大学在職中,私はallyl alcoholをallyl thiolに変換する手法の研究を行っていたので,退職した後もウエブ上の関連事項に目がとまる.
O-Allyl S-methyl dithiocarbonate (xanthate}の{3,3]-sigmatropyによるチオールの合成法
最近,目にしたのは資生堂が発見した「ストレス臭」の元となる化合物である.「におい展」(2019年9月14日から12月8日まで開催,横浜)で展示?されるという.
さっそく資生堂のホームページを見てみたら,次のように書かれている.
資生堂の研究員や臭気鑑定士が長きにわたる体臭の研究を行う過程で緊張・ストレス状況下※で独特のニオイ「ストレス臭」が発生していることを確認。その存在に気づいてから3年、さらに実験を重ねた結果「ストレス臭」の成分を特定することに成功しました!
ストレスが加わることで、特有の硫黄化合物系のニオイが放出されることを確認するとともに、その成分を突き止めました!
ストレス臭「STチオジメタン」!
採取したニオイの成分を特殊な分析機器でしらべた結果、ジメチルトリスルフィド(DMTS:dimethyl trisulfide)とアリルメルカプタン(AM:allyl mercaptan)という2つが「ストレス臭」の主要成分であることを見出しました。資生堂はこれらを「STチオジメタン」と命名。多くの人が面接や会議室など、ストレスのかかる状況下で経験したことのある、汗のニオイとは異なる”あのニオイ”の正体が初めて明らかにされたのです!
初対面のインタビュアーからの質問に20分回答し続けた健常な女性40人(35〜44歳)を使って研究を行っている.
緊張による「心理的ストレス状態」にあることについては,リラックス時と比べ心拍数が上がって交感神経が優位になることを心電計で確認し,同時にストレスホルモンと言われるコルチゾールが唾液中で増加することから確認したとしている.
その後,新たに行った実験では,男性や,20~60代の幅広い年齢層からも検出できることを確認したとのことである.
詳細は参考資料をみてほしい.
ついでに
半経験的分子軌道計算(MOPAC MNDO-d) で構造を予想してみた.
ジメチルトリスルフィドの配座異性体
左の構造 trans -5.36051 KCAL
右の構造 cis -4.67107 KCAL
メチル基が離れている配座が安定
アリルメルカプタン
SHの配座は水素が二重結合の方へ向いているものが最も安定.
力場計算 (MMFF94) に於いても同様の結果が得られた.
本来,硫黄原子を含んでいるので,3d軌道を考慮できる非経験的分子軌道計算を行うべきである.
(2019.10.1)