発達障害にどう向き合うべきか
―社会と医療の交差点―
毎年4月2日は国連の定めた世界自閉症啓発デーです。日本では4月2〜8日を発達障害啓発週間とし、自閉症・発達障害の理解促進のため様々なイベントが催されます。私たちも研究者の立場から、自閉症当事者の抱える困難やその科学的な知見について、一般の方々と共有する場を設けてきました。
近年では、社会との接点において生じるような発達障害について、当事者にその問題を帰するような従来の医学モデルを見直し、社会モデルの枠組みにおいて受容を試みる動きの広がりがみられます。
本シンポジウムでは、実際に医学的な立場から当事者の抱える問題と向き合う方や、社会学的な立場から研究されている方にご登壇いただき、科学的・社会学的な視座の有効性や限界を議論することで、コミュニティが目指すべき姿について展望を考えます。
多数の皆様のご来場、ありがとうございました!
YouTubeでのアーカイブ配信は4月13日(土)まで視聴可能です!
日時:2024年4月6日(土)15:00~17:00 ※開場は14:30です。
場所:杏林大学 三鷹キャンパス 医学部講義棟A 6階 604小講義室(アクセス)
現地参加定員:50名(満席になりました!)
オンライン参加定員:無制限
YouTube ライブにて生配信を予定しております。配信後は、アーカイブにて期間限定で視聴可能にする予定です。
参加費:無料
参加・視聴は事前登録制です。下記の「参加応募」よりご登録をお願いいたします。
※ 2024年2月22日:参加応募を開始いたしました!
※ 介助犬を連れてのご参加も可能です。
企画趣旨説明(5分)
杏林大学医学部/渥美剛史
話題提供①「医療からみた『おとなの発達障害』」(20分)
ハートクリニック横浜/柏 淳
発達障害者支援法の制定から20年を迎え、医療の分野でも「おとなの発達障害」についての認識が広がりを見せている。しかし、医師の本務は病気を治すこととされ、後天的に発症する精神障害の治療を本業とする精神科医は、生来の特性である発達障害と向き合う時に戸惑いを感じる。治すのではなくうまくつきあっていく、リハビリテーション(もとに戻す)ではなくハビリテーション(新たな安定を作る)を行うことが求められているが、そのためには新たな医学モデルの創出、そして福祉、産業界、当事者会などさまざまな支援者とのなお一層の連携が必要である。社会モデルから当事者を支える動きとの美しいハーモニーを生み出すにはどうすればいいか、皆さんとの議論を楽しみにしている。
話題提供②「障害の社会モデルとニューロダイバーシティから理解する発達障害──それが”響きのよいお題目”で終わらないために」(15分)
The University of Exeter/篠宮紗和子
今回の短い講演では、発達障害を「本人のせい」ではなく社会的な存在として理解し、「何かが劣っている」存在ではなく「違い」であると理解するための考え方と、その限界をご紹介します。ご存じの方も多いように、その考え方とは障害の社会モデルとニューロダイバーシティというものです。これらの考え方は、発達障害のある人への不当な扱いを減らすための基礎としては非常に重要なものですが、基礎的な考え方を示すものであるために、「響きのよいお題目」で終わってしまいがちでもあります。講演では、それに対する完全な解決法を提示することはできませんが、この問題について話し合うために必要な基礎理解を示してゆきます。(オンラインでのご登壇になります。)
話題提供③「障害の代わりに『不利な状態』という用語を使うべき理由ーウェルフェア主義における障害と強化の意味」(20分)
立教大学/堀内進之介
障害の社会モデルは、障害よりも多様性を強調し、発達障害のような状態を価値中立的な差異として捉えようとします。しかし、発達障害には、個人を不利にしうる現実的な認知的・行動的課題が含まれています。ウェルファリストの観点からは、本人の意思を尊重しつつも、生活の質を向上させるために薬物療法などによる機能強化の可能性を排除すべきではありません。この点を認識する上で、「不利な状態」という言葉は、スティグマを避けながら障害の課題を認め、支援の重要性を強調し、強化の余地を残すのに役立ちます。本報告では、社会モデルの課題を考察しつつ、ウェルフェア主義のアプローチが、障害と生活の質の向上に関してどのような意味を持つかを述べたいと思います。
話題提供④「心理学・神経科学研究は感覚の問題にいかに貢献できるか?」(15分)
国立障害者リハビリテーションセンター研究所/井手正和
自閉スペクトラム症者の多くが抱える感覚過敏や感覚鈍麻について理解が広がりつつあり、カームダウンスペースの設置など、環境的配慮が少しずつ進められている。しかし、全ての環境を全ての感覚の問題をもつ当事者にとって快適な形にデザインすることは現実的ではない。また、過敏等といった感覚の問題の程度は不安、ストレス、疲労等に影響されて強まることが考えられる。そうした状態の変動にも対処できることが望まれると考えると、環境的配慮だけでは限界があることは否めない。こうした問題点に対して、心理学・神経科学の研究はどのような貢献ができるだろうか。これから発展していく可能性のある個人への介入が環境的配慮といかに共存していくことが期待されるかについて話題提供する。
全体討論(35分)
今回のテーマについて、これまでの話題や参加者から頂いたコメントを元に議論を交わします。
柏・篠宮・堀内・井手・渥美
参加応募:下記の1か2のリンク先フォームよりご登録をお願い致します。
現地参加をご希望の方(満席となりました。お申し込みありがとうございました!)
※ 現地参加の可否は、ご応募いただいた方の先着順となります。ご応募頂いた後、メールにて参加の可否をお知らせいたします。
※ 現地参加にお申し込み頂いた方には、autismsympo[@]gmail.comより順次確認のメールを差し上げております。このアドレスからのご連絡が迷惑メールに振り分けられないよう、ご確認をお願いいたします。
会場:
杏林大学 三鷹キャンパス
〒181-8611 東京都三鷹市新川6-20-2
医学部講義棟A 6階 604小講義室
(キャンパス案内)
アクセス情報はこちら
※ 当日はシンポジウムのための駐車場をご用意しておりません。恐れ入りますが、公共交通機関などをご利用いただきご来場ください。
会場の様子:
※ 現地参加者のお顔は配信いたしませんが、お声をマイクで拾う可能性があることをご了承下さい。