TOARISE
小説
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花を愛でる(アルフェン×シオン)
ED後。設定画集の資料ページに書かれたシオンの項目に胸が締め付けられた…
シオンは、アルフェンに隠していることがあった。隠している、というより旅をしていたときは伝える必要がないと思ったのだ。
しかし今、滅ぶ運命から解放され、こうして生きている。はじめはぎこちなかった触れ合いも、少しずつ慣れてきた。
だからこそ、シオンはアルフェンに伝えたいと思った。
――共に生きていくと決めたから。
驚かないで欲しいと前置きをし、シオンはアルフェンの前で服を脱ぎ、今まで隠していた素肌を見せた。
「…これは」
シオンの胸元には、傷痕があった。見た目は大きくないが、それがどれ程深かったのかアルフェンにはわかった。
「“荊を滅ぼす力”を身につけたときにできたものよ」
それは隠すために、とっさにとった行動だった。荊の呪いで死ぬことはなく、すぐに治癒術をかけ塞がったが、痕は残ってしまった。
「今まで黙っててごめんなさい。でも後悔はしてないわ」
その意味も、昔と今で変化していった。昔は共に滅ぶから残っても構わないと。
「今は、この傷痕と一緒に生きていきたいの」
「……」
じっと、青灰色の瞳は傷痕を見る。その表情から、彼がどんなことを思っているのかはわからない。シオンはその様子を静かに見つめた。
長い沈黙が続いたあと、アルフェンは動いた。そして、
「…!?」
その傷痕に、優しく触れるように口付けをした。
「すまない。嫌だったか?」
「いいえ…。少し驚いただけ」
そう言うと、アルフェンはホッとした表情を浮かべ、また口付けをする。唇が離れると、その部分が赤く色づいた。
「正直、怒られるかと思ったわ」
「本当はそうしたかったけどな。でも…」
アルフェンは顔を上げ、シオンの顔を見る。
「それ以上に、触れたかったんだ。傷痕だけじゃない。シオンの全てに」
アルフェンは傷痕を撫でる。シオンの体温より高いアルフェンの手は、温かく心地よかった。
「ありがとう、アルフェン」
シオンは先ほどのお礼と、アルフェンの傷痕に口付けをした。褐色の肌に、シオンに付いた色とはまた違う色が付いた。
予想していなかったのか、今度はアルフェンが驚きの表情を浮かべた。
「私も、あなたの全てに触れたいわ」
「…いきなりはずるいぞ」
「あら、あなたと同じことをしただけよ」
シオンは、アルフェンが付けた痕と自身が付けた痕を指でなぞる。
「まるで蕾が咲いたみたいね」
「なら、たくさん咲かせてやらないとな」
「なにそれ」とシオンが少し呆れたように言うと、二人は顔を見合わせて笑った。
――この先、ここにいくつの花が咲くのかしら?
そんなことを考えながら、シオンは目の前の愛しい人と唇を重ねた。