ゴリラのゲリラ軍、ゲリラ雷雨の中ゲリラライヴ

ゴリラのゲリラ軍、ゲリラ雷雨の中ゲリラライヴ


「ウホホー!!」

ここは深い森の中、ゴリラのゲリラ軍がゲリラ雷雨の中ゲリラライヴを行っている最中である。

先程までは微塵も雨の気配などなかったのだが、破竹の勢いで雨が降り注いできた。

「みんな、もろ盛り上がってるウホか~~?!」

「「「「もろウホ~!!!」」」

“アネッタイウリン部隊”所属のゲリラゴリラ軍たちは狂乱の盛り上がりを見せている。

「はぁ、くだらねぇ。」

ライブの舞台の裏で喧騒から離れ、舞台の壁にもたれかかっているゴリラが一匹。

この気取ったゴリラは、無敗悟李(むはいごり)という名である。

“悟李”はゲリラゴリラ部隊の隊長の息子だった。

「悟李!悟李!どこいったゴリー?!」

「ッチ。親父が来た。」

「・・・お前はここにいろよ。罰を受けたくないのは、俺も同じだ。」

悟李の手からなにか小さなげっ歯類が地面に降りた。

ハムスターだ。

悟李はこの前、このハムスターを見つけた。

なぜ父親からハムスターを隠したかというと、ゴリラゲリラ協会の掟で、ゴリラ以外の動物と馴れ合うのは禁止されている。

もちろん、その掟を破ると懲罰が待っている。

ゴリラゲリラ軍がそこまで他の動物との接触を禁じるのは理由があった。

それは、ゴリラゲリラ軍がなぜここで戦っていたのか、その理由と同義である。

ゴリラゲリラ軍は、人類を滅ぼすために、ゴリラ解放戦線が協議され、その戦争は一つの場所から始まったが、現在は世界まで広がっている。

ゴリラはゴリラ以外を差別し、人間は人間以外を差別している。

『ドゴォォォォォォンッ!!!!』

「なんだゴリ!?」

突然の爆発音に、ゲリラ雷雨のゲリラライヴ最中のゴリラゲリラ軍は戸惑っている。

「人間だゴリ!!人間が攻めてきたゴリ!!!」

ゴリラたちがいる地面は、突然の暗闇に襲われた。

ゴリラたちは一瞬なにが起きているか分からなかったが、すぐに死を悟る事となる。

「あれは・・・人間の飛行艇だゴリ!!!」

「「「ウワァーー!!!!」」」

「待て!!お前ら!!焦るんじゃないゴリ!!」

「これは人間の策略ゴリ!!落ち着くゴリ!!」

ゴリラゲリラ部隊隊長は、部隊の統制を取り戻そうと必死になっている。

ゴリラたちが我先に、我先にと森の方向へ押し合っている。

「押すんじゃないゴリ!隊長の話を聞くゴリ!!」

「そんなこと言っている場合じゃないゴリ!逃げるんだゴリ!!」

ゴリラたちはギャーギャー言っている。

そのとき、飛行艇の下部に搭載されている機関銃が、こちらを、向いた。

『ダダダダダダダダダ!!!!』

「ウッ!!」

「ゥ゙ギャァ!」

ゴリラたちはバタバタ倒れていく。

「クソ!人間どもめ・・・」

ゴリラ隊長は地面から飛行艇を睨んでいる。

「ヒューマン連合の国旗・・・」

「あれには、錬成人間が乗っているゴリな・・・」

―――「親父はどこだ」

悟李は父親を探していた。

「親父なら、この襲撃を収められるはず・・・」

「ッ!!」

『ダダダッ!!!』

機関銃がこちらを射撃してくる。

「・・・!!親父!」

隊長、つまり父親を見つけた。

人の波をかいくぐりながら進む。

「みんな逃げるゴリー!!」

軍のゴリラが避難を呼びかけている。

「親父・・・!」

群衆を抜けた。

「おお、悟李ゴリか。」

「なに落ち着いてるんだよ!どうすんだ!これ!!」

「そうゴリねぇ・・・」

「おいってば!!」

『ダダダダダ!!』

機関銃の音が響く。

「姿勢を低く保つゴリー!!」

ゴリラたちは混乱している。

「もう、お別れなんだゴリ。」

「は・・・?!親父、なにいって・・・」

『スッ・・・』

「親父!!それは・・・!」

「ああ。悟李。これはゴリラ王国に伝わる秘宝、VA7(ヴァ・ナナ)だ。」

その秘宝、ヴァ・ナナは、人間の世界で言う、バナナである。

単にバナナなのだが、いつしかゴリラはバナナによって異次元のパワーを引き出すように進化した。

バナナ(ヴァ・ナナ)はゴリラが吸収するだけで、人類が使役しうる兵器以上のパワーを瞬間的に顕現させることができる。

しかしその代償に、使用したゴリラは、死に至る。

そのこともあり、人間はヴァ・ナナを一本残らず焼却処分した、はずだった。

「なんで親父が持ってんだ・・・?」

「国王から任されたゴリ。本来は使う必要はなかったゴリが。」

「親父、やめろ!死ぬことになるんだぞ!」

「いいんだゴリ。お前が生きれるなら。」

「じゃあ、これからの国を、頼むゴリ。」

「お前は、生きていてくれゴリ。」

「やめろッ・・・!!」

『カッ!!!!!』

あたりは閃光に包まれた。

「親父ぃ・・・」

「「「ウォォォォォォォ!!!!」」」

ゴリラ隊長、悟李の父は、巨大なゴリラとなり瞬間、口から光線を発射した。

『ビカッ!!!!』

『シューゥインッ!!!!』

光線は飛行艇を半分に切り裂いた。

『ドドドドドドドドォン!!!』

切り裂いた箇所を中心に、飛行艇が爆発していく。

『ゴウンゴウンゴウンゥ・・・』

飛行艇が墜落していく。

『ズウン・・・」

巨大化したゴリラ隊長には、まだ仕事が残っている。

「ここが年貢の納め時。待ってイロ。人間。」

『シュンッ!!』

「親父!!!待て!!!」

「親父・・・」

悟李は唖然としながら、惨事を眺めた。

「親父、これでよかったのか・・・?」

墜落した飛行艇、人間の亡骸もある。

「いつから人間と争っているんだろうな・・・」

『チューチュー』

「・・・。モニモニ、お前、生きてたのか・・・。」

ハムスターが悟李の足元にいた。

「お前は、生きていてくれよ。」




――――――しばらくたった後。

悟李は人間とゴリラとの争いを平定し、平和を実現した。

「おい、お前知ってるか?」

「なんだゴリ?」

「この国の元首、ずっとハムスター肩に乗せてんの。」

「ほら、ほらこの写真。」

「えぇ?国会にハムスターっていいんだゴリか?」

「いいんじゃね?」


2023年9月30日

GoRiLive出版