世話人:木村直記(第1回~)、大野走馬(第13回~)
(過去の世話人:雪田友成(第1~12回))
第28回 2025年10月29日(水) 16:00~ 早稲田大学西早稲田キャンパス
講演者:今野 北斗 氏 (東京大学)
タイトル:TBA
アブストラクト:TBA
第27回 2025年7月24日(木) 16:00~ 早稲田大学西早稲田キャンパス51号館18-12室
講演者:加藤 直樹 氏 (中京大学)
タイトル:左不変アファイン葉層構造と左対称代数構造の一般化
アブストラクト:リー群上の左不変アファイン構造は, 対応するリー環上の左対称代数構造と1対1に対応することが知られている.
本講演では, 左対称代数構造の一般化を導入し, この新たな代数構造がリー群上の左不変アファイン葉層構造と1対1に対応することを説明する.
更に, この対応を用いて, 左不変アファイン葉層構造の完備性に対応する代数的条件を記述する.
また, 一般化された左対称代数構造の具体的な構成法についてもいくつか紹介する.
時間が許せば, 一般化された左対称代数構造をもたないリー環についても触れる予定である.
第26回 2025年6月19日(木) 16:00~ 早稲田大学西早稲田キャンパス51号館18-12室
講演者:藤岡 禎司 氏 (京都大学)
タイトル:Curvature bounds and the manifold recognition
アブストラクト:断面曲率が下または上に有界な距離空間はそれぞれAlexandrov空間/CAT空間と呼ばれ、多様体の収束理論や幾何群論の観点からよく研究されている。本講演ではこれらの空間の定義と基本的な事実を紹介した後に、トポロジーの多様体認識問題(ホモロジー多様体がいつ多様体になるか)との関連に焦点を当ててお話しする。特にCAT(0)空間よりも広いクラスであるBusemann空間に対する講演者の最新の結果(arXiv:2504.14455)を紹介する。
第25回 2025年5月29日(木) 16:00~ 早稲田大学西早稲田キャンパス51号館18-12室
講演者:上野 龍 氏 (北海道大学)
タイトル:割り切れる3次形式を持つ統計多様体と測地的連結性
アブストラクト:統計多様体とは,実アファイン空間内の超曲面上に自然に誘導される構造(=統計構造)を備えた多様体であり,この構造は捩率がないアファイン接続と擬リーマン計量の組でコダッチの方程式を満たすものである.アファイン微分幾何学において最も基本的な超曲面である2次超曲面は,誘導される統計構造が割り切れる3次形式(cubic form)を持つことによって特徴づけされることが知られている.割り切れる3次形式を持つ統計多様体は野口光宣(1992)によって「スペシャルな統計多様体」として研究され,特にアファイン接続の完備性が導かれることが示された.本講演では中心アファイン微分幾何学の観点から統計多様体を導入し,割り切れる3次形式を持つ統計多様体について紹介する.このクラスの統計多様体は「スペシャル」の名に相応しくとても良い性質を持ち,特にアファイン接続の測地的連結性など大域的な性質が得られたことを解説する.本講演はarXiv:2503.10024 に基づく.時間が許せば,今後の課題についても触れる予定である.
