研究実施機関:筑波大学、金沢大学、東京大学
近年、地球温暖化・海洋の貧酸素化の深刻化に伴って、海洋環境変動の地域特性を適切に把握することの重要性が高まっています。本研究課題では、沿岸域の環境管理・保全へ貢献することを目標とし、二枚貝の貝殻を活用した地球化学分析・成長線解析等の手法により、水温や溶存酸素濃度などの環境情報を簡便かつ過去に遡って復元するモニタリング手法を提案し、我が国の沿岸環境の遡及的な環境モニタリングを行うことが最終目標です。また、対象とする底生生物の二枚貝類については、貧酸素・高水温などの環境ストレスが体成長や個体群維持(大量死)に与える影響の解析や遺伝子データ・結晶学的データを活用した殻形成への環境影響評価を実施します。このような取り組みにより、沿岸域の環境管理・海洋生態系の保全に資する技術提案・情報発信を目指した研究を行います。
★主な調査地:英虞湾、東京湾
二枚貝の貝殻は、一日に1本もしくは2本の成長線を刻むため、年齢(日齢)や成長速度を知ることができます。本サブテーマでは、成長線解析を行った貝殻を用い、水温指標として知られる酸素同位体比を分析することで、時系列の水温履歴の解析を行います。また、遺伝子発現解析や結晶構造解析を行うことで、温暖化・貧酸素化が貝類に与える影響評価を行います。
(筑波大学、金沢大学)
貧酸素発生時には、堆積物中の二酸化マンガンからマンガンイオンが発生し、このマンガンイオンが生物の殻や骨格に取り込まれることが知られています。本サブテーマでは、貝殻の元素分析(マンガン濃度など)により、溶存酸素濃度の復元手法を提案します。また、貝類の有機物試料の炭素・窒素・硫黄同位体比分析により、栄養塩履歴の復元を目指します。
(東京大学大気海洋研)