過敏な感覚をどう考える?
―誰にでもある、でも特別。との付き合い方―
毎年4月2日は国連の定めた世界自閉症啓発デーです。日本では4月2〜8日を発達障害啓発週間とし、自閉症・発達障害の理解促進のため様々なイベントが催されます。
自閉症は社会コミュニケーションや感覚・運動の困難を主たる症状とします。近年は、障害の有無に関わらず人と人との距離感が遠くなっているように思われ、他人から一見してわからない感覚の悩みを抱え込むことが増えているかもしれません。
科学的・医学的に正体がわかってきている感覚の問題は、専門家の助けによって社会でケアされるものとして扱われます。自分の「感覚」で困ることは誰にでもあり得える一方、それらと十把一絡げにしてしまうことは、適切なケアを遠ざけてしまうかもしれません。外から見えない感覚の問題について、そもそも私たちはどう向き合うべきなのか、発達障害に代表される感覚過敏と分けることができるのか、何をもって分けるべきなのか・・・・
今年の発達障害シンポジウムは、そんな誰にでもある「感覚」の問題について、発達障害当事者における特殊性と非障害当事者にもみられる一般性を考え、その理解を深める機会にしたいと思います。
『ビッグバン』 作:きさらぎこう
自閉スペクトラム症当事者の作家の方です。昨年の発達障害シンポジウムでも素敵な作品をご提供いただきました。バナー画像は宇宙、花火、内面を描いた作品です。きさらぎこうさんについての詳しい情報は、Twitterなどからご覧になってください。
日時:2023年4月2日(日)18:00~20:00
定員:500名 無制限
YouTube ライブにて生配信を予定しております。配信後は、アーカイブにて4月9日(日)まで視聴可能です。
参加費:無料
参加登録を締め切りました!たくさんのご登録をありがとうございました!
※ 参加登録期間を延長しました!(4月9日[日]まで)
18:00~18:05 企画趣旨説明
杏林大学医学部/渥美剛史
18:05~18:25 「感覚が「過敏」であるかどうかの境目って?」
国立障害者リハビリテーションセンター研究所/井手正和
自閉スペクトラム症(ASD)の多くが「感覚過敏」をもちます。感覚過敏の症状には、例えば通常では気にならない程度の大きさの音に対しても、耳が痛むような感覚をもつといったことがあります。しかし、この感じ方は、感覚過敏をもたない人が大きな音を聞いた時の感じ方と、質的・量的にどのような違いがあるのでしょうか。この違いを客観的に示す手段がないために、感覚過敏をもつ人は、周囲から「ワガママ」などといった言葉をかけられてきました。何をもってASD者の感覚過敏を定義づけることができるのか、または定型発達者のもつ感覚との連続性を想定できるのかといった疑問について考えていきます。
18:25~18:45 「感覚の特徴をどう理解すればいいのか?──ニューロダイバーシティをめぐる批判から見る「特異な脳」の意味と功罪」
The University of Exeter/篠宮紗和子
近年では感覚の特異性や感覚過敏についての研究が進み、ASD者の脳機能の特徴が次々と明らかになっています。しかし、こうした研究の結果を受けて、ASD者が定型発達者と全く異なる脳を持つと言い切ってしまうことはできません。ASD者と定型発達者を脳の特徴によって二項対立的に分けてしまうことには無理があります。これはASDの名前の中に「スペクトラム」という言葉が入っていることからも示されています。
このことは、ASD者をめぐるニューロダイバーシティという運動について考えるときに特に問題となります。この運動は、ASD者が特異な脳を持つことを尊重し、それを劣った存在だとか治すべき存在だとみなさず、その良さを伸ばすことを主張してきました。この運動は、ASD者と定型発達者の脳が「異なる」という点を強調することによってASD者の権利を守ってきました。非常に重要な運動である一方で、現在ではその主張が二項対立的すぎる点やASD者・定型発達者それぞれを一枚岩的に捉えすぎている点が批判されています。
それでも、「異なる」感覚の特徴を持つ人たちが快適に生きていく上で、ニューロダイバーシティの考え方は重要です。シンポジウムの当日は、ニューロダイバーシティについて英語圏で議論されている批判を詳しく紹介しながら、感覚の異なりを社会的にどのように扱っていけばよいのかについて議論するための材料を提供したいと思います。
18:45~18:55 休憩
18:55~19:15 「発達的な変化のしやすさ(発達的可塑性)の視点から感受性をのぞいてみよう」
創価大学/飯村周平
私がお話しするトピックは、他の先生方よりも大きいトピックだと思います。神経発達症(発達障害)の方々が、感覚過敏(感覚鈍麻)を経験する場合があるというのはすでに周知のとおりです。ただ、このことを発達的な変化のしやすさ(発達的可塑性)の視点からみてみると、また違った発達障害像が見えてくるのではないかと思います。この視点でみてみると、神経発達症の方々は、神経生理的・心理的表現型の可塑性が高い人達であるといえるかもしれません。これを理解する言葉に「環境感受性」があります。今回はこのキーワードをもとに感受性を理解していきたいと思います。
19:15~19:35 「当事者から見た発達障害」
立教大学/河野哲也
発達障害のある子ども・人たちの経験を質的に記述した文章(日記、文学、回想録など)を集め、何が当人にとって最も重要な「困り事」となっているかを分析したときには、多くが定型発達者である専門家が焦点化している発達障害の特徴とは異なった特徴が浮かび上がってくる。当事者の観点から感覚知覚の問題についてアプローチする意義を指摘したい
19:35~20:00 全体討論
今回のテーマについて、これまでの話題や事前に参加者から頂いたコメントを元に議論を交わします。
井手・篠宮・飯村・河野・渥美
閉会の言葉
国立障害者リハビリテーションセンター研究所/井手正和
※ 延長しました!(4月9日[日]まで)
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