第24回 2025年4月24日(木) 16:00~ 早稲田大学西早稲田キャンパス51号館18-12室
講演者:佐藤 雄一郎 氏 (早稲田大学)
タイトル:概アーベルリー群上のリッチ平坦左不変ローレンツ計量
アブストラクト:リー群が概アーベルであるとは余次元1の可換正規部分群を持つことをいう。 本講演では概アーベルリー群に対してリッチ平坦となる左不変ローレンツ計量の分類定理を説明する。 応用として相対論における古典解の一つであるペトロフ解の高次元化に相当する真空解について紹介する。 ここでペトロフ解とは、4次元アインシュタイン方程式の真空解であって、その等長変換群の単位連結成分が単純推移的に作用する等質なローレンツ多様体のことである。 本講演は露木孝尚氏(北海道情報大学)との共同研究に基づくものである。
第23回 2025年1月10日(金) 16:00~ 早稲田大学西早稲田キャンパス51号館18-12室
講演者:小境 雄太 氏 (東京理科大学)
タイトル:有限skew braceの表現について
アブストラクト:Skew braceはGuarnieri-Vendramin(2017年)により導入された代数的構造である。Skew braceの構造を調べることは,Yang-Baxter方程式の非退化集合論的解についての情報を得ることや,ホップ・ガロア構造におけるホップ・ガロア対応の全射性を調べることなど,多くの応用があり,skew braceの研究は急速に進んでいる。Skew braceはある意味で,群の一般化である。そこで,有限skew brace,すなわち位数が有限であるskew braceの表現と,有限群の表現がどの程度似た性質をもつか,という疑問が生じる。
本講演では,Letourmy-Vendramin(2024年)により導入されたskew brace の表現について紹介し,マシュケの定理やクリフォードの定理をはじめとする有限群の表現論における諸定理が同様に成り立つことを説明する。さらに,基礎体が正標数をもつ場合の有限skew braceの表現に関するいくつかの特徴付けや例も与える。
本講演はお茶の水女子大学のCindy Tsang氏との共同研究に基づく。
第22回 2024年12月14日(土) 15:00~ 早稲田大学西早稲田キャンパス51号館18-12室
講演者:松野 皐 氏 (大阪公立大学数学研究所)
タイトル:3次元擬リーマンスピン佐々木多様体上のSasakian quasi-Killingスピノルの幾何学的性質と物理的性質
アブストラクト:重力とスピノルの混成系であるEinstein-Dirac系は物理において興味深い系である。
Friedrich-KimらはEinstein-Dirac系の研究においてweak-Killingスピノルを定義し、weak-Killingスピノルを用いてEinstein-Dirac系の解を構成できることを示した。さらにスカラー曲率が至る所消えない3次元リーマンスピン多様体においてはEinstsein-Dirac系の解の存在とweak-Killingスピノルの存在は同値となることも示した。
またKillingスピノルのスピン佐々木多様体における一般化としてSasakian quasi-Killingスピノルがあり、特に3次元リーマンスピン佐々木多様体においてはweak-Killingスピノルが存在すればSasakian quasi-Killingスピノルであり、多様体は佐々木空間形となることが示されている。すなわち、3次元佐々木多様体上のEinstein-Dirac系の解はSasakian quasi-Killingスピノルにより完全に分類される。
このように3次元において素晴らしい性質を持つSasakian quasi-Killingスピノルであるが、これまでにその物理的な性質は議論されていなかった。また、Einstein-Dirac系以外の応用もあまり見られないようであった。
我々(松野、上野)は3次元擬リーマンスピン佐々木多様体上においてSasakian quasi-Killingスピノルの幾何学的、物理的性質を調べて以下の結果を得ることが出来た。
(1)Sasakian quasi-KillingスピノルとReebベクトル場の関係
(2)Sasakian quasi-Killingスピノルによる接触磁場中のmagnetic geodesicの構成
(3)Sasakian quasi-KillingスピノルによるsourceありMaxwell方程式の解の構成
(4)3次元擬リーマンスピン佐々木多様体上のEinstein-Dirac系(宇宙項含む)の解の分類(ほぼ既知)
(5)Sasakian quasi-Killingスピノル同士のエネルギー条件の差異
(6)Sasakian quasi-KillingスピノルによるEinstein-Dirac-Maxwell系の解の構成
(7)Sasakian quasi-Killingスピノルの不変基底フレームにおける明示的な成分表示
本講演ではスピン幾何学の基本的な復習をしてから、Einstein-Dirac系とFriedrichらの仕事について簡単に紹介して、(1)~(7)の結果について解説する(講演時間の関係上(1)~(7)のうち一部のみになるかもしれない)。
第21回 2024年11月6日(水) 17:00~ 早稲田大学西早稲田キャンパス51号館18-00室
講演者:多田 和功 氏 (神奈川学園中学・高等学校)
タイトル:Z_2 graded parity 非保存なPoisson括弧,及び関連するGerstenhaber代数
