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2025年、新宮市は大きな節目を迎えている。市長選挙が10月26日に迫る中、4期16年にわたり市長を務めてきた田岡実千年氏が次期市長選の不出馬を表明したのだ。人口減少と少子高齢化が急速に進み、財政規模も限られるなかで、「どのように持続可能なまちを築くのか」という問いがかつてなく重くのしかかっている。今回の選挙では、新人の2候補が立候補を表明している。野中あきのぶ候補と上田かつゆき候補である。
両者の政策は、一見すると似た部分も多い。「子育て支援」「高齢者福祉」「防災対策」「地域経済の再生」など、地方都市が共通して抱える課題に向き合う姿勢を示している。しかし、具体的な手段や財源の考え方を見ると、両者のアプローチには明確な違いがある部分も多い。
本記事では、両陣営が掲げる政策を読み解き、実現可能性や財政的裏付けまで含めて比較・分析を試みる。単なるスローガンではなく、「誰が、何を、どう実現するのか」を問う視点から、新宮市の未来像を描き出してみたい。
以下では個々の政策についてかなり事細かに言及している。時間に余裕がない方や手軽に2人の政策の違いを知りたい方などは第3章から読み始めることを推奨する。
野中陣営は、「7つの『つくる』」をキーワードに、子ども・高齢者・若者・災害・観光・デジタル化・財政と幅広い分野を横断する政策群を掲げている。ひとつずつ丁寧に見ていこう。
・雨の日でも子どもが遊べる木と触れ合う屋内施設を整備
・ 出産祝い金の増額、小中高の入学祝い金制度を新設
・ファミサポ利用のハードルを下げ、さらに身近な子育て支援へ
・子ども食堂や多世代交流の場を応援
最初に掲げるのが、子育て支援策の強化だ。
出産祝い金の増額、小中高の入学祝い金の新設といった直接支援を明示している。具体的には「出産祝い金を5万円増額」「小中高入学時にそれぞれ5万円支給」としており、そのためには年間約3160万円の財源が必要である。(実際は諸経費を含むのでそれ以上)
2025年現在、これは隣接自治体と比べても手厚い部類に入る。この政策は、明らかに田岡市長の「子育てするなら新宮市」の路線を踏襲した、近隣市町村との子育て世代の奪い合いに勝つための政策といえよう。
加えて、現在使われていない施設を用いた「木と触れ合う屋内施設(木育広場)」の設置や、ファミサポ利用の手続きの緩和・サポート会員の増加に加え、子ども食堂への補助拡充・周知など、コミュニティ支援にも目を向けている。
子ども食堂に関しては、既存の制度下では、「新宮市こども食堂推進事業補助金 (団体あたり月1.5万円)」が存在しているため、それの拡充や社会福祉協議会などと連携した支援策の実行が考えられる。
・医療センターの医師・看護師の働きやすい環境を整える
・地域の医師不足対策として、実習先マッチングを行う窓口 を設置し、全国から医学生・看護学生を受け入れて、未来の医療人材を確保する
・慣れ親しんだ家でも安心して医療を受けられるように、市内全域で「在宅医療」を推進
・高齢者タクシーチケットの拡充
この項では、医療や高齢者の生活支援についての政策が述べられている。
ICTの導入により、事務作業などを効率化することで職場環境を改善し、新宮医療センター職員の離職を食い止めようとするほか、医師不足解消のために、実習先のマッチングを行う窓口を設置し、和医大等の医学生を受け入れ、将来的な医師・薬剤師等の確保を目指すようだ。また、既存の「黒潮医療人養成プロジェクト」との連携にも積極的である。
そして、高齢者タクシーチケット事業についても拡充を表明している。高齢者タクシーチケット事業(正式:高齢者等タクシー・バス券交付事業)とは、昨年度から開始された、運転免許の返納を促進し交通安全を図るため、代替として運転免許を持っていないまたは返納したことを市に申告した75歳以上の高齢者及び免許を返納した75歳以上に対して、審査の上で年12000円分のタクシー・バス券を交付するという事業である。
