緊急事態宣言期限の一ヶ月延長が予定される中で,東京の感染者数は減少傾向を示していたが,5月になったら一転して2桁から3桁に戻った.一方,5月2日のニュースでは,レムデシビルが海外での承認を前提として日本でも特例承認の手続きが開始されることを報じていた.それ以外にも,数個の既存薬物が新型コロナ治療薬の候補に挙がっている.その中で,ファビピラビル(アビガン)については,2014に「話題のピラジン系医薬品」として紹介したこともあり,抗ウイルス薬として何となく記憶に残っていた.定年退職により薬学部を離れ時間が経つと,構造式まで遡って考えることはほとんどなかったが,今回の特例承認は候補薬物の構造式を調べてみようという気にしてくれた.以下は有力な候補薬物の構造である.興味のある方は眺めてみてほしい.各薬物の詳細については薬物名をクリックし.引用資料(Wikipedia)を参照いただきたい.添付文書(医薬品使用者や医師、薬剤師向けの製品情報を記載した書面,薬事法に基づいて作成された公文書)の存在するものについては閲覧できるように配慮したが,当然のことながら新型コロナに関する最近の情報は記載されていない.
ロピナビル・リトナビル (カレトラ)
クロロキン(有効性はないと発表した論文は撤回された)
ヒドロキシクロロキン (プラケニル)(有効性はないと発表した論文は撤回された)
ファビピラビル (アビガン)
ナファモスタット (フサン)
シクレソニド (オルベスコ)
吸入ステロイド喘息治療剤,喘息抑制作用,抗炎症作用
候補薬物のウエブ検索の過程で,創薬支援AIシステムを利用して,分子や遺伝子に関する論文を解析し,約450種の既存薬の転用候補が見つかったという記事が目にとまった.この分野での研究の進展を期待したい.
イベルメクチン
イベルメクチン B1a
イベルメクチン B1b
エバーメクチン
追記
クロミプラミン
九州大学大学院薬学研究院の西田基宏教授や国立医薬品食品衛生研究所(川崎市)などの研究グループが、抗うつ薬「クロミプラミン」が新型コロナウイルスの動物細胞(宿主細胞)への侵入を妨げる効果があることを突き止めた。
2021年03月22日 14:10 引用元
追記(2021.4.23)
バリシチニブ (関節リュウマチの治療薬)
国内で新型コロナウイルスの治療薬として認められるのはレムデシビルとデキサメタゾンに続き, 3例目です.
アクテムラ
一般名 トシリズマブ(遺伝子組換え)
薬効分類名 ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体
大阪大学の岸本忠三特任教授らのグループと, 中外製薬が開発した関節リウマチの薬. 免疫の過剰な働きによる炎症を抑える効果がある.
2021年6−7月,FDA承認, WHO推奨
追記(2021.9.22)
【研究成果】新型コロナウイルスの増殖抑制する化合物を開発 ...(広島大学)
参考資料
1年後の感染状況(2020.8.22)
2020年5月2日
2021年8月21日
(2020.5.3)