アブストラクト:supersymmetryを記述する数学理論としてBerezinが創始したsupermanifoldの理論がある. supermanifold の座標変換は Z_2-graded parity を保つが, この人工的な仮定をなくし拡張できないかといった問題をLeites が指摘している. このような問題意識を参考にしながら, Grassmann 代数上で Poisson 括弧を定義し, その変形量子化を考えるときに Z_2-graded parity を保存しない写像についても考察の対象にしながら理論構築を行いたいというのが本研究の動機である. 正準変換の理論のアナロジーでGrasmann代数の変形量子化としてClifford代数を構成し, これらの代数の代数的自己同型写像の群論的性質について考察を行う. Z_2-graded parity 非保存な代数的自己同型写像に対しては, Z_2-graded な Poisson 括弧の形が保存されない. この現象の解明のために, まずはClifford 代数の代数的自己同型写像のGrassmann 代数への射影を考えたときの生成元の像の形を求め, 異なる二つのGrassmann代数の代数的自己同型写像に対して, parity写像とparity項を定義し, その特別な場合としてClifford代数の代数的自己同型写像の場合についても調べ(parity写像とは大雑把にいえば, 異なる二つの代数的自己同型写像に対しての“odd deformationによるずれ”を測るための道具である), parity項を用いて異なる Z_2-graded Poisson 括弧の間に成り立つ関係式を示す. Z_2 graded Poisson括弧のodd defomationによる明示式の中には, Gerstenhaber代数の特殊なタイプのものが現れておりZ_2 gradeをshiftする観点から見ると非常に興味深い. 本講演ではこれらの内容について時間の許す限り説明する.
第20回 2024年10月2日(水) 16:00~ 早稲田大学西早稲田キャンパス51号館18-06室
講演者:白石 伝助 氏 (東京理科大学)
タイトル:3点抜き射影直線の基本亜群とポリログのl進ガロア類似物について
アブストラクト:従来の複素ポリログとは、3点抜き射影直線上の道に沿った複素反復積分として定義される対象であり、形式的KZ微分方程式の基本解を記述する特殊関数であった。一方で、20世紀末頃にWojtkowiakは、任意の素数lに対して、形式的KZ微分方程式の基本解のl進ガロア類似物を考えることで、複素ポリログのl進ガロア類似物であるl進ガロアポリログを導入した。これは絶対ガロア群の元をパラメータに持つl進特殊関数であり、3点抜き射影直線の副lエタール基本亜群へのl進ガロア表現を記述する。さて、複素ポリログの関数等式の研究は18世紀のEulerやLanden等の研究に始まる長い歴史があり、現在に至るまで数多くの関数等式が知られている。一方で、l進ガロアポリログの関数等式については、中村博昭-Wojtkowiakの共同研究によりいくつかの典型的な関数等式が導出されていたが、そのリストの追加が課題とされていた。本講演では、3点抜き射影直線の基本亜群やポリログに関する基本事項を振り返りつつ、l進ガロアポリログの関数等式について講演者が得た結果を紹介する。
第19回 2024年9月9日(月) 15:00~ 大阪大学豊中キャンパス理学部棟 D505/506室
講演者:新井 克典 氏 (大阪大学)
タイトル:ラックのG族から得られない多重群ラックの構成について
アブストラクト:空間曲面は3次元球面に埋め込まれたコンパクト曲面である。多重群ラックは群の非交和上にラックの構造を入れた代数系であり、多重群ラックを用いて空間曲面の不変量を構成することができる。多重群ラックについてはいくつかの構成法が知られており、特にラックのG族と呼ばれる、集合と2項演算の族の組を用いて構成する方法が良く用いられる。本講演ではどんなラックのG族からも得られないような多重群ラックの新しい構成法について述べる。
第18回 2024年7月30日(火) 15:00~ 早稲田大学西早稲田キャンパス51号館18-06室
講演者:成田 知将 氏 (名古屋大学)
タイトル:コンパクトケーラー多様体のラプラシアン固有値の最大化問題
アブストラクト:与えられたコンパクト多様体Mにおいて,体積が1となるようなリーマン計量全体を考える.このとき,計量から定まるラプラシアンの最小正固有値は,そのような計量全体の上の汎関数とみなせる.Nadirashvili(1996)とEl Soufi-Ilias(2000)は,計量gがそのような固有値汎関数の臨界点であるとき,ラプラシアンの固有関数たちが(M,g)の球面への等長極小はめ込みを与えることを示した.Apostolov-Jakobson-Kokarev(2015)は,リーマン計量全体ではなく,コンパクトケーラー多様体においてケーラー類を固定して固有値汎関数の臨界点を調べた.本講演では,コンパクト複素多様体において,体積が1となるようなケーラー計量全体を考え,固有値汎関数の臨界点について考察する. Apostolov et al.の結果との比較を行い,また例として平坦な複素トーラスについて述べる. 本講演では講演者自身の結果に深入りせず, なるべく歴史的背景やいくつかの重要な先行研究の証明のスケッチを述べることを目指す. 本講演における講演者自身の結果はプレプリント arXiv:2304.06261の内容に基づく.
