第34
フェミニスト生命倫理学は生命倫理学をどのように変えようとしているのか
高井ゆと里

第34回 一橋大学哲学・社会思想セミナー

日時

2024年3月1日(金)

15時15分開始・18時ごろ終了予定

場所

zoom

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講師

高井ゆと里(群馬大学)

問い合わせ先

m.igashira[at]r.hit-u.ac.jp ([at]を@に変える)

開催要旨

生命倫理学が、それ自体学際的でありつつも一つの学問領域として進展した結果、ディシプリンとして自らを確立させた生命倫理学そのものに潜む諸前提に対する問い直しも活発化していった。そうして問われるに至った前提の一つがセクシズムである。生命倫理学が、制度としても実践としても社会に埋め込まれものである以上、現代社会になお根強く存在する性差別の力学とは無縁ではいられない。こうしてフェミニスト生命倫理学が、生命倫理学を変えていくための運動として展開される。

フェミニスト生命倫理学は、それ自体で一つの学問領域なのだろうか。然りであり、否である。フェミニスト生命倫理学は、既存の生命倫理学における論争に新しいアクターとして現れただけでなく、既存の生命倫理学が依拠してきた根本的な諸概念に改鋳を求め、また「論争」されている「問題」が選出されるプロセスそのものを批判的に問おうとするものだからである。その意味で、フェミニスト生命倫理学がなそうとする批判的介入は、狭義の論争の次元に留まらない。そして、それは同時に、これまで学術研究から女性(およびジェンダーマイノリティ)が排除されてきた環境そのものを問いの俎上に上げる実践でもあろうとする。実践と切り離されたフェミニズム(理論)が存在しないことは、論を俟たない。

このセミナーでは、フェミニスト生命倫理学が試みるそうした批判的介入の広がりを検討し、昨年の日本生命倫理学会大会で初めて実現したフェミニスト生命倫理学のワークショップを、日本で更に発展させるための方向性を共有する。