本研究では、現在行われている堆積物コア分析の検証を行う。採取された地層の堆積物などは、ある部分を薄く切り出し、そこから得られるデータをある年代のデータとして扱う。堆積物は長い時間をかけて圧縮されたものであるので、どれだけ薄く切り出したとしても、それはある期間のデータを平滑化(時間圧縮)されたものである。現在は、この時間圧縮されたデータを用いて、堆積物コアの分析が行われている。採取された堆積物から得られる複数のデータの関係性を調べる際には、2つのデータの相似性が調べられる。相似性が高い場合は両者に関係性があると判断し、相似性が低い場合は関係性が無いと判断される。堆積物コアから得られるデータの振る舞いを見ると、長期的なトレンドのような振る舞いと、その長期的な振る舞いの上に短期的な変動があることが見て取れる。従って、既存の相似性を用いた調査は、主に長期的な振る舞いに対する性質を示すものであり、短期的な関係性を調べたものではない。また、短期的な振る舞いの特徴は、これまで調査されたことはない。短期的な振る舞いの調査には、データの使用形態と関係性の判断の2つの問題がある。1つ目は時間圧縮されたデータを用いて、時間圧縮されていないデータと同等の分析結果が得られるのかどうかが不明であり、2つ目は相似性が低くても関係性がある場合を考慮しなければならない。本研究では、様々な条件を想定したシミュレーションを用いて上述の問題を調査し、現在行われている堆積物コアの分析について検証を行った。その結果、複数の堆積物データの短期的な振る舞いに相関が認められたとしても、時間圧縮されていない元々の堆積物データには相関があるとは必ずしも言えないことが明らかになった。