むへどるり氏の手による「光あるうちに海の上を歩め/冬」に登場する強化服の設定です。
設定資料によると
強化服:艤装から発展してきたパワードスーツのうち、民生用のものを指す。艤装技術をダウングレードした蒸気機関を内蔵し、タービン発電機により機脳を駆動、本体は低温蒸気駆動となっている。
と書かれています。また、右にある軍用のものは強化服とは異なりますが、艦娘の後継機に相当するもので、より高性能に、そしてより汎用性を持つように発展しています。軍用強化服は背部バックパックとして艦本式缶を装備しており、この内部で生み出される上記によってパワーアシストが行われています。民生用のものは、軍用のものほどの装甲を有してはいないので小型ですが、基本的な仕組みとしては変わっておらず、本体内にはやはり缶を装備しているという設定です。
「光あるうちに海の上を歩め/夏の終わり」のプロットです。
このプロットは、一番始めに切ったプロットから何度も手を入れてきたストーリーのもので、冬コミ(C93)のときも、夏コミ(C94)のときも「これでいいのか?」というので頭を抱えた結果延期ということになったプロットです。
大まかな話の筋は一番始めから変わっていなくて、深海棲艦のイレギュラーな攻撃→轟沈したとされていた艦娘がその背後にいることが明かされ、捕縛する任務を言い渡される→キーマンと目される人物への接触、深海棲艦との戦争や運命の軛についての様々な解釈を聞く(情報収集)→目標へのアプローチ、再会→エンディングという形です。
先にも触れましたが、何回も頭を抱えた理由としてはこの話では追われる側の艦娘(初期案では夕張、最終決定では舞風)がそこまでの行為に出た理由、というものを自分に納得させるのが難しかったからだったりします。こういう、自分の信念とかのために大きな陰謀を回すキャラクターっていうのが苦手なんですよね・・・。最終的には、本編で語ったような形に落ち着きました。裏話的なことになりますが、この舞風、はっきり言って艦娘の未来とか対棲戦争の将来なんてどうでもいいと思ってます。ただそのために必要な手段として入り込んで、その結果として(本人は望んでなかったんですが)運命の軛をいじるスイッチを操作することになってしまっています。
また、エンディングも初めの案から何度か変わっていて、初期案では「戦争継続のため、舞風が射殺され、その復讐として(そして舞風が望んだ世界の実現のため)鎮守府が壊滅するよう振る舞い、その終末の様子を前にしてひっそり微笑む」というエンディングでした。光は光でもチェレンコフ光のまいのわになってしまうところだった。(でもエンディングとして非常に納得は行くんですよね…) その他にも、不知火や他の艦娘の復讐として野分が舞風を射殺する案や二人で逃げ出そうとするも、追手によって射殺される案もあります。どうも、そういう終わり方がしっくり来てしまうのが悩ましいところです…。
この話は、一番始めに「艦娘が艦娘である限り、深海棲艦は生まれてきて戦争は終わらない」という理屈を考えたものです。そこに、それが明らかになっていき、主人公が何らかの決断を求められるというストーリーと、事件を追うというので似合いそうな艦娘の組み合わせを考えた結果まいのわに落ち着いています。(あと、「女王陛下の護衛戦隊」で冒頭から舞風が病死し自分が見逃した潜水艦で同じ母艦の仲間を全員失い父を自らの手で葬り仲の良かった電も失い…と野分を散々酷い目に遭わせたので「今度こそはまいのわでハッピーエンドを迎えられるようにしよう」と考えてたのもあります。死亡するエンディングがやたら多いのは…生存END=Happy ENDとは限りませんしほら…)
一方こちらは「光あるうちに海の上を歩め/冬」のプロットです。
このプロットは、どういう経緯で切ったのかは思い出せないのですが、たぶん一番初めのプロットで煮詰まったとき予備のプランとして考えたものだったと思います。
こちらのプランも基本的な話の流れは変わっていません。立場などについても、はじめからこの顔ぶれになっています。
