds with Ricci curvature bounded below

In this talk, we study the limit space of $n$-dimensional Riemannian manifolds with boundary, where we assume a lower Ricci curvature bound, and a two-sided bound on the second fundamental form of boundaries. We consider the special case when the inradius of the manifolds tends to zero. We determine the limit spaces of inradius collapsed manifolds as $\text{RCD}(K,n-1)$ spaces for some constant $K$. Moreover, we prove that the number of boundary components of inradius collapsed manifolds is at most two.

  • 15:40〜16:20 竹内 秀(東北大学)
    Lower semicontinuity of the size of integral currents in Hilbert spaces

ユークリッド空間におけるkカレントとは, k次微分形式の空間上の実連続線形汎関数のことである. 具体例としては, ユークリッド空間内のk次部分多様体Mを固定し, 与えられたk次微分形式に対してM上での積分値を算出する, という作用が挙げられる. このカレントの概念は, 近年, AmbrosioとKirchheimにより, 距離空間上で定義された. そこで, 次の問題を考えたい: 「距離空間内のk次整カレントの列があるk次整カレントに♭収束するとき, カレントのk次元Hausdorff測度は下半連続になるか.」この主張はユークリッド空間内において真であることが知られており, Almgrenによりintegral geometric measureを用いた証明が与えられている. 本講演では, ヒルベルト空間において上記の主張が真であること, 及び証明中での重要な道具であるslicing theoremについて紹介したい.

  • 16:50〜17:50 須鎗 弘樹(千葉大学)
    スケールから見たTsallis統計の基礎数理

基本的な非線形微分方程式を出発点にして構築されるTsallis統計の基礎数理について,スケールに関する最近の結果も踏まえて,最新の研究を紹介する.

  • 17:50〜18:30 自由討論

休憩憩時間および自由討論は、Zoomのブレイクアウトルーム を用いて行う予定です。
そのため、本ワークショップのZoomにはブラウザではなくアプリから入室すること、およびアプリを最新版にアップデートしておくことを推奨いたします。
また、タブレット・スマートフォンより、PCを用いた方が、ブレイクアウトルーム の間の移動がスムーズに行えるようです。

参加申し込みは,以下のリンクからお願いいたします
forms.gle/WiSH7Ah51N2u98hS7
参加申し込み締め切り:11月30日(月)17:00 (JST)
※11月30日(月)18:00(JST)ころに、ワークショップのURLをご登録いただいた方に送付いたします。

世話人: 高津 飛鳥(東京都立大学・東北大学) 楯 辰哉(東北大学)
お問い合わせ先:asuka.takatsu.c2[あっと]tohoku.ac.jp ([あっと]は@に変えてください。)