普通のレースゲームに擬態してゲームは始まるが、ドライバーはそのあと……!?
東京ゲームショウ2022のTHQ Nordicブース内に設置されたプレスルームにて、新作『Stuntfest - World Tour』を遊ばせてもらえるということで指定された時間にお邪魔した。部屋に案内されて早速 プレイを開始。プレイヤーは乗り込むマシンやドライバーを選び、走るコースを選ぶ。すると画面には乗り込んだ車が表示され、スタートまでのカウントダウンが始まる。「3、2、1、GO!」合図と共に、豪快に発進する車。
R2トリガーでアクセル、L2トリガーでブレーキという一般的なレースゲームと同じ操作なので、違和感なく車を操作。車の挙動はなかなかだけど、壁やライバルカーに激突するとすぐボンネットなどが破壊。そんなことは気にせず走行を続けていると、眼前には工事中なのか、コースが途切れている。「え!?」と衝撃を受けていたときのことだった。
「Push A Button!!」
いつのまにか入室していた開発者のMilo Gutmann氏が、嬉しそうにそう叫ぶ。「あ、はい」とばかりにAボタンを押しっぱなしにする筆者。すると次の瞬間、車の天井からは前方に放物線を描くような矢印が表示。「今か!?」というタイミングでAボタンを離したところ、さっきまで自分が運転していた車の天井から、ドライバーが勢い良く前方へ放り出された。それはあたかもスカイダイビングのように、両手をバタつかせながら慣性の法則で空中を飛行しているドライバー。そこで、Milo氏が再びこう叫ぶ。
「Push L Trigger!!」
言われるがままにLトリガーを押してみると、ドライバーの背中にはジェットエンジン付きの翼が装着され、フライトシミュレーターのように飛行を始めた。
……さて、ここまでの文章を読んで、このゲームのルールを理解できた者はいるだろうか? 30分ほどプレイした筆者も、ルールを説明しろと言われたら、正確に答える自信はない。それほどまでに、このゲームのルールは独特で(いい意味で)クレイジーだ。
▲車から射出されたドライバーは、ジェットエンジン付きの翼で飛ぶことも、地面ぎりぎりでBボタンを押せば再ジャンプもできる。意味がわからないって? それが正常な反応だ
▲ニトロを使って加速しながらバンクを駆け上がり、車体を90度傾けながら走行しなければならない場所。このゲームには、当たり前のように各所に存在する
▲きれいなライン取りでアウト~イン~アウトをしていたら、ライバルカーに激突されて死屍累々。どういうゲームかということが、ご理解いただけただろうか?
クリエイターインタビュー
クレイジーなゲーム誕生秘話を開発会社社長に訊いた
約30分ほどプレイしたのち、通訳の方が到着。早速Milo氏のインタビューを始めようと改めて名刺交換。しかしMilo氏は名刺を切らしてしまったとのこと。「ゲームデザイナーかな?」と思いながらもインタビューを開始して、ゲームプレイを通じて感じた疑問を質問してみることにした。ちなみに、インタビュー中にわかったことだが、Milo氏はPow Wow Entertainmentの共同設立者兼CEOという開発スタジオのトップだった!
――車を運転し、ドライバーを脱出させるというアイデアはどこから着想されました?
Milo:まず、車を走らせるだけのゲームはすでにたくさんあります。同じようなゲームを作っても面白くないので、車でジャンプするなどのスタントアクションができるだけではなく、車からドライバーを飛び出させたり、ドライバーが空中を飛んだあとに再び車に戻れたりといった、ユニークなゲームを目指しました。しかし車からドライバーが飛び出し、山を超え、さらに車を呼び戻してコースに戻るというようなゲームは過去に存在しなかったため、このタイトル独自のルールを考えるのはかなり大変でした。さらに言えば、一般的なレースゲームに加えてジャンプ後のドライバーの操作をするプログラムを作らなければいけないので、プログラマーも大変だったと思います。
――車からジャンプして、さらにコースに戻るというアクションを活かせるマップデザインもご苦労されたのでは?
Milo:車を運転するだけのゲームなら、車が走るコースと、その周辺だけ作り込めばいいんです。でもこのゲームではジェットパックを使って山を超えることもできますし、橋の下や洞窟を通過できるようにしておくと、そこをショートカットとして使ってもらえます。移動自由度が非常に高いため、プレイヤーが行ける可能性がある場所を全部作らなければいけなかったので……作業量は膨大でした。
――この独特すぎるゲームの企画に、よく社内でゴーサインを出しましたね?(笑)
Milo:企画書を読んだだけでは、よくわかりませんよね。ある程度形になったゲームを遊んでみないと、面白さが伝わらないタイプのゲームです。もちろん「これは何のゲームだかわからない!」というネガティブな意見もありました。車を動かしてスタントコースを走るという要素もあるので既存のレースゲームファンは受け入れてもらえそうですし、プラスアルファの要素によって、さらに広い客層に受け入れられるようになったと思います。
▲筆者のプレイ中、わかりやすい英語でアドバイスをくれていたミロ氏。本作の開発元であるPow Wow Entertainmentの共同設立者兼CEO(最高経営責任者)
――レースゲーム部分だけでも完成度が高いですよね
Milo:スタントできるレースゲームとしても作り込んでいるほか、最大18人で通信対戦できる仕様にしました。目的が異なるステージがたくさんあるんですが、対戦ではその中から8つのステージが選出され、合計ポイントで勝敗を争うようなルールにしました。ライバルカーは車を衝突させて破壊する妨害行為のほか、誰も乗っていない車を見つけたらYボタンを押してください。その車に向けてフックを射出し、離れていた場所から一気に乗り込めるというアクションも用意してあります。
――車の壊れ方が、一般的なレースゲームに比べて壊れやすいように感じますが
Milo:壊れたほうが面白いですよね?(笑) 壊れ方についてはまだ調整中なんですが、ハイスピードで衝突したり、高所から落下したときにどう壊すかは、まだテストしているところです。壊れたまま走り続けさせるほうが面白いのか、数秒のペナルティを与える代わりに車を修理するという仕組みを入れるかなども含め、より面白くなる予定です。
▲前方から突っ込んでしまったため、青い車のボンネットが浮いてしまった。現バージョンではこのまま走れていたが、製品版ではどうなるか
――企画開始から現段階まで一番想定通りにできたところと、一番苦労したところを教えてください
Milo:想定通りにできたのは、車の物理挙動です。逆に苦労したのは、マルチプレイヤーで遊んだときに、他プレイヤーをどう見せるかという部分でした。
――いい意味でクレイジーなゲームですね
ミロ:ありがとうございます(笑)。
▲初期状態で選べる車の側面には「妖怪」の文字。これは同社が過去に制作したゲーム『MisBits』を、日本語に翻訳した漢字をテクスチャ化したそう
■対応機種:PC(Steam)
■Steamストア:https://store.steampowered.com/app/1366850/Stuntfest__World_Tour/
■開発元:Pow Wow Entertainment
■発売日:未定
■価格:未定