税金は国の運営にとって、重要な財源である。本研究は、財源の1つであるたばこ税について検討したものである。近年、日本では消費税を増税すべきと言う議論が続いている。消費税は全ての消費者が支払う税金であるため、低所得世帯の家計負担が大きくなる。そのため、消費税の増税よりもたばこ税を増加する方が良いという声が上がっている。
喫煙者の多くはニコチン依存症であるため、喫煙を簡単に止めることが出来ない。それゆえ、たばこ税は安定な税源になると考えられている。実際に日本では1960年から今まで、たばこ税は十何回も引き上げられてきたが、たばこ税の税収額はずっと2兆円台の規模で、総税収の2%を占めている。このように、たばこ税は政府にとって不可欠な財源である。
国立社会保障・人口問題研究所によって発表された「日本の将来推計人口」では、早ければ2043年に日本総人口は1億人を下回ることが示された。人口が減少すれば、喫煙率が同じであれば喫煙者数も減少する。また、たばこの価格とたばこ購入者の収入の関係も重要であると考える。たばこ税の増税によりたばこの価格が上がれば、価格弾力性によりたばこの販売数が減少することが考えられるが、経済的に余裕があれば、あまりその影響を受けないことも考えられる。
そこで本研究では、2060年までのたばこ税の長期的な推計を行うため、まず、たばこ税収が持つ長期的な関係性を明らかにすることとした。その結果、1990年から2014年までの実質平均給与と喫煙率から求められる喫煙者の収入とたばこ販売数との間に、明快な関係を見いだした。その関係性と今後50年の人口変化を考慮したたばこ税の長期的な推計を行った結果、現在11.88円/本のたばこ税率では早ければ2017年にはたばこ税の税収額は総税収の2%を下回ること、また総税収の2%の税収規模を維持するには、遅くとも2021年毎にたばこの税率を14.38円/本まで上げなければならないことが分かった。