高槻市学校教育審議会資料より
2024年3月の高槻市市議会で、高槻市における「義務教育学校」の設置等について調査審議する「高槻市学校教育審議会」の設置が承認され、5月31日の第1回会合で、高槻市のすべての校区に「義務教育学校」を設置するための審議が始まりました。2025年11月に審議会としての答申を出すスケジュールで進められています。
2021年8月に「市内すべての小中学校を施設一体型に!」と宣言していたにも関わらず、今度は「すべての学校を義務教育学校に!」と言い出した高槻市教育委員会。次々と新しい用語が出てきて混乱している方も多いと思いますので、ここでは「義務教育学校」とは何か、市がいままで言ってきた「施設一体型小中一貫校」はどうなったのか、何が市の狙いなのかについて、簡単に整理してみたいと思います。
義務教育学校は、一人の校長と一つの教職員組織が(従来の小中)9年間の学校教育目標を決め、一貫した教育行う新しい学校種です。これは第二次安倍内閣の「教育再生実行会議」が2014年に「義務教育学校の制度化を積極的に推進」と提言したことが始まりです。
義務教育学校推進の目的として、表面的には「9年間の系統的な教育」や「中1ギャップの解消」が謳われることが多いですが、政治的には①(財界の要望である)「グローバル人材(学力エリート)の養成」と②「自治体の学校維持費削減」です。
義務教育学校では、「グローバル人材の養成」のために、小学校課程に教科担任制やテストによる競争教育・学力選別による習熟度別授業を導入し、英語をはじめとする教科で中学校の内容の先取りをしやすい「複線型」の学校づくりを目指しています。すべての児童・生徒に同等の教育を行うことが目的だった従来の「単線型」の学校制度や、小学校教育において重要な役割を果たしてきた学級担任制を否定する政策です。
義務教育学校は全国に207校(2023年度)、大阪府では12校(2024年度)ありますが、その多くが施設一体型です。複数の学校を統廃合し、校長等学校管理職の数も減り、教員は原則として小中学校の免許状を保有していて1~9年生すべての授業を担当できるため、公共施設の維持費・教職員の人件費削減が見込めます。
市内すべての小中学校を廃止して義務教育学校にする、という今回の高槻市の政策は大阪府下でも例がない突飛な政策ですが、以下のような特徴と問題点があります。
一般的に義務教育学校は公共施設リストラが目的の政策ですので、施設一体型を目指さないことにはこれだけ自治体として力を入れて取り組む政策メリットは乏しいです。にも関わらずあえて「施設一体でないパターンもありますよ」と予防線を張っているのは、2021年に市民の反対を受けて中止に追い込まれた「四中校区施設一体型小中一貫校構想」の影響で、「とりあえず学校施設リストラに対する批判はごまかしつつ、義務教育学校という制度いじりの実績を先に作ってしまいたい」という教育委員会の願望を表現していると言えるでしょう。
上記学校教育審議会資料において、高槻市は義務教育学校を推進する根拠として「連携型小中一貫教育の成果」を挙げています。これは2021年の施設一体型小中一貫校設置の際も掲げていた「根拠」であり、四中校区の保護者から質問攻めにされて教育委員会担当者が一つも根拠を回答できなかったという代物です。
高槻市は「中学校区での課題の共有と授業研究の実施によって高槻の子どもたちの学力は向上した」と主張し、全国学力・学習状況調査結果の経年比較のグラフを提示しています。このグラフを見ると、中学生の国語・数学において全国平均を上回る率が高くなってきていることを示していますが、この数字と連携型小中一貫教育の因果関係は何ら証明されていません。
高槻市は「生徒指導面で中学校区間で密な情報共有が進んだ」と主張していますが、生徒のどんな情報をどのように共有しそれがどのような成果につながったのか具体的な説明はありません。仮に施設分離型義務教育学校が実現したとして、情報共有にどの程度の違いが出るのかの説明もありません。
高槻市は「中学校区単位でコミュニティ・スクールが始まったこと」をもって成果と主張していますが、コミュニティ・スクールは高槻市が施設一体型小中一貫校構想推進のために推進した政策で、強引に各校に導入を進めているものに過ぎませんので、連携型小中一貫教育の成果ではありません。
高槻市は「連携型小中一貫教育によって中学校区の管理職および教職員の協働・連携が進んだ」と主張していますが、具体的にどのような連携・協働と成果が出たのか説明はありません。小中連係によって先生を動員して学校を移動させる仕事を増やしたのであれば成果というよりもただの現象に過ぎません。施設分離型義務教育学校が実現した場合は、単に先生の学校間移動業務が増える結果にしかなりません。
高槻市は現在は「教育格差」「近年不登校児童・生徒が大幅に増加」「中学校区単位での地域連携のさらなる活性化」を課題として挙げ、その原因を「学校組織がそれぞれの学校に存在していること」に求めていますが、その因果関係は全く証明されていません。
「教育格差」「不登校児童・生徒の増加」は小学校への教科担任制導入等でエリート教育を重視し、落ちこぼれを容認するような教育委員会の姿勢に起因するかもしれないし、中学校区単位の地域連携活性化が必要という認識の背景には現在推進中のコミュニティスクール制度が機能していないだけ、という可能性もあるのです。
上記学校教育審議会議事録や名簿を見て委員名で検索してみてください。推進派の大学教員と市長与党・市役所の影響下にある団体・人物だけで固めた形式ばかりの「審議会」です。高槻市市内のすべての小中学校を廃止し、新たに施設一体型・隣接型・分離型の義務教育学校を設置するという、教育の目標、教育課程、学級のあり方、教員の働き方から校名・校歌・制服に至るまで、とてつもない影響を与える施策が、こんな短期間(審議会スケジュール)で、幅広い市民による議論を経ることもなく、こっそりと拙速に進められようとしています。一度すべての小中学校を廃止してしまえば、取り返しはつかないのです。
当会では、この審議会について随時情報を発信していきますので、ご関心ある市民の方はぜひ審議を傍聴し、情報を発信し、市役所・議員に声を届けてください。教育委員会は2021年の四中校区施設一体型小中一貫校構想の失敗から何も学んでいません。今回は四中校区だけの問題ではなく、全市の小中学校に関わりますので、こっそり進められてしまう前に、納税者市民として行動を始めましょう。