「学校統廃合を考える」
日時:2021年10月24日(日) 13:00~15:00
場所:赤大路コミュニティセンター 大集会室
講師:今西清さん(川西の教育を考える会 事務局)
講演内容
講師の略歴
2016年まで自治労連・地方自治問題研究機構専門委員を務める。退職して東京から川西に戻ってきたことを契機とし、小学校統廃合の問題に関わる。
1. 川西市の取り組み
川西市が2018年に緑台小学校と陽明小学校、2019年に清和台小学校と清和台南小学校を統合し、小中一貫教育を推進していく方針を打ち出す。 理由として①~③を示す。①児童数の減少により 34人以下の単学級となる、②児童数が増える見込みがない、③文科省の新指針に基づく単学級の問題や小6・中1ギャップの解消など。
若い保護者が立ち上がり地域住民と一緒になって、反対運動を開始した。3人の保護者から始まった「緑台小学校を守る会」を中心として、①保護者会学習会の開催、②説明会開催を要請、③手作りポスターを町中に掲示、④こちらから教育委員会に聞きに行く、事前に「市役所ツアー」も実施、⑤住民有志による5,000筆を超える署名の提出、⑤市議会全会派に要請、⑥子どもの声をニューズレターにして保護者と子どもが配布、⑦地域の世帯を訪問して小学校就学予定児童数を把握・市の資料を訂正する、などの活動を行った。
教育委員会は市民からの要請を受け、2回説明会を開催。緑台小学校の説明会では、体育館に子どもを含む400人近くが集まり、質問や意見表明が相次いだ。当初は2時間の予定だったものが5時間まで延長された。教育委員会の説明として、兵庫県は小学1~5年の1学級の人数を35人と定めており、それを下回る場合は職員の配置を保障してくれないので統合はやむを得ないというものがあった。また、小中一貫教育を実施することによる教育効果があるとの説明もあった。
教育委員会は2018年6月の定例委員会にて、児童数の推計に誤りがあることを認め、児童数の推計方法を見直すとした。また、統廃合方針は変えないが統合時期を未定とし、統合する学校も見直すとした。
2018年10月の市長選挙では、小学校統廃合計画の白紙撤回を公約した市長が誕生。2019年4月、市の広報誌で白紙撤回を正式に発表した。
この運動から得られる教訓として以下を挙げる。①保護者会役員の結束と地域の支持を背景に当事者が立ち上がったことが大きい(自治会の協力を得るのは難しかった)。②有志による5000筆の署名が効果的であった。③市議会の全会派が動いてくれた。④市教委方針を鵜呑みするのではなく、問題点を分析した。⑤長い保育運動のノウハウが活かされた。⑥単学級をどうするか、小中一貫教育をどう評価するかなど、根本的な課題は解決されていない。
2. 高槻市の状況について
高槻市は9月24日、四中校区での小中一貫校設置方針を凍結した。「凍結」である以上はいつか「解凍」されると考えることが妥当。その間隔はおよそ3~5年程度ではないか。鉄道高架事業は必ず進むだろう。
「解凍」が必ず生じる根拠として、「高槻市公共施設総合管理計画」を挙げる。これは、コンクリート製の公共施設の使用期限を40年程度とするもの。高槻市の公共施設のうち、2022年に築年数30年以上となるものが84%を占める。なお、高槻市の公共施設の58%は学校である。
加古川市では公共施設の23.4%を削減し、経費を削減する計画。川西市でも、公共施設マネジメント室が同様の理由で小学校統廃合方針を打ち出し、公共施設削減と小中一貫教育が一体で推進されることとなった。
3. 小中一貫教育が推進される背景
→文科省の方針として「できる子を早く見つけて伸ばす」
理数系教育の偏重
どんなやり方でも文科省が手厚く資金を出して小中一貫教育を推進する
次のようないろいろな政策が教育改革と一体的に推進されている。①立地適正化計画 コンパクトシティ、②都市施設誘導区域、居住誘導区域の設定、③行政サービス提供体制の縮小、④小学校統廃合と小中一貫教育、⑤保育所・幼稚園の認定こども園化と民営化、⑥図書館の広域連携と民営化。
自民党は政権公約2021に、「教育は国家の基本 人材力強化」を謳い、①伸びる子はどんどん伸ばす教育、②誰一人取り残さない、③GIGAスクール構想、を打ち出している。③と関連して、中教審は子ども全員にタブレットやPCを配布して従来型教育を変えるとした。
→「個別最適な学び」
= 不登校になってもタブレットで授業を受けられる?伸びる子だけを取り出して早期教育を行っていく?
→小中一貫教育で全国学力・学習状況調査の平均点が上がった(微増)としている。しかし、クラスの平均点のみで評価し、平均点からの分散を数値で示していないため、ついていけない子を含めた全体の広がりが把握できない。
4. 国方針への対立軸
→国が唱える「切磋琢磨」はついていけない子どもを大量に作り出すシステム
5. 高槻市で今後行っていくべきこと
質疑応答
Q:子どもたちが主体的に運動に参加しているが、「子ども会」のような組織があったのか。
A:PTAの保護者会会長の呼びかけによって、地域の子ども会とは別に活動した。校長は、保護者の自主的な取り組みとして介入することはなかった(大阪府では校長ににらみを効かせているため、このようなことは難しいかもしれない)。教育委員会からは校長の了解は得ているかと尋ねられたが、市民の自由な活動として行っていると回答した。
Q:PTAと保護者会とは別にあるのか?