ただ、何箇所か変わっているところはあって、一番初めの案では一貫して生きた舞風は登場しませんでした。強いて言うならば本編が始まる前に舞風は事故死しています。この案では、一連の暴走事件の犯人として舞風の名前が挙げられており、野分はひたすら「舞風の戦後」を追いかけていき、一番最後に暴走のトリガーになる場所にたどり着いた野分が「そうだね、舞風はもういないんだ」とつぶやくエンディングの予定でした。さすがにこれをハッピーエンドと言い張る自信はございません。
その後、いろいろと人物やら何やら手を入れて今の案になってます。
この話は、一番始めに「深海棲艦の体を利用した混和剤が使用されたコンクリート」「艦娘の艤装から発展してきたパワードスーツ」というガジェットがあって、それに「そのコンクリートから深海棲艦が湧きパワードスーツが暴走したら面白いんじゃない?」「そこに戦中に出来なかったこと失ったこと後悔を重ね合わせるといいのでは?」と考えた結果です。たぶん。そのうえで、野分が刑事としてそれを追っかけていったら面白そうだな、と考えた結果がこのプロットです。
「虐殺器官」「ハーモニー」(伊藤計劃):「夏の終わり」はこの2本から主にストーリーの面で大きな影響を受けています。どちらも「ある事件を主人公が任務として追い、その過程で世界の枠組みや人間そのものについて様々に語られる」という構成がこの話と非常によく噛み合ったせいでしょう。
「ノクチルカ連続体」(大戸又/渡辺書房「電脳軍事探偵あきつ丸弐」収録):「冬」で起きる事件や「深海棲艦を利用したコンクリート混和剤」というアイデアはこの作品が元ネタになっています。
「プリンセス・プリンシパル」:作中でのアンジェとプリンセスの関係がまいのわを書くとき頭の片隅に合ったりしました。髪の色の組み合わせのせいもあるのでしょうが、「淡々と任務をこなすが、内心ではある過去を抱えている」というキャラクターと「表向き明るく振る舞っているが、強い決意を抱えている」というキャラクターの組み合わせというのがまいのわに通じる部分があると感じているのもあります。
「機動警察パトレイバー the Movie」:知っている人は読んだだけでわかると思いますが、「冬」は概ねこの話が基になっています。単純に、事件のモチーフとか作中で繰り返し描かれる「消えかかっている東京の風景」がダブったのもありますが「松井さんのポジションに野分がいたら似合いそうだよね」「陽炎って後藤隊長っぽい」というのもあったりします。ついでに言うなら南雲隊長は不知火が似合いそう。福島課長……は阿武隈かなぁ。
「機動警察パトレイバー the Movie 2」:「夏の終わり」が少し影響を受けています。「ハーモニー」もストーリーがだいたい同じ構成なんですよね。ちなみに、本編で出てきた「大淀さん(本名が荒川)」はこれが元ネタです。
「 WⅩⅢ」:「冬」が少し影響を受けています…がこれどこらへんがそうか、と言われると悩ましいところではあるんですよね。強いて言うならば娘を復活させようとする技術者のあたりでしょうか。あとは艦娘が完全に背景に溶け込んで作品世界の一部として扱われているところとか。それはさておき、「舞風です。これから、ダンスを踊ります」って映像が流れるスタジアムと舞風を創り出そうとした結果生み出された廃棄物…っていうのも考えはしたんですが、それだと結局焼き払っちゃうしなあ、と。
「人狼-Jin-Roh-」:「冬」でほんの少しだけ、というか背景程度に出てきた「首都警」の元ネタです。この話というか、漫画の方の「犬狼伝説」でも繰り返し語られる首都警の姿(武闘派集団であり、それゆえに行き詰まっていく)っていうのは非常に艦娘と相性が良いと思うのですよね。戦中の延長線上で動き続け、本格的な戦後のなかで浮かび上がり消えていく…っていう艦娘集団の話はまだ少し考えていたりしますし、そういう艦娘像は「冬」のバックグラウンドにあったりします。陽炎と野分はそれぞれ、うまく立ち回ったのと戦後の振る舞い方へ切り替えたことでその動乱の中を生き残ったというイメージですね。あと、今回没にしたプロットの中にはこれを元ネタにしたというか、戦中に目の前で轟沈した舞風の影を別な少女に見出してしまうがそれは首都警解体に絡んだ陰謀で…という案もあったりしました。最後に野分がその少女を射殺してしまう話なんですが、だからこう、なんで舞風を殺す話ばかりになるかなぁ…。