ないものねだり。
自分にはないものを望み、満足しない。自分が持っているものは、そんな大したものじゃない。持ってるだけ。YouTuberが持ってるもの、芸能人、あのアーティストが持ってるもの、素敵に見える。でも、自分が手に入れた途端ゴミになる。ないものねだり。
今は人が居なくなった元住宅街に、一人のセールスマンがやってきた。
ピンポーン。
ギギ、ギギギ、ガガ。
ガチャ。
穴が空いたドア。
意味がないように感じられるドアをゆっくり開ける男性。
「どなたですか。」
「モノセールスです。よかったら、何かモノを買いませんか?お安くしますよ。」
「このご時世にモノなんていりますか?うーん、何か素晴らしいものだったら、考えます。」
「左様ですか!ありがとうございます!」
「考えるって言っただけですよ。」
「それでも構いません。ささっ、ご覧ください。」
セールスが風呂敷を広げると、そこには幾つかの道具が現れた。
高級オイル、何に使うんだかわからないパイプ、キャラメル、現金、CD、ギターなどがあった。
「うーん、色々あるなぁ。あっ、昔見たRbTubeでQueenCowが使ってたギター!これは欲しい!いくらですか?」
「5千グリードになります。こちらのギターとは、お目が高い。これはおっしゃる通り、QueenCowが使用していたものと同じモデルです。しかし、ご存知の通り我々では弾くことも、楽しむこともままならず、ゴミとなってしまっているのです。どうですか、5千グリードで。」
財布を見ると、そこには結構コインや紙が入っていた。
「それなら、買います!お金はあるので!」
男は支払いを完了した。
「確かに。では、こちらのギターを差し上げます。どうぞ。」
「いやぁ、ギター買っちゃったよ。えへへ。」
「では、またご贔屓に。」
少し笑みを見せて、セールスは歩みを始める。
扉をバタンと閉める。
「いやー、またいらないもの買っちゃったよ。でも、暇だし練習でもするか!」
男は、ギタリストになり、バンドに加入し、世界一のアーティストになった。
それは素晴らしいギターの腕があってこそだが、実は世界にバンドが一つしかなかったためというのは秘密だ。
888文字
2023/12/13執筆
2023/12/13掲載