A:川西市の当該学校には、保護者のみで構成される「保護者会」がPTAの中に組織されていて、この組織が学習会を行い、その中で「緑台小学校を守る会」が立ち上げられた。「緑台小学校を守る会」は、保護者当事者と卒業生、趣旨に賛同する個人が参加し、自由な意見と自主的参加を原則にし、毎週のミーテイングには30人以上の人々が参加して、参加者の自由な提案に基づいて行動した。
Q:保護者会は公的に認められた組織のようだが、PTAとの関係はどうなっているのか?
A:保護者会を中心に「緑台小学校を守る会」というものを作った。活動は両親が参加しやすいように、土曜日か日曜日。保護者会は小学校の多目的会議室で1回学習会を行い、守る会を立ち上げ後は地域の公民館でミーテイングを行った。緑台小学校を守る会は、ゆるやかな組織形態にして、代表も役員もおかず、全員が自由に提案し、毎回のミーテイングで一致したことを基本に会員の自主参加で自由に活動を行った。
Q:保護者会というのは、兵庫県では一般的か?
A:私の知っている限りではよくある。そもそもは夏祭りの開催などを目的とした互助会的なものと考えられる。PTAの組織図の中に記されている。
Q:運動への子どもの参加はどのようにして可能になったのか?
A:子どもの権利条約の中に「参加する権利(自由に意見を表したり、団体を作ったりすることができる:日本ユニセフ)」がある。ドイツの「主権者教育」なども大変進歩的で参考になる。また、保護者会の中で 「これは誰の問題なのか?」と相談してもらった。子どもの声をニューズレターに掲載することや教育委員会説明会への子どもの参加も行った。大人世代が思っている以上に子どもたちは考えている。自分の学校が統廃合されることについての作文を書くこと自体が教育になったと考えている(環境、気候、貧困、ジェンダー、教育などの問題を考えることは、SDGs教育として小学校教育に含まれている)。
Q:子どもが声を上げることで、子どもや保護者同士の関係が悪化したり、いじめが起きたりということはなかったか?
A:一切なかった。ちなみに川西市では、小学校児童が利用できる、子どもの人権オンブズパーソン制度が導入されている。
Q:学校統廃合については子どもが減っているからやむを得ないという声も根強いが、この点について効果のあった取り組みは?
A:猪名川町で少人数学級の担任をしている全教の組合委員長を招いて、講演会を行った。少人数の学級がどんなに楽しいかを保護者に向かって話してくれた。
Q:川西市のように、市長を変えるほどの全市的な運動にしていくにはどのような方法があるか?
A:政府の方針にだけ従う市長は、市民の代表と言えないので、中立的で市民の声を聞いてくれる人を選ぼうという機運が高まった。学校統廃合以外にも、保育所幼稚園を統廃合して認定こども園につくりかえることや、介護保険の改悪など、さまざまな問題があった。当時、安保法制が国会で強行採決され、東京ではSEALs(シールズ)が頑張っていたこともあり、若い人たちも含めて市民の代表は市民で選ぼうという感じがあった。そうした世の中の動きも相まって全市的な運動になっていったと思う。学校統廃合問題だけでは、全市的な運動にはなりにくいと思う。
Q:今回の高槻市の運動は最初から「反対」ということではなく、「決め方がおかしい」という事に対して行ったことが功を奏したのではないかと思っている。民主主義が実現化していく、実体化していく運動だったように思う。四中校区の場合、常識的に考えれば、これは無理だとすぐわかるような通学路問題があり、一貫校がいいか悪いか以前の問題で凍結となってしまった。今後、一貫校がいいか悪いかについて議論されなければならないと思うが…
A: 子どもの教育は市民の合意と納得に基づいて決めるものであり、学校統廃合は誰がどんな目的で進めているかを見抜くことが必要。請願権(国民が国や地方公共団体に対して、様々な要望を出せる権利)は憲法第16条に定められた権利であるから、基本的人権として行使すべきだと考える(日本国憲法97条では、この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果、と規定している)。新自由主義の震源地は政府であり、市長を変えたところで終わりではなく市民は絶えず市政に参加し続けなければならない。中教審答申では新しい戦略として、小中一貫教育を断固として進める、あらゆる手法を使うと言っている。放っておいたらどんどん進んでいってしまう。四中校区がどうなるかを見守ると同時に、小中一貫教育とは何者か、私たちはどう立ち向かえばいいのか、親の世代の責任として学習を積み重ねていくことが大事。
Q:ゼネコンがその気になったら高架の工事が進むという話があったが、そんなに簡単に進むものなのか?
A:連続立体交差事業というものが、計画から工事まで3~5年程度をかけて、各地で行われている。都市再開発事業や区画整理事業と一緒に進められる場合もあるが、その場合はかなり時間がかかる。鉄道の立体交差事業だけなら、線路全体を上に上げる方法と道路を下に下げる(アンダーパス)など工法は様々にあり、短期間に事態が動くことも十分警戒する必要がある。地元の建設業界の人が運動をする可能性もある。
しかし、高架の事業と学校の統廃合問題は全く別の問題である。子どもたちにとって、どんな小学校・中学校で育つかは一生のこと。教育委員会が決めるのではなく、あくまでも市民や保護者の合意と納得によって決定するということを明確にしなければならない。おそらく「みんなで考えましょう」というスタイルで考えれば考えるほど、統廃合するよりは今の学校を残して一人一人に行き届いた教育をするという結論になると思う。教育委員会はそういう議論を望まないだろうが、私たちの側は「一緒に考えましょう」という運動を対抗してやっていく必要があると思う。