本事業には、昨年度2482人 の申し込みがあり、今年度は予算として今年度3259.7万円が計上されている。配布額を倍増した場合、年間約3000万円の追加負担が見込まれる。
本事業は高齢者の免許返納と外出を促進させ、健康寿命の延伸に寄与するが、新宮市の75歳以上人口の約45%にあたる人数の申し込みがあったこと、和歌山県の高齢者免許保有率は60%強であること、75歳以上は免許返納が自己申告でよい点から、免許を保有していながら保有していないと申告した人への交付が相当数行われている可能性もあり、費用対効果の点で慎重な検討が必要ではないかと考える。
・新宮×大学 学びの拠点づくりと大学誘致
全国の大学とフィールドワークワーク協定を結び大学生を受け入れる
連携を深めて、未来の大学誘致へと発展させる
・地元で働きたい人と企業をマッチング
・空き家を改修し、住宅を提供
若者向けの政策としては、まず大学との協定の締結を通じて、若者が地域に関わる機会を増やし、将来的な大学誘致を目指す政策を提案している。
背景として、本地域では兼ねてから大学設立構想があり、現在田辺市が「田辺市高等教育機関(大学)設置可能性調査検証結果報告書」 にて旧庁舎への設立を大きく後押しする立場を明らかにしている。
また、野中候補は「くまのビジョン」という熊野地域の有志メンバー及び本大学設立構想を提起した財団によって構成されているグループのメンバーであることから、野中候補は将来的に本構想を新宮市で推進していく考えが読み取れる。当構想が実現されれば若年層の流出や魅力的な雇用の少なさといった新宮市の大きな課題の根本的解決に繋がるだろう。
一方で、田辺市の報告書では定員の充足に関して楽観視がなされているが、新宮市は人口面やアクセス面で明らかに田辺市より厳しい状況に置かれている。このことから誘致の実現可能性は決して高いとはいえないだろう。
そうはいったものの、野中候補が直接言及しているキャンパスを置かない形の大学との連携は比較的容易といえる。現在新宮市は東京大学文学部と連携協定を結んでおり、また野中候補自身も近畿大学の学生の受け入れを行っている。近畿大学とは初代総長の出身が新宮市である縁もあり、継続的な交流が見込めるのではないか。
また、「学びの拠点づくり」と連動して、学生やU・Iターン希望者を対象にした短期・長期の職場体験ができる仕組みの構築も公言。空き家を改修してシェアハウスやコワーキングスペースとして再生し、受け入れた学生や移住希望者に提供するビジョンを示した。
総評として、新規の若年層との関係強化や新宮市に住むことを考えている層の取り込みという面において非常に効果的な政策であり、実現も可能な政策であると考える。
しかしながら、「新宮出身の新宮で働きたい人」を増やす直接的な政策がないことが気になった。若者の定住人口を増やすにあたって最も働きかけるべき層は言うまでもなく「地元出身の若者」であろう。
新宮市人口ビジョンにて紹介されている、市内高校生を対象にしたアンケート調査「住みたくない理由」1位は「この地域には就職先が少ないから」 (39人/80人)であるし、市内に進学した大学生対象にしたアンケート「必要な施策」において、「良質な住宅を多く供給する」と回答したのは30人中1人もいなかった。
これらの調査結果を踏まえると、新宮市に魅力的な雇用を創出するための直接的な政策についての言及がなかった点について政策意図と新宮市の現状のズレが感じられる。
・耐震改修や耐震ベッド等の補助の充実
・津波避難タワーの設置
・衛星電話や衛星インターネットなど確実な通信手段の確保
耐震改修や耐震ベッド等への補助制度は現時点でも存在するが、すでに定員充足により終了しているため、その充実はニーズある政策といえるだろう。
