昨年暮れの熊本日日新聞に以下の記事が載った[オンライン記事の日付 2019/12/30 14:00 (JST))].
熊本市は、市街地の地下を走る立田山断層と水前寺断層による地震の危険度を探るため、早ければ来年度にも独自の地質調査を実施する検討を始めた。
立田山断層は北区楡木から西区小島へ走る約16・7キロ。1889年の熊本大地震の一因とされている。2016年の熊本地震後、北東方向に2・4キロ伸びているのが確認された。水前寺断層は熊本地震後に発見。中央区渡鹿付近から東区沼山津付近まで約7キロにわたり、複数の断層線が走っている。
立田山断層については1996年、県が一部の地質調査をしているが、地震の発生周期など詳しいことは分かっていない。市は水前寺断層も含め、国に調査を求めていたが、対象となるのは長さ20キロ以上の主要活断層のため、実現していない。
市は「二つの断層とも市街地を走っており、地震が起きれば甚大な被害が出る可能性がある」としており、地質調査を検討。今後、大学の専門研究グループに依頼し、ボーリング調査などの結果を踏まえて分析する方針。
市危機管理防災総室は「熊本地震後、両断層に関する報道などで危機感を持った。断層の危険性を把握した上で、防災計画に反映させたい」としている。(高橋俊啓)
(2019年12月30日付 熊本日日新聞朝刊掲載)
次の記事は2020年2月14日の朝日新聞朝刊の記事の一部である.
熊本市中心部の地下を走る活断層について,市が独自調査に乗り出すことを決めた.調査するのは「立田山断層」と,2016年4月の熊本地震後に新たに見つかった「水前寺断層」.
中略
危機管理防災総室によると,水前寺断層は同市中央区渡鹿付近から同市東区沼山津付近まで南北約7キロの活断層,付近には県庁や県警,市消防局などがある.
立田山断層は,同市北区楡木から白川河口に近い同市西区小島までの東西約16.7キロにわたる活断層と推定され,熊本城付近を通っているとみられる.このうち約2.4キロの断層が熊本地震後に新たに確認された.1995年度の県の調査でも,当時推定されていた14.3キロの3割ほどしか確認されていなかった.
後略
2020年2月14日 朝日新聞に掲載された図をスマホ撮影したものである.
水前寺断層は立田山断層と布田川断層を繋ぐように横たわっている.
以下の図−1は,国土交通省 国土地理院の地図が公開している「新たに確認された活断層(立田山断層,水前寺断層,益城断層)」の位置を示す地図である(部分拡大図および全体図).「新たに発見された活断層」は赤色の細線で描かれている. 朝日新聞画像の原図と思われる.
図−1.参考資料②には断層の番号,名称を記載した地図が提供されている.その地図データの部分拡大図
水前寺断層西側拡大図(参考資料①),
新聞報道によると,熊本地震後に見つかった立田山,水前寺断層は規模が小さいため,国の補助による調査対象にはならないとのことである.しかし,水前寺断層に近接して複数の断層が存在し,それらと連動する可能性がある上に,水前寺断層近くには県や市の重要な施設が構築されていることを考慮すれば,断層規模に縛られない国主導の調査が実施されるべきではないだろうか.
参考資料
①地理院ホーム > 地図・空中写真 > 主題図(地理調査) > 活断層図 九州地域整備範囲.それぞれのアンダーラインに対応したアクセスが可能.活断層の番号や名称は記載されていない.
② 地理院ホーム > 2017年 報道発表資料一覧 > 布田川・日奈久断層帯の2万5千分1活断層図「阿蘇」「熊本 改訂版」を公開 > 資料2 2万5千分1活断層図「熊本 改訂版」の概要|国土地理院 それぞれのアンダーラインに対応したアクセスが可能.地図のほかに,熊本県に存在する活断層の一覧(説明付き)が収載されている.
③ 2万5千分1活断層図「熊本」について(国土交通省 国土地理院) PDF阪
④ 熊本地震に伴う地殻変動 −水前寺付近の地表断層群と阿蘇谷での ... 熊本地震に伴う地殻変動 −水前寺付近の地表断層群と阿蘇谷での大きな水 平変位− 2016年熊本地震では地表の広範囲で地殻変動による変位が生じており、国土地理院では陸域観測技術衛星 2号「だいち2号」(ALOS-2)のSARデータを用いてその変位を面的に検出している。