第17回 2024年7月23日(火) 16:00~ 早稲田大学西早稲田キャンパス51号館18-06室
講演者:大野 優 氏 (北海道大学)
タイトル:3次元リーマン多様体の等質構造
アブストラクト:E.Cartanにより,局所対称リーマン多様体は,曲率テンソルのLevi-Civita接続に関する平行性によって特徴づけられた.さらに,AmbroseとSingerは,この結果をリーマン多様体の等質性に拡張し,等質構造テンソルと呼ばれる(1,2)-テンソルの存在によって等質性を特徴づけた.本講演では,3次元リーマン多様体の上の等質構造テンソルの分類結果を紹介する.具体的には,$\mathbb{S}^2\times\mathbb{R}, \mathbb{H}^2\times\mathbb{R}$, および,左不変計量が定まった3次元Lie群の等質構造をそれぞれ分類し,先行研究と合わせて,3次元リーマン多様体の上の等質構造テンソルが全て分類されたことを説明する.
第16回 2024年6月18日(火) 17:00~ 早稲田大学西早稲田キャンパス51号館18-06室およびZOOM(ID: 961 1709 7781,パスコード: 660900)
講演者:行田 康晃 氏 (東京大学)
タイトル:一般化マルコフ数のSL(2,Z)-行列化
アブストラクト:一般化マルコフ数とは、一般化マルコフ方程式x^2+y^2+z^2+k(yz+zx+xy)=(3+3k)xyz (kは非負整数)の正整数解に現れる数のことを指す。k=0の場合の方程式はマルコフ方程式、その正整数解に現れる数はマルコフ数と呼ばれ、ディオファントス近似理論に端を発し1880年ごろから研究されている対象である。一般化マルコフ方程式や一般化マルコフ数は、古典的なマルコフ方程式やマルコフ数に関する理論を内包するようなより広い枠組みとして、2021~2022年にかけて私と共同研究者である松下浩大氏が導入した。本講演では、私が最近研究している一般化マルコフ数を(1,2)成分に持つようなSL(2,Z)の元と、その幾何学的側面について議論を行う予定である。
第15回 2024年5月15日(水) 17:00~ 早稲田大学西早稲田キャンパス51号館17-04室
講演者:榎園 誠 氏 (立教大学)
タイトル:ファイバー曲面のモジュラー不変量について
アブストラクト:ファイバー曲面のいくつかのモジュラー不変量の間の不等式 (スロープ不等式) は、代数曲面の分類問題や函数体上の代数曲線の有理点に関する問題、4 次元トポロジーにおけるレフシェッツ束の複素構造に関する問題などと関連して重要である。また半安定なファイバー曲面に関しては、安定曲線のモジュライ空間の交点理論から多くのスロープ不等式が得られることが知られている。本講演では、これらの研究の背景を述べた後、モジュライ空間の議論を拡張することにより、半安定とは限らないファイバー曲面に関して様々なスロープ不等式が得られることを説明する。
第14回 2024年3月11日(月) 16:00~ 早稲田大学西早稲田キャンパス51号館18-06室
講演者:片山 拓弥 氏 (明治大学)
タイトル:Bicorn curves on closed surfaces
アブストラクト:閉曲面上の2つの単純閉曲線の間のバイコーン曲線とは,2つの曲線の端点が一致する部分弧を貼り合わせて得られる単純閉曲線のことである.2017年にPrzytyckiとSistoはバイコーン曲線を導入し,曲面の写像類群の弱い双曲性を示した.本講演では,バイコーン曲線を用いて曲線複体に関する重要な結果であるHempelの不等式,双曲性,bounded geodesic image theoremを証明する.ここでHempelの不等式は曲線複体の2点間の距離を幾何学的交点数の対数関数で評価する不等式である.また,双曲性とbounded geodesic image theoremははじめMasurとMinskyにより証明された結果であり,写像類群の語距離を1次の範囲で評価する際に使われた.本講演は大阪大学の久野恵理香氏との共同研究に基づく.