また、市民からの関心が厚い津波避難タワーの設置についても推進する方針だ。県から避難困難地域に指定されている王子・熊野地地区には既に整備計画があるため、タワー建設は三輪崎地区になるか。
尾鷲市の事例を参考にすると、一基あたり約7600万円が必要で財政負担は軽くない。また、ターゲット層を考慮すると昇降手段が階段のみでは不十分であり、600人規模の地域をカバーする収容人数が要求される点、耐用年数を考慮すると、さらに財政支出が大きくなる可能性も考えられる。
とはいえ、この政策は命を守るための先行投資という側面が大きく、単なるコストパフォーマンスで是非を論じるのがナンセンスなテーマでもあることの理解が必要だ。
衛星通信(Starlinkなど)の導入も盛り込み、防災面でのデジタル化も意識している。 FM新宮での討論会では避難所での被災者向けのネット環境の整備についても言及していたため、こちらもかなり大規模な財政支出が予想される。
・新宮に宿泊する観光客を増やす
・新宮城跡をはじめとする文化遺産の整備
「旅先納税」制度の導入は、観光客の増加と税収の増加を同時に見込める興味深い政策だ。(旅先納税:旅前・旅先でスマートフォンから簡単に寄附ができ、返礼品として寄附額の一部を導入地域の加盟店で利用可能な電子商品券という形で返礼品として即時に受け取ることができるふるさと納税の仕組み)
また、ホテルや飲食店での言語サポートの強化も掲げている。歴史遺産の整備など観光振興策も豊富だ。特に丹鶴城・神倉神社・速玉大社・新宮城跡・西村記念館を一体的に整備する「文化・記念館ゾーン」構想は、地域資源を活かした、ストーリーある体験型の観光のモデルとして注目できる。
総じて、既存の資源を生かしてより観光でお金を稼ごうという意図が明確である。 しかしながら、特に文化遺産の整備は多額の予算と長期間の計画を要するだろう。実現可能性については未知数である。
・観光客から徴収する観光税を、市民にプレミアム商品券やデジタル商品券として還元
・AI分別カメラの導入により24時間対応の常設エコ広場を実現する
・ スマートフォンアプリを活用し、防災・医療など、あらゆる分野で未来を見据えた行政サービスを進める
立候補表明時に大々的に掲げ、最も議論を呼んでいるのが、「ありがとうコイン」という地域通貨構想である。市民にデジタル商品券月1,000円相当を発行し、財源は後述する観光税で補うとしている。コミュニティ強化や地域内経済循環のほか、後述するアプリを導入するインセンティブとしてキャッシュレス化を促進する。
コスト面に目を向けると、配布分だけでもコストは年間約3億円にのぼり、これは新宮市の一般会計の1%を超える大規模な支出となる。また、すでに地域通貨を実装している宮城県名取市では、保守管理費としてさらに年間5000万円の予算を計上している。そのため、本政策は単なる「バラマキ」であり、費用対効果に乏しいと批判する見方もある。
エコ広場に関しては、正直AI関係ないのでは?と考えている。野中候補によると、AIカメラによりごみを自動判定して分別を容易にするとのことだが、果たして今24時間エコ広場が実現していない理由は分別の難解さが理由だろうか。不法投棄に関しては、監視カメラが十分普及した今でも24時間エコ広場が実装できていない現状が対策の困難さを示している。もちろん実装への需要はあるだろうが、実現可能性の観点から私は懐疑的な意見を持った。
地域通貨のところでも言及したスマホアプリ活用であるが、具体的には郵送される情報物をオンラインに移行したり、行政サービスを一つにまとめた「デジタル窓口」を整備したりといった点が言及されている。新宮市では、あらゆる郵送費の総和として6600万円が計上されており、この1/3でも削減できれば大きな財源として換算できるだろう。また、行政手続きのインターネット化・自動化が進めば、市民の厚生のほか、人件費の削減も見込める。
・観光税の導入
・ふるさと納税額を倍増!
