航空機の部品には、チタン合金というとても強い素材がよく使われます。この素材は、圧延という加工方法で作られており、特定の方向に強さが変わる性質を持っています。そのため、どの方向に削るかによって、表面にかかる力や、長時間使ったときの強さが変わることが考えられます。この研究では、圧延されたチタン合金を、圧延の方向に沿って削る場合と、垂直に削る場合で、表面に残る力や疲れやすさ(疲労強度)を調べて、どの削り方が一番良いかを見つけることを目指しています。
穴あけ加工は、金属を削る作業の中でも特に重要な部分で、全体の3割以上を占めると言われています。しかし、加工中にドリルの先端が穴の中に入り込むと、切りくず(削った金属のかけら)が詰まりやすくなります。この切りくずが詰まると、ドリルの刃が傷んでしまうことがあります。さらに、加工中にドリルが微妙に振動する「びびり振動」と呼ばれる現象が起きることがあります。この振動によって、加工した金属に細かい傷がついてしまい、その金属の強さが弱くなることがあります。こうした問題が起こると、作業の品質が落ちたり、生産効率が悪くなったりします。そのため、これらの問題を解決するためには、ドリルの切れ味や性能を大幅に向上させることが重要です。
この研究では、金属を削る加工方法を使って、仕上げた面にかかるひずみをコントロールし、材料の強さを高めようとしています。ひずみとは、材料に力が加わったときに内部で起こる変形のことです。まず、切削加工によって材料に「圧縮残留応力」という力が残ると、材料の中でひび割れが広がるのを防ぐことができます。これにより、材料の強さが増すことが期待されます。次に、仕上げた面を熱処理することで、切削でできたひずみをうまく利用して、腐食に強い新しい材料の構造を作り出すことができると考えています。このようにして、材料の表面の強さや耐久性を向上させることを目指しています。
自動車の足回り部品(鋳造されたもの)に穴を開ける作業では、非常に正確に加工しながら、効率よく作業を進めることが重要です。これを達成するために、工具がすり減らないようにしたり、穴をきれいに開けられるように、加工時にかかる力を調べます。また、コンピュータを使って加工中の様子をシミュレーションし、見える形で確認することで、より良い加工方法を見つけることを目指しています。
この研究では、3Dプリンタで使われる金属材料がどれくらい強いかや、どんな性質を持っているかなどを詳しく調べる方法を見つけることを目指しています。3Dプリンタで使う材料のことを「積層造形材料」と呼びます。材料の強さや性質を調べる方法はいくつかありますが、私たちは「切削」、つまり材料を削ることでその性質を評価しようとしています。