第13回 2023年12月19日(火) 16:00~ 早稲田大学西早稲田キャンパス51号館17-06室およびZOOM(ID: 952 1380 8500,パスコード: 031699)
講演者:山口 夏穂里 氏 (立命館大学)
タイトル:On statistics which are almost sufficient from the viewpoint of the Fisher metrics
アブストラクト:We introduce a quantitatively weak version of sufficient statistics such that the Fisher metric of the induced parametrized measure model is biLipschitz equivalent to the Fisher metric of the original model. We characterize such statistics in terms of the conditional probability or by the existence of a certain decomposition of the density function in a way similar to characterizations of due to Ay-Jost-Lê-Schwachhöfer and Fisher-Neyman for sufficient statistics.
第12回 2023年1月11日(水) 16:30~ 早稲田大学西早稲田キャンパス51号館18-02室およびZOOM(ID: 928 4292 0426,パスコード: 598985)
講演者:山口 祥司 氏 (早稲田大学)
タイトル:Recent Developments in the adjoint Reidemeister torsion
アブストラクト:リー群SL(2;C)のリー環sl(2;C)への随伴作用(adjoint action)を利用した局所系から定まるライデマイスタートーションという不変量の定義と最近の話題について紹介する.
多様体上に基本群のSL(2;C)表現とSL(2;C)の随伴作用を用いてリー環sl(2;C)係数の局所系を定めることができる.
境界がトーラスの和集合であるような三次元多様体上のsl(2;C)係数の局所系を利用して定義されるライデマイスタートーションという不変量は adjoint Reidemeister torsion と呼ばれ, 双曲幾何や量子不変量との関係性が注目されている位相不変量である.
本講演では adjoint Reidemeister torsion の構成と双曲幾何に関連する最近の話題について解説したい.
第11回 2022年12月14日(水) 16:30~ 早稲田大学51号舘18-00室およびZOOM(ID: 968 7270 9149,パスコード: 458476)
講演者:直江 央寛 氏 (中央大学)
タイトル:Shadows of 4-manifolds and 2-knots
アブストラクト:シャドウとは,4次元多様体に2-骨格として埋め込まれた2次元の多面体であり,領域毎のある種の重みを適切に備えることで4次元多様体の表示として扱うことができる.本講演では,シャドウの基本的な概念について簡単に解説し,最近の自身の研究である2次元結び目への応用について紹介する.とくに,shadow-complexity と呼ばれる非負整数値不変量を2次元結び目に対し定義し,その値が0および1であるような2次元結び目が決定できたことについて報告する.
第10回 2022年10月11日(水) 16:30~ 早稲田大学51号舘18-06室およびZOOM(ID: 935 6896 7222,パスコード: 358284)
講演者:溝口 史華 氏 (大阪市立大学)
タイトル:quiverから得られるnilpotent Lie代数とRicci soliton
アブストラクト:nilpotent Lie群は, Ricci solitonを許容する非自明な例を多く供給する. 本講演では, quiverからnilpotent Lie代数を得る方法を紹介する. また, quiverから得られたすべてのnilpotent Lie代数に対応する単連結Lie群が左不変なRicci soliton計量を持つことを述べる.