・ AIを活用した市役所業務の効率化で経費削減
・ カーボンクレジットの導入
野中候補は、前述の自身の看板政策の財源として観光税に言及している。しかしながら観光税は3億円超の財源を生むことはできないだろう。
討論会で野中候補本人もおっしゃっていたように、宿泊税では現時点では多くても8000万円程度(それでも非常に多いが)しか見積もることができない。また、討論会では上田氏から、オーバーツーリズムでないのに宿泊税を導入するのは目的税ではないかとの批判もあった。
ふるさと納税の拡充、AIによる業務効率化、カーボンクレジット活用などを挙げているが、どれも「やってみないとわからない」類の税収であり、安定的な財源として数えるには不安が残るのではないか。野中候補は民間視点からのコストカットを実施する旨の言及をしており、また討論会ではAIによる業務効率化で年1000万円の歳出削減が可能であるとの見解を述べられたが、その根拠を知ることはできなかった。新規事業の財源確保には、さらなる精査が求められるだろう。
また、この場でカーボンクレジットの概要について説明する。カーボンクレジットとは、平たく言えば温室効果ガスの吸収量を取引するシステムのことである。基準値以上に温室効果ガスを排出した企業は、その差分を他者の吸収量の購入という形で相殺する必要がある。新宮市は広大な面積の森林を所有しているため、その森林の温室効果ガス吸収量を売ることで財源を確保できるという仕組みだ。
上田陣営は、よりコンパクトに「市民と歩む5つの道」を掲げている。野中陣営に比べ、項目は少ないが、方向性は明快で、「短期で目に見える変化を出す」ことを意識した構成となっている
・小学校・中学校・高校入学時に5万円の祝金を支給
・ 18歳祝い金30万円の支給
小中高校入学時に祝金5万円、さらに18歳の節目に30万円を支給するという、野中氏と似てはいるがさらに大胆な支援を打ち出している。
年間9,000万円規模の予算を見込んでおり、財政的にはかなり挑戦的だが、子育て層へのメッセージとしては強い。出生数減少が止まらないなか、子育て世代への大規模な直接的支援で新宮市の存在感を示そうとしている。
また、単なる金銭的支援にとどまらず、18歳の祝い金は子ども自ら手続きを行うことで、自立の第一歩のきっかけとしての教育的意義も含んでいるという。
しかし、若年人口の維持の観点から、新宮を出ていき帰ってこない若者にも30万円を配るのは効果的でないとの指摘もある。当政策の実施においては、Uターン者数を増やす政策もセットで実施することがマストといえるだろう。討論会では、大学等に進学し市外へと転出した後新宮に戻ってきた人に対して奨学金を肩代わりする政策も実施するとの言及があった。
祝い金政策で18歳以下人口を増やし、奨学金肩代わりで地元に戻る労働人口を増やす。そしてその増えた労働世代が金銭的支援で子どもを産みやすい環境をつくる...
