たんぽぽコーヒーの成分
cinnamic acid(桂皮酸)の二重結合は「トランス配置」
よく見ると,桂皮酸部分の二重結合の配置がシス型になっている.有機化学者としてはシス型は珍しいので確認するためにクロロゲン酸で検索すると,次の記載がある.
クロロゲン酸(クロロゲンさん、chlorogenic acid)は、3-カフェオイルキナ酸 (3-caffeoylquinic acid) とも呼ばれ、コーヒー酸(caffeic acid)のカルボキシル基がキナ酸(quinic acid)の3位のヒドロキシ基と脱水縮合した構造を持つ化合物である。
念のためケンブリッジX線解析データベースを検索すると.クロロゲン酸そのものは登録されていないが,脱水縮合する前のquinic acidおよびcaffeic acidは別々に解析され登録されていた.以下に示すようにcaffeic acidはトランス配置である.
(-)-Quinic acid
caffeic acid
クロロゲン酸(クロロゲン酸,chlorogenic acid)は以下の化合物が脱水縮合した構造ということになる.
cinnamic acid(桂皮酸)部分の二重結合をトランスに修正.
クロロゲン酸そのもののX線解析は行われていないので,計算構造を求めてみた.分子軌道計算(MOPAC),分子力場計算(MMFF94a)を次図のとおりである.シス型の場合は右端の構造が予想される.
MOPAC
MMFF94a
結晶構造配座を基に計算した構造
MMFF94a予想構造
コーヒーに含まれているクロロゲン酸類(9種の誘導体)の研究によると,クロロゲン酸類はポリフェノールの一種であり.糖を分解する酵素の働きを阻害して糖質が体内に吸収されるのを防ぐ効果,ラジカル捕捉能による抗酸化作用に基づく効果(体脂肪低減効果,血圧低減効果,肌への効果など)が認められている.
コーヒー豆以外の原料を使って作られたコーヒー風味の飲み物は,たんぽぽコーヒー,大豆を使った大豆コーヒー,チコリを使ったチコリコーヒー,ルイボスを使ったルイボスティー,野ばらの果実を使ったローズヒップティー,麦茶などがあるらしい.筆者のように味音痴は何を飲まされても分からないのではないかと思う.
追記
チコリー(chicory、学名:Cichorium intybus)は,キク科の多年生野菜.高さ60〜150cmで青い花を付ける.和名はキクニガナ(菊苦菜).チコリ入り飲み物として爽健美茶がある.
参考資料
たんぽぽコーヒー 作り方の記載あり.
cis-Cinnamic acid | C9H8O2 - PubChem
IARC発がん性リスク一覧(国際がん研究機関 (IARC) による発がん性を有する対象の一覧)では,コーヒー酸はグループ2Bに分類されている.
X線解析データの詳細(折りたたみテキスト)
S.Garcia-Granda, G.Beurskens, P.T.Beurskens, T.S.R.Krishna, G.R.Desiraju, Acta Crystallographica,Section C: Crystal Structure Communications, 1987, 43, 683, DOI: 10.1107/S0108270187094526
Data
C.Abell, F.H.Allen, T.D.H.Bugg, M.J.Doyle, P.R.Raithby, Acta Crystallographica,Section C: Crystal Structure Communications, 1988, 44, 1287, DOI: 10.1107/S0108270188002884
Database Identifier VUXRIP
Deposition Number 1288755
Deposited on 09/10/1989
VUXRIP : (-)-1α,3α,4α,5β-Tetrahydroxy-1-cyclohexane-carboxylic acid
Space Group: P 21 (4)
Cell: a 5.667(1)Å b 11.463(2)Å c 6.884(2)Å, α 90° β 113.94(2)° γ 90°
Synonyms (-)-Quinic acid, PDB Chemical Component code: QIC (PDBe, RCSB)
S.Garcia-Granda, G.Beurskens, P.T.Beurskens, T.S.R.Krishna, G.R.Desiraju, Acta Crystallographica,Section C: Crystal Structure Communications, 1987, 43, 683, DOI: 10.1107/S0108270187094526
Database Identifier FESNOG
Deposition Number(s): 1155008
FESNOG : 3,4-Dihydroxy-trans-cinnamic acid
Space Group: P 21/n (14)
Cell: a 6.6953(7)Å b 5.7960(5)Å c 21.193(2)Å, α 90° β 93.83(1)° γ 90°
Synonyms: Caffeic acid, DrugBank: DB01880
(2021.3.2)