3分でわかる!高槻市の施設一体型小中一貫校構想の問題点

高槻市の施設一体型小中一貫校構想は言葉が抽象的で理解しにくく、また議論の根拠がよくわからない…そんな声にお応えし、高槻市が今回の構想で主張しているポイントを列挙し、そこにツッコミを入れる形で整理しました。「■黒太字」が市の主張するポイントです。

施設一体型小中一貫校の必要性について

■「子どもたちの学習環境が充実します」

・元施設一体型小中一貫校勤務の先生は「小中の授業時間の違い、定期試験の対応、行事の意味合いの違い、施設に関する問題など問題だらけ」「高槻市の今回の計画では 1000 人を超える規模の学校になるようだが、500 人規模でもこれだけ大変だったのに 1000人となると、その困難さは想像を絶する。絶対に止めた方がよい」と指摘しています。

・授業時間や学校施設に関する施設一体型の問題点については、保護者限定説明会での保護者の質問に対し、市は「これから検討する」「教育現場に任せる」と答えました。

・「赤大路小学校の児童は171号線、JRの踏切・ガード下、阪急の踏切を越えて通学させられることになるが、通学環境の安全対策をどのように考えているのか?」という保護者の質問に対し、市は「まだ検討していない」と答えました。

・赤大路小学校や四中跡地にマンションができて児童生徒数が急増した場合の対策について構想では何も書かれていません。

■「中一ギャップが解消できます」

・元施設一体型小中一貫校勤務の先生は、「中一ギャップは経験せずに済むものの、今度は高一ギャップが越えられず、高校中退率が上がるという問題が出てきている」と指摘しています。

・元四中の先生は「中一ギャップは必要。六年生の最高学年としての自覚や責任を育てる機会を奪うことになる」と指摘しています。

■「教科担任制や習熟度別授業で学力が向上します」

・「富田地区まちづくり基本構想」では「小中連携で学力が向上し、生徒指導上の課題が減少した」「その効果を高めるために施設一体型が必要」であると主張していますが、小中連携で学力が向上したことを示す科学的根拠は書かれていません。保護者が教育指導課に「小中連携でなく施設一体型にすることで学力が向上すると主張する科学的根拠は?」と質問したところ「文部科学省のある委託研究では小中が連携している方が子供の学力が高いとされている」との回答で、「施設一体型にすると学力が上がる」ことを示す科学的根拠は示されませんでした。

・元四中の先生は「小学校の学級担任制による丁寧な学級づくりを教科担任制に分解してしまうと小学生の指導は成り立たない」「ほとんどの施設一体型では定期テストなど学力偏重のカリキュラムが小学校に押し付けられている」と指摘しています。

■「多くの仲間や異年齢の子供との交流により豊かな心が育成されます」

・教育指導課は保護者限定説明会で「中学生と小学生が同じ学舎にいても問題はない」「子供は配慮することを覚えるから大丈夫」と主張しましたが、元施設一体型小中一貫校勤務の先生は「図書室では『小学生がうるさい』の声がやまず、保健室では中学生と教師の口論など小学生には望ましくない光景が繰り広げられ、中学生は小学生に遠慮し、小学生は広い場所で思い切り遊べない」問題点を指摘しています。

施設一体型小中一貫校の立地を富田小学校地に選定する理由

■「富田小学校は敷地が整形に近く、四周が道路に接しているため、近隣建物への影響が少なく、良好な学習環境が確保できます」

・四中の方がより整形で、周りに住宅街もないことから近隣住宅地への影響は少ないと考えられます。

■「富田小学校地と新しい公共施設と複合化した場合は3校地中最大になります」

・敷地面積だけでは四中が最も広く、新しい公共施設を教育施設の面積に加算することは比較の対象として不適切です。

■「富田小学校は様々な地域資源や公共施設と接していて地域の連携が最も可能です」

・市のいう「地域資源」は富田地区の寺社や酒蔵など歴史的なもののようで、赤大路地区の神社や商業機能や公共施設は眼中にないようです。それに、そもそも保育所や福祉施設をつぶして富田小学校の横にもってくる前提なのですから、富田小学校地への立地を正当化するための後付けの理屈にしかなりません。

施設一体型小中一貫校と地域の関係

■「施設一体型が富田小学校地にあることで、地域のつながりを深め、学校支援の充実を図り、多世代交流・コミュニティ活動を活性化します」

・富田小学校地に公共施設を集約させることで、富田小学校地周辺の地域との交流はこれまで通り行われるでしょうが、統合対象の赤大路小・四中・赤大路コミュニティセンターでこれまで行われていた地域とのつながりづくりはどうなるのでしょうか。「富田地区まちづくり基本構想」だけに、赤大路地区はどうでもいいというのが市の見解のようです。元四中の先生は「最も児童数の多い赤大路小学校をつぶしておいて、赤大路小学校の保護者とどのようにつながるつもりなのでしょうか」と疑問を呈しています。

■「歩いて巡りやすい、回遊性のある地域をつくります」

・JRと阪急の踏切、JRガード下をはじめ、劣悪な歩行者環境・通学環境の改善に取り組みもせず、「歩いて巡りやすい地域」をどのようにつくるつもりなのでしょうか。

「安全・安心の拠点づくり」について

■「公共施設再編と施設一体型小中一貫校整備で地域の防災機能を充実します」

・「赤大路地区の住民は災害時に赤大路小学校ではなく線路を越えて富田小学校地まで行けというのか」「高齢者や身体不自由な方は災害時に踏切がしまっていたらどうしろというのか」「ハザードマップでは富田小学校は水没することになっているが、わざわざ防災上不利な場所に防災機能を集約させる理由は」と保護者に問われ、教育総務課は「これから関係部局と相談する」と述べました。

「住民とともに進めるまちづくり」について

■「地域の方々とまちの将来像を共有しながら進めます」

・市教育委員化は2021年3月の文教にぎわい委員会で一部の市議に対し既に富田小学校地を選定する旨提示していたにも関わらず、その後の広報紙や二回の保護者向け「小中一貫校だより」ではそのことに一切触れず、7月初めにほとんど事前告知無しで行われたパネル展示の最後のパネルの末尾の一行で初めて公表しました。保護者・住民の会から説明会を求めるアンケート中間報告と要望書が出された8/12直後の8/16に突然保護者限定の説明会をすると発表しました。説明会では通学路の安全問題、跡地利用の問題、施設一体型の問題点等についてことごとく答えられず、「これから検討します」を連発する醜態をさらしました。いまだに未就学児のいる家庭や高齢者を含む地域住民全体への説明会は予定されておらず、12月にはパブリックコメントを実施して素案を策定すると市は主張しています。