この切れ目ない支援で新宮市の人口減少に歯止めをかける算段だろう。
・高齢者タクシーチケットの支給を倍増
・巡回ジャンボタクシー(コミュニティバスの実現)
シニア層の独居ゼロへ
・健康寿命を延ばすための運動教室の新設
本項では、一貫してコミュニティ強化による高齢者の健康寿命増進の意図が感じられる。
高齢者タクシーチケットについての批判は、野中候補の際にも書いたが、こと上田候補の政策においては、その意図をくみ取ることは容易だ。のちの「医療・介護充実プラン」の項で検診を促す政策があるように、他者との関係性を強化することで要介護予防や認知症予防を目指す。
巡回ジャンボタクシーに関しては、現在市内で運行している小型バスをワンボックスカーに変更して、よりきめ細かい路線の実現を目指すというものだ。上田候補は「交通不利地域ゼロ」を掲げている。ただし、タクシー券交付事業との支援対象や目的の重複が懸念され、政策の合理性が問われる。
討論会では「健康シェアハウス」や子ども食堂を充実させて、地域だれでも食堂として世代間交流の場にするとの言及もあった。
また、「健康寿命を延ばす運動教室の設置」も掲げており、健康増進により医療費削減を目指す意図が見える。
・避難タワーの設置や避難所のエアコン設備を実現
・防災対策の機能強化を図るため、危機管理室を新設
・自主防災組織の再構築を促進
この項では津波避難タワーの設置、避難所のエアコン整備、危機管理室の新設、自主防災組織の再構築など、防災対策を明確に打ち出している。
そしてこれらの政策は“1期4年で実現”と明確に位置づけており、上田候補肝いりの政策であるといえる。
特に危機管理室の新設は、組織的に防災力を底上げする方向性として現実味がある。
討論会では、三輪崎、佐野、王子、熊野地への津波避難タワーの設置と避難経路の整備を公言している。野中候補の際にも触れたが、避難タワーはその性質から多額の予算を必要とし、またこの構想では県が打ち出している指針以上の整備を行うため、予算確保には険しい道のりが予想される。
とはいえ、繰り返すが、こうした政策は命を守るための先行投資という側面が大きく、単なるコストパフォーマンスで是非を論じるべきでないのも事実である。
・安心して受診できるよう医療センターの改革を図る
・予防医療を促進させるため特定健診を受診された方には商品券の配布
・医療・介護人材の不足、働き方・業務改善改革への対応
野中候補と同様に、上田候補もまた医療センターの改革に言及している。医療・介護人材の不足に関しては、ICTなどの導入で効率性を上げて対応するほか、討論会にてなぎ看護学校の公立大学化を目指す旨の発言も飛び出した。
現在のなぎ看護学校は、1学年40名を定員とする看護師育成を目的とした専門学校であるが、過去4年連続で定員を割っており、2025年度では入学者が21人と厳しい状況にある。来年度から社会人枠を新設するなど入学者確保に四苦八苦している状況だ。このような状況下でなぎ看護学校を大学化できるかというと、かなり難しいと言わざるを得ないのではないか。
一方で、慢性的な医療人材不足である新宮市において自市でそれを育成するなぎ看護学校は一縷の望みとも言え、入学者のV字回復に向けた動きは必須といえよう。
・市内で店舗開業や事業を起業しやすいようにスタートアップ支援(上限50万円)を実現
・小規模事業者の事業継続のため貸付制度(上限30万円)を創設
・市民のための文化芸術振興
・観光振興と地域経済を結び活性化
・子どもたちのスポーツ振興・教育を充実
スタートアップ支援(上限50万円)や事業継続のための貸付制度(上限30万円)など、小規模事業者支援を前面に打ち出す。スタートアップ支援に関しては、「にぎわい支援事業補助金(上限10〜30万円)」の現行制度と同等以上の規模であり、新宮市での事業参入障壁を下げ新規開業者を増やす目的であろう。地域経済に即効性のある対策といえる。
ただし、平時の貸付制度は「延命措置に過ぎない」との見方もできる。根本的な経済循環をどうつくるかという視点が欠ければ、効果は一時的にとどまるだろう。
文化振興に関しては、上田候補が長年新宮の伝統文化と親しくあり続けた点をアピールしながら将来の保全・振興を目指すとしている。高野坂や丹鶴城などの保全にも触れている。
・新宮市の事業の徹底的な見直し
・不要公共用地の売却による売却益や固定資産税の増収を図る