第9回 2022年7月20日(水) 16:30~ 早稲田大学51号舘18-02室およびZOOM(ID:995 2972 3498, パスコード:001694)
講演者:高野 暁弘 氏 (東京大学)
タイトル:Thompson群のある元の族から得られる絡み目の性質について
アブストラクト:近年、JonesはThompson群の元から絡み目の図式を得る方法を導入した。これは組み紐群の元から絡み目の図式を得るということの類似である。JonesやAielloは組み紐群におけるAlexanderの定理のThompson群バージョンを示し、その証明の中で、絡み目の図式からThompson群の元を得るためのアルゴリズムも開発した。しかし、Jonesの構成やこのアルゴリズムは複雑であり、またこの理論自体もまだ馴染みがなく未開拓である。本講演では、Jonesの構成を紹介するとともに、Thompson群の元の"良い"族を導入し、それらから得られる絡み目の幾何的な性質などを考察する。本研究は児玉悠弥氏(東京都立大学)との共同研究である。
第8回 2022年3月9日(水) 16:30~ 早稲田大学51号舘17-08室およびZOOM(ID: 991 7993 1066, パスコード: 832389)
早稲田大学学内者のみ対面参加可能
講演者:浅野 喜敬 氏 (東北大学)
タイトル:S(L(2, 1)) の種数3のトライセクションの長さについて
アブストラクト:トライセクションとは4次元多様体の3つの1-ハンドルボディによる分割であり,4次元多様体を曲面上の3つの単純閉曲線族として表示する.Kirby-Thompson によりトライセクションの複雑度としてトライセクションの長さが定義されたが,種数2以下のトライセクションを持つ4次元多様体らの連結和を除きその計算例はあまり知られていない.トライセクション種数が3以上のケースでは, L(2, 1) のスパン4次元多様体の種数3のトライセクションの長さは6以下であることが Kirby-Thompson により示されている.この4次元多様体の種数3のトライセクションの長さがちょうど6であることを証明したので本講演で報告する.
第7回 2022年1月24日(月) 16:30~ 早稲田大学51号舘17-08室およびZOOM(ID: 933 0297 7157, パスコード: 100305)
早稲田大学学内者のみ対面参加可能
講演者:奥村 克彦 氏 (早稲田大学)
タイトル:射影空間の爆発上のSNCログシンプレクティック構造
アブストラクト:ポアソン構造の幾何学は, 力学との応用の観点から, 微分幾何的な観点からよく研究されてきた. 正則なポアソン構造を代数幾何学の枠組みで扱う方法がPolishchukによって1997年に定式化されたものの, 代数幾何学の観点からのポアソン幾何学はまだ発展途上である. ポアソン構造の射影幾何として, 「正則ポアソン構造を持つことが射影多様体にどのような制限を課すか」という観点がある. この問いに関して, 高次元ファノ多様体上で退化に"強い"制限を課した場合について研究が進んできた. Lima-Pereiraは対角ポアソン構造を一般化したSNCログシンプレクティックの場合, PymはFeigin-Odesskiiの例を一般化した楕円型ログシンプレクティックの場合の分類・構成を試み, それぞれ元々の例以外の非存在性を示したものの, 新たな例を構成することはできなかった. 本研究では, 新たな例を構成するために射影空間の爆発上でSNCログシンプレクティック構造の分類・構成に取り組み, 結果として, (高次元ファノ多様体上では初の) 対角ポアソンではないSNCログシンプレクティック構造の例を得た. 代数幾何が専門でない方にも伝わるよう, 要点を絞って丁寧に説明する.