・働き方改革で残業ゼロを推進し人件費の抑制を図る
・基金運用による運用益
・ふるさと納税の増収
上田候補は新税の導入には言及せず、既存の仕組みから無駄を省き、効率よく収益を得ることに注力した財源確保を公言している。
新制度を導入しない分野中候補と比べて実現可能性は高いと言えるだろう。
一方で「事業の見直し」「不要地の売却」「基金運用」「職員残業ゼロによる人件費削減」などは年間いくらという見通しの立ちづらい財源であるともいえる。
また、「残業ゼロ」に関しては、サービス残業が増え実質的な待遇が悪化する可能性もあるため、ICTの導入や事業の見直しにより職員の業務量を削減することが必須となる。
この章では項目ごとに両者の政策を比較しながら見ていく。
野中候補
出産・入学祝い金(最大20万円/人) ・大学との連携、誘致
上田候補
入学祝い金・18歳祝い金(最大45万円/人) ・なぎ看護学校活用
野中候補
医療職場環境改善・大学との連携・在宅支援
上田候補
医療職場環境改善・なぎ看護学校の活用・コミュニティ強化・予防医療
野中候補
津波避難タワー・避難所の待遇改善・耐震支援・ICT活用
上田候補
津波避難タワー(4棟)・避難所の待遇改善・組織改革
野中候補
地域通貨「ありがとうコイン」・旅先納税・「文化・記念館ゾーン」 ・職場体験マッチング
上田候補
スタートアップや小規模事業者支援
野中候補
窓口デジタル化・ICT導入
上田候補
事業見直し・残業ゼロ
野中候補
宿泊税・ふるさと納税・経費削減・カーボンクレジット
上田候補
事業見直し・不要公共用地売却・残業ゼロ・基金運用・ふるさと納税
あえて言うなら、野中候補は「構想力重視」、上田候補は「実行力重視」である。
野中候補は多様なテーマを盛り込み、また新制度の導入に積極的である。財源にも新税の導入を公言している。斬新な手法で地域の変革を目指すが、財源の確保と実現可能性に不安が残る。特に地域通貨とアプリ構想は、運用コストが見合わない可能性がある。討論会で上田候補から指摘があったように、政治経験のなさによる財政や政治システムへの理解度の低さがネックとなるか。
上田候補は一貫した意図の下での既存の制度や施設の充実を多く掲げ、短期実現を打ち出す現実派路線といえる。討論会にて野中候補から指摘があったように、即効性はあるが長期戦略に乏しい部分がある。
先日上田候補が自身のInstagramにて以下の投稿をしました。
内容としては、従来の公約のほかに、一人一万円の緊急支援金をはじめとした大胆な金銭的な支援策が多く追加されています。その予算規模は追加で約3億円。野中候補が掲げる「ありがとうコイン」とほぼ同等です。
単刀直入に言うと、私はこれは「選挙のためのバラマキ」ではないかと思います。支援対象や政策目的の不明瞭さが気になり、以前の一貫した意図の見える政策と比べると少し毛色が違うように見えます。また、大規模な金銭支援を追加で打ち出したのに対して追加の財源確保に関する政策は打ち出されていない点が気になります。
私は野中候補を「構想力重視」、上田候補を「実行力重視」と評し、上田候補の公約を現実的な成果を確実に出すことに適していると了解していましたが、今回のように、適切な検討がなされているか不明な政策を今後打ち出し続けていくのであれば、その評価に疑問符が付くこととなるでしょう。
第1章の3において、野中候補がくまのビジョンの代表であるという記述をいたしましたが、こちらは誤りであり、くまのビジョンは代表制をとっていませんでした。また、第2章の「財源」において、野中候補が既存のお金の流れの見直しを行う旨の公約を打ち出していないと誤読させる表現がありました(「上田候補は野中候補と異なり新税の導入ではなく既存の仕組みから無駄を省き、効率よく収益を得ることに注力した財源確保を公言している」)。よって上記2点を修正いたしました。
ご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした。
新宮市の未来を決めるのは、候補者の肩書きでも、政党でもない。「政策の中身」こそが判断基準であるべきだ。
人口25,000人の小さなまちは、全国の地方都市と同じように「縮小の時代」を生きている。だが、縮むからこそ、「どう縮むか」を選べる。
“選挙”はその最初の一歩であり、政策を読むことは、市民自身が未来の設計者になる行為なのだ。