第6回 2021年3月29日(火) 16:30~ ZOOM
講演者:大場 貴裕 氏 (京都大学)
タイトル:Rational ruled surfaces as symplectic divisors (講演スライド)
アブストラクト:シンプレクティック多様体に対し,そのシンプレクティック構造のコホモロジー類と Poincare 双対になる余次元 2のシンプレクティック部分多様体をシンプレクティック因子と呼ぶ.このセミナーではその補空間が幾何学的によい構造を持つことも課す.シンプレクティック因子は複素多様体に対する豊富な因子の一般化と見れる.今回のセミナーでは,4次元シンプレクティック多様体のシンプレクティック因子としての実現問題を扱う.より具体的には,有理線織面,すなわち S^2 上の S^2 束がどのようなシンプレクティック構造を持つときにシンプレクティック因子として実現できるか,できないかについて論じる.この応用として接触多様体の Stein 充填不可能性を示すことができ,これについても述べる.本講演は Sunchon 大学の Myeonggi Kwon 氏との共同研究に基づく.
第5回 2021年1月19日(火) 17:00~ ZOOM
講演者:久野 雄介 氏 (津田塾大学)
タイトル:Homology valued invariants for trivalent fatgraph spines (講演スライド)
アブストラクト:ファットグラフスパインとは、向きづけられた穴あき(あるいは境界付き)曲面に変位レトラクトとして埋め込まれたグラフである。この様なグラフは、曲面のタイヒミュラー空間の自然なセル分割に現れる。3価ファットグラフスパインの数値的不変量を、背景(写像類群のねじれ係数コホモロジー、森田-Penner構成)と共にいくつか紹介する。 本講演の一部は竹澤花恵氏との共同研究(arXiv:2005.03414)に基づく。
第4回 2020年2月18日(火) 14:00~ 51号館17-06室
講演者:野坂 武史 氏 (東京工業大学)
タイトル:$K_1$-値の結び目のAlexander多項式
アブストラクト:結び目のAlexander多項式の一般化は、色々な手法や方向性から提唱されている。今回は、結び目群から任意の群への任意の群準同型に対して、Alexander多項式を定義した。但し、その値は或る$K_1$-群に値を持つ。講演者はその性質や計算法を提案した。本講演では、$K_1$-値のAlexander多項式の定義と、その$K_1$群に関して、基本事項からお話する。時間が許せば、今後の課題もお話したい。
第3回 2020年1月21日(火) 10:00~ 14号館717B室
講演者:市原 一裕 氏 (日本大学)
タイトル:デーン充填によるカスプ付き双曲多様体の基本群の元の自明化について
アブストラクト:I will talk about the following result. For each homotopically essential loop in a complete hyperbolic 3-manifold of finite volume with single cusp, there are only finitely many slopes such that the loop becomes null-homotopic in the closed 3-manifold obtained by Dehn filling along the slope. This talk is based on a joint work with Kimihiko Motegi (Nihon University) and Masakazu Teragaito (Hiroshima University).
第2回 2019年12月11日(水) 16:30~ 14号館717B室
講演者:野崎 雄太 氏 (明治大学)
タイトル:Reidemeister トーションの像の有限性と A 多項式
アブストラクト:3 次元多様体 M の Reidemeister トーションを指標多様体上の関数と見て,その像 RT(M) の大きさを考える. たとえば M が 8 の字結び目の補空間やそのダブルの場合には,RT(M) は無限集合であることが知られている. 本講演では M が結び目補空間のスプライスの場合に,RT(M) が有限集合となる十分条件を A 多項式を用いて与える. 本研究は北野晃朗氏との共同研究に基づく.
第1回 2019年11月2日(土) 16:00~ 51号館17-06室
講演者:木村 直記 氏 (早稲田大学)
タイトル:3次元多様体の4面体分割とDijkgraaf-Witten不変量
アブストラクト:Dijkgraaf-Witten不変量は閉3次元多様体の位相不変量であり,有限群とその3-コサイクルを与えるごとに定まる不変量である.Dijkgraaf-Witten不変量はゲージ理論に背景を持つ不変量であるが,4面体分割を用いて組合せ的に構成できることが知られている.講演者は,理想4面体分割を用いることで,Dijkgraaf-Witten不変量の組合せ的な構成を境界付き3次元多様体に対して一般化した.本講演では,Dijkgraaf-Witten不変量の構成や性質,計算例などを講演者の結果を